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遊戯王D.C② 作:ゆー
希空との決闘
「さぁ行くよ!ボクのターン!」
「ドロー!」
ターンは移り希空の手番。
俺の場には永続魔法ガルド・バザールがあるため、フィールドに存在する守備力より攻撃力が高いモンスターは効果が発動できない。
俺のモンスターゾーンにいる唯一のモンスターであるミルダムは、自身の守備力より低い守備力を持つモンスターの効果を受けない。加えて黄金剣-クリューサーオールを装備したことによって攻撃力が5000となっているので突破は容易ではないだろう。
この比較的万全の布陣で希空を迎え撃つ。
…まあ、魔法カードの突破札とかがあれば抜けられちゃうんだけどね!
地神街"ガルド・バザール"
永続魔法
①このカードの効果発動処理として、手札を1枚捨て、デッキから「地神」モンスターを2枚まで選び手札に加えることができる。
②自分フィールドにこのカードと「地神」モンスターが存在する限り、フィールドの「地神」以外のモンスターはその守備力をその攻撃力分ダウンさせなければ効果を発動できない。
地神街の黄金王ミルダム
攻撃力3000/守備力?
レベル:8
属性:地属性
種族:戦士族
ペンデュラムモンスター
【P効果(Pスケール:青9/赤9)】
このカード名のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
① 自分フィールドに「地神」永続魔法が存在しない場合、発動できる。デッキから「地神」永続魔法2枚を自分の魔法&罠ゾーンにセットする(同名カードは1枚まで)。その後、このカードを特殊召喚する。
【モンスター効果】
①このカードの元々の守備力は、自分フィールドに存在する「地神街の黄金王ミルダム」以外のモンスターの守備力の合計と同じ数値になる。
②このカードはこのカードの守備力より低い守備力を持つモンスターの効果を受けない。
③自分フィールドの「黄金トークン」以外のトークン1体を対象に発動できる。そのカードをリリースし、以下の効果を持つ「黄金トークン」(岩石族・地・星1・攻1000/守1000)1体を特殊召喚する。
●このカードをリリースして発動できる。自分フィールドのモンスターの守備力を1000アップする。
黄金剣-クリューサーオール
装備魔法
①装備モンスターの攻撃力は、そのモンスターの守備力分アップする。
②装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。
「スタンバイフェイズ、楽園の効果が発動しカウンターを1つ乗せる」
楽園
フィールド魔法
このカード名のカードはデュエル中に1度しか使用できず、このカードの発動に対して相手はカードを使用できない。
①このカードは相手の効果を受けない。
②自分スタンバイフェイズに発動する。このカードにカウンターを1つ置く。
③自分メインフェイズ1開始時に発動する。このカードに乗っているカウンターの数によって以下の効果を順番に適用する。この効果の発動に対して相手は効果を発動できない。
●1つ以上:自分のLPを8000にする。
●2つ以上:自分のデッキ・墓地から「楽園」カード1枚を選んで手札に加えることができる。
●3つ以上:自分のデッキから「楽園」モンスターを可能な限り特殊召喚できる。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。
●4つ以上:自分フィールドのカードの枚数が3枚になるようにこのカード以外のカードを墓地へ送る。
●5つ以上:このターンの終了時、自分のLPの数値分だけ自分のLPを失う。
楽園
カウンター0→1
「さらに手札から速攻魔法《楽園の営み》を発動。その効果でデッキから楽園モンスター《楽園の陰美 ヒメ》を特殊召喚。その後、楽園にカウンターを1つ乗せる」
楽園
カウンター1→2
楽園の営み
速攻魔法
このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。
①自分のデッキから「楽園」モンスター1体を選んで特殊召喚する。その後、自分フィールドの「楽園」にカウンターを1つ置くことができる。
楽園の陰美 ヒメ
攻撃力1200/守備力2000
レベル:4
属性:地属性
種族:獣族
効果モンスター
このカード名の②③の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
①自分フィールドに「楽園」が存在する場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
②自分・相手のメインフェイズにフィールドのモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターとこのカードで融合召喚を行う。
③フィールドのこのカードよりレベルの高いモンスター1体を対象に発動できる。そのカードの効果を次のターンのスタンバイフェイズまで無効にする。
楽園の営みの効果によって現れたモンスターは、クリーム色のボブカットに片目を前髪で隠した小柄のネズミ型の獣人のモンスターであった。
服装はどこかみすぼらしいものの顔は非常に整っており、見る者全ての目を奪って離さないだろう。
ただ纏う雰囲気は蠱惑的で、退廃的で、引き寄せられるが突き放されるような、まるで毒と砂糖とを煮詰めたかのようなものを想起させられた。
この背筋がゾクッとさせられる気配、これが希空のデッキのエースモンスターなのだろう。俺はそう直感した。
「それが希空のエースだな?」
伝う汗を拭いながら俺は問う。
「ご名答、やっぱ分かるんだね」
「──そう!このヒメこそが逆転の切り札!!今から始まるボクの全力の逆転劇…受け止めてね!!」
問いに対し、希空は身振り手振りをしながらどこか気取ったかのように、カッコつけたかのように応える。
「メインフェイズ1に移行し、その開始時にも楽園の効果が発動する!」
「今楽園に乗っているカウンターは2つ!よってボクのLPは8000になり、デッキから楽園の無情 カヤを手札に加えるよ!」
五十嵐 希空
LP6500→8000
前のターンに削ったLPが呆気なく元に戻ってしまった。
焦る気持ちを抑えつつ俺は楽園について考察を始める。
楽園は相手の効果を受けない効果があるため除去ができるカードは限られる。生憎俺のデッキにはその耐性を掻い潜って除去ができるカードはないため、除去ができないことは確定している。そうなれば1ターンで8000以上のダメージを与えなければ勝つことは難しい。
カウンターが5個乗っているときの効果は自滅する効果になってはいるが、恐らくそれの対策はされている筈なので耐久するのは悪手だろう。
それに希空は今し方逆転すると言いきったのだ。まずは今のターンをどう凌ぐかを考えなければいけないはずだ。
俺は「よし」と思考を一旦切り上げると、手札のカードに目を落とし、墓地や伏せカードを改めて確認し、受けの布陣に問題がないかを確認するのであった。
「フィールドの楽園の少女 アカネの効果を発動!この効果で楽園の帝王 ブラックをデッキから特殊召喚!」
「さらにブラックの特殊召喚時の効果!デッキから…と行きたかったんだけど、ガルド・バザールがあるから効果が発動できないんだったね」
「そしてガルド・バザールの効果でアカネの守備力はその攻撃力分、2000ダウンするよ」
楽園の少女 アカネ
攻撃力2000/守備力2000
レベル:5
属性:地属性
種族:獣族
効果モンスター
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①自分フィールドに「楽園」が存在する場合に発動できる。デッキからレベル5以上の「楽園」モンスター1体を選んで特殊召喚する。
②自分フィールドの「楽園の少女 アカネ」以外の「楽園」モンスターの攻撃力は500アップする。
③フィールドにこのカードよりレベルの高いモンスターが存在する場合、このカードは破壊されない。
楽園の帝王 ブラック
攻撃力3000/守備力2400
レベル:8
属性:地属性
種族:獣族
効果モンスター
このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか使用できない。
①自分フィールドに「楽園」が存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
②このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。デッキから「楽園」速攻魔法・通常罠カード1枚を手札に加える。
③このカードがフィールドに存在する限り、フィールドのモンスターのレベルは変更できない。
楽園の少女 アカネ
守備力2000→0
前のターンに倒したブラックまでもが戻ってきてしまい完全に元通りとなってしまう。いや、ヒメがいる分前のターンよりも状況は悪化している。
以降の展開によってはかなり不味いぞ…!
「よし!これで準備は整った!ここからはヒメの力を広に見せてあげるよ!!」
希空は意気揚々と宣言する。
「…応!来い!」
俺が内心焦りながらそう応えれは、希空は満足そうに頷くのであった。
「ヒメの攻撃力は1200、守備力は2000!よってガルド・バザールの制圧効果の影響下でも問題なく効果は使用できる!」
「ボクはヒメの②の効果を発動!ボクのフィールドのアカネを対象にヒメと融合する!!」
融合召喚の宣言がなされると希空の背後に青とオレンジの渦、融合のカードイラストと同じ渦が現れる。そしてその渦に楽園の少女 アカネと楽園の陰美 ヒメは吸い込まれていく。
そして希空は自身の体の前で指を組む。
「冒涜の獣よ!絢爛の華よ!堕落の奸計にて永世の都市を支配せよ!融合召喚!!」
「現れよ!想いを焦がす大罪の炎!《楽園の瘴姫 ヒメ》!!」
召喚の宣言と共に辺りが一瞬にして炎に包まれる。そして炎の中から現れたのは、血のような赤に金や宝石の装飾が施され所々が薄く透けた扇情的なドレスに身を包んだ、美しいながらもどこかみすぼらしかった先程までとは全く異なるヒメであった。
その美貌には華やかで毒々しい化粧が施されており、深淵のように光がない瞳に射抜かれてしまえば、瞳の奥に吸い込まれてしまうような錯覚を引き起こすだろう。
形容するなれば焔の如き傾国の美人、そんな言葉がしっくりくるのであった。
楽園の瘴姫 ヒメ
攻撃力2700/守備力2700
レベル:9
属性:炎属性
種族:獣族
融合モンスター
「楽園の陰美 ヒメ」+効果モンスター
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①自分フィールドに「楽園」が存在する場合に発動できる。自分は相手フィールドのカードを1枚選ぶ。相手はそのカードを墓地へ送らなければならない。
②自分・相手のメインフェイズに自分のLPを500払って発動できる。デッキから「楽園」モンスター1体を選んで特殊召喚する。
③このカードよりレベルの低い相手モンスターは攻撃できない。
「その特殊召喚成功時、俺は伏せていた《地神砂海の大流砂》を楽園の瘴姫 ヒメを対象に発動!その効果で対象モンスター及びそのモンスターより守備力の低い相手モンスターを全て手札に戻す!」
「ムダだよ!さっき手札に加えた楽園の無情 カヤを手札からリリースすることでその効果を無効化するよ!」
地神砂海の大流砂
通常罠
①モンスターが召喚・特殊召喚・反転召喚された時、フィールドのモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスター及びフィールドに存在するそのモンスターより守備力の低い相手モンスターを全て手札に戻す。
②自分フィールドに「地神砂海"ガルメギス"」が存在し、このカードがこのターンに墓地へ送られていなければ発動できる。墓地のこのカードを自分フィールドにセットする。
楽園の無情 カヤ
攻撃力0/守備力0
レベル:1
属性:地属性
種族:獣族
効果モンスター
このカード名のカードの①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①自分フィールドに「楽園」が存在し、相手が効果を発動した場合、手札・フィールドのこのカードをリリースして発動できる。その効果を無効化する。
②このカードが墓地に存在し、自分のフィールドに「楽園」モンスターが存在しない場合に発動できる。このカードを手札に加えるか自分フィールドに特殊召喚する。その後、自分はLPを2000失う。
(大流砂をカヤに無効化されるのは想定内!ここはカヤを消費させるのが正解!)
思い通りにいったことで俺は内心ほくそ笑む。ここで予期せぬ妨害が飛んできていたらかなり不味い状況になっていたので一安心だ。
「楽園の瘴姫 ヒメの効果を発動!ボクは地神街の黄金王ミルダムを選択することで、相手はそのカードを墓地へ送らなければならない!愛欲の支配(テンプテーション・ドミネイティング)!」
希空の指示を受けるとヒメは不敵な笑みを浮かべる。そして一瞬のまばたきの間にその姿が俺の視界から消える。どこに行ったのだと辺りを見回せば、背後から伸びてきた手に目を覆われ視界が奪われる。そして鼻腔がくすぐられるような甘ったるい香りを感じ取ったときには俺の意識は朦朧としてしまう。
そして意識がはっきりした時には(といってもその実5秒も経っていないのだが)フィールドにミルダムの姿は無かった。
「…だが!ヒメの守備力は2700ダウンするぜ!」
楽園の瘴姫 ヒメ
守備力2700→0
しかし俺の場はがら空き、よってガルド・バザールはその効力を失ってしまう。そしてまだヒメには2つ目の効果がある…!
「ヒメのもうひとつの効果を発動!LPを500払いデッキからもう1体のブラックを特殊召喚!」
五十嵐 希空
LP8000→7500
「そして地神モンスターがいなくなったことでガルド・バザールの制圧効果は効力を失っているためブラックの効果が発動する!」
「ボクはデッキから《楽園の支配》を手札に加える!」
こうして希空の場にはブラックが2体、前のターンに召喚されたダイコク、そしてヒメと計4体のモンスターが並んでしまった。
楽園の帝王 ブラック
攻撃力3000
楽園の帝王 ブラック
攻撃力3000
楽園の無頼 ダイコク
攻撃力2300
楽園の瘴姫 ヒメ
攻撃力2700
「──バトルだ!楽園の帝王 ブラックで広へ直接攻撃!」
ブラックは懐から拳銃を取り出すと俺に向けて照準を合わせる。そしてその引き金にゆっくりと指をかける。
今まさに銃弾が放たれようとしている時、俺は宣言する。
「この瞬間、俺は墓地の《精霊の加護》の効果を発動する!!その効果で墓地またはEXデッキに表側で存在する属性を持たないモンスターを攻撃表示で特殊召喚できる!」
「俺はEXデッキの神界の冒険者を攻撃表示で特殊召喚する!来い、神界の冒険者!」
「!!」
「そんなカードいつの間に!」
「…前のターンにガルド・バザールの効果で手札を捨てただろ?その時に捨てたのがこのカードさ」
精霊の加護
通常罠
①自分フィールドに属性を持たないモンスターが存在する場合、属性を1つ宣言して発動できる。このターン、フィールドの宣言した属性を持つモンスターの効果は無効化される。
②墓地のこのカードを除外して発動できる。自分のEXデッキ(表側)・墓地から属性を持たないモンスター1体を選び攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン中のみ戦闘・効果で破壊されない。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。
神界の冒険者
攻撃力1800/守備力1000
レベル:4
属性:(なし)
種族:戦士族
ペンデュラムモンスター
【P効果(Pスケール:青0/赤10)】
①もう片方の自分のPゾーンにカードが存在しない場合に発動できる。このカードをそのPゾーンに置く。
【モンスター効果】
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードの属性は自分フィールドに存在するそれぞれのモンスターと同じ属性としても扱い、このカードと同じ属性のモンスターの効果を受けない。
②自分がモンスターを召喚・特殊召喚した場合に発動できる。自分の手札・デッキからこのカードと同じ属性のモンスター1体を選んで特殊召喚する。
「…くっ!」
「でもバトルは続行するよ!ボクはそのままブラックで神界の冒険者に攻撃!」
ブラックは俺に向けていた銃を神界の冒険者へ向け直すと引き金を引く。そして拳銃は火を吹き、放たれた弾丸は神界の冒険者へと襲いかかる。
…が、問題はない!
「精霊の加護の効果によって特殊召喚されたモンスターはこのターンのみ戦闘・効果では破壊されない!」
「…っ!でもダメージは受けてもらうよ!」
「ぐっ…」
小鳥遊 広
LP7500→6300
神界の冒険者は破壊はされなかったものの、貫通した弾丸は俺をも貫き、俺はダメージを受けるのであった。
「もう1体のブラックと楽園の無頼 ダイコクも神界の冒険者へ攻撃!」
小鳥遊 広
LP6300→5100→4600
「最後に楽園の瘴姫 ヒメも神界の冒険者へ攻撃だ!堕落の果実(ザ・フォールン)!」
ヒメは体の前で何かを持つかのように、掬い上げるかのように手のひらを上に向ける。間もなく赤黒い光が手のひらの上に集まり出せばあっという間にリンゴ程の大きさの光球が形成される。
ヒメはその赤黒い光球を放り捨てると光球は神界の冒険者へふよふよと漂いながら向かい、あと数メートルというところまで近づくと大爆発を起こすのであった。
「ぐぁっ…」
小鳥遊 広
LP4600→3700
「っ…。ふぅ、なんとか耐えきったぜ…」
ふぅふぅと息をしながらかいた冷や汗を拭う。
精霊の加護の効果が通ったから良かったものの、あれが無効化されてたら負けてたぞ。
学園に入って早々の限界バトルで若干胃がキリキリとするが気を取り直して次のターンへ気持ちを切り替えようとする──
「──まだだ!ボクは速攻魔法、楽園の支配を発動!」
希空勢いよく手を振り上げる。それに呼応するように楽園の支配のカードが高々と表示される。
「!!」
俺は急の事に驚き希空へ視線を合わせる。
「ボクのフィールドのダイコクとブラック、そして手札の《楽園の気障 スミス》を融合素材として融合召喚を行う!」
「守護者に座す合成獣よ!その悉くを討ち滅ぼせ!融合召喚!!」
「現れよ!《ガーディアン・キマイラ》!」
3体のモンスターが融合の渦へと吸い込まれると、その渦の中から獣の手が這い出してくる。そして手が渦の淵を掴むとモンスターが勢いよく飛びててくる。
モンスターは三つ首の怪物でそれぞれが獅子・猛禽・竜のような見た目をしており、胴体には漆黒の鎧を身につけていた。生えている尾は蛇になっており明らかな異形、合成獣(キマイラ)と呼ばれるものであった。
楽園の支配
速攻魔法
①自分の手札・フィールドの「楽園」モンスターを融合素材とし、融合モンスター1体を融合召喚する。さらにこの効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は、そのレベル×100アップする。
②自分フィールドの「楽園」カードが破壊される場合、代わりに墓地のこのカードを除外できる。
ガーディアン・キマイラ(OCGカード)
攻撃力3300/守備力3300
レベル:9
属性:闇属性
種族:獣族
融合モンスター
カード名が異なるモンスター×3
このカードは手札と自分フィールドのモンスターのみをそれぞれ1体以上素材とした融合召喚でのみEXデッキから特殊召喚できる。
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①このカードが魔法カードの効果で融合召喚に成功した場合に発動できる。手札で融合素材としたカードの数だけ自分はデッキからドローし、フィールドで融合素材としたカードの数だけ相手フィールドのカードを選んで破壊する。
②:自分の墓地に「融合」が存在する限り、このカードは相手の効果の対象にならない。
「楽園の支配によって融合召喚したモンスターの攻撃力は、そのレベル×100アップする!」
ガーディアン・キマイラ
攻撃力3300→4100
「そして融合召喚に成功したガーディアン・キマイラの効果を発動!」
「ボクは1枚ドローし、広のフィールドのガルド・バザールと神界の冒険者を選んで破壊する!…ま、神界の冒険者は破壊できないんだけどね」
ガーディアン・キマイラが猛烈な咆哮を上げると俺のガルド・バザールが耐える間もなく破壊されてしまう。神界の冒険者は咆哮を受けるがなんとか耐え凌ぐ。
全てのゾーンが埋まらんとするくらいには横広がりしていた俺の場には、神界の冒険者と地神砂海"ガルメギス"しか残っていないのであった。
地神砂海"ガルメギス"
永続魔法
効果
①このカードの効果発動処理として、自分のデッキ・墓地から「地神砂海"ガルメギス"」以外の「地神砂海」魔法・罠カード1枚を手札に加える。
②1ターンに1度、発動できる。自分フィールドに「砂トークン」(岩石族・地・星1・攻/守0)2体を特殊召喚する。このトークンは素材にできない。
(破壊可能なガルメギスをわざわざ破壊しなかったのはミルダムを再利用されたときにそのP効果でアドを稼がれるのを阻止するためだな?)
ミルダムは地神永続魔法があるとそのP効果を使用できない。ミルダムのP効果はかなり強力なためできれば何度も使用したいが、その制約がネックなのだ。
ミルダムを回収し直す算段は付けていたのだが無駄になってしまったなぁと俺は感嘆する。
「そして今はまだバトルフェイズ中!ガーディアン・キマイラで神界の冒険者へ攻撃!」
ガーディアン・キマイラがその前腕?前足?を振り上げて地面を強打すると衝撃波が発生する。衝撃波はまず神界の冒険者へ到達し勢いが減衰されるが、依然と強い勢いで俺へと到達する。
「ぐぅぅ…!」
小鳥遊 広
LP3700→1400
「決めきれなかったね…」
「…でもやれることは全部やった!ボクはこれでターンエンドするよ!」
五十嵐 希空
LP7500
手札:2枚
バトルゾーン:楽園の帝王 ブラック
楽園の瘴姫 ヒメ
ガーディアン・キマイラ
魔法・罠ゾーン:なし
フィールド魔法ゾーン:楽園
「…希空の猛攻、凄かったぜ!だがこっからは俺の逆転劇だ!刮目するがいい!」
「俺のターン!ドロー!」
俺の手札は4枚。まずここは前のターンにサーチしたガルシルで場を整える!
「俺は手札の地神街の情報屋ガルシルの効果を発動!相手フィールドのモンスターの数が自分フィールドより多いとき、このカードは手札から特殊召喚できる!」
地神街の情報屋ガルシル
攻撃力2000/守備力2500
レベル:5
属性:地属性
種族:恐竜族
Pモンスター
効果
【P効果(Pスケール:青2/赤2)】
このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
①自分メインフェイズに発動できる。自分のEXデッキ(表側)から「地神街の情報屋ガルシル」以外のPモンスター1体を手札に加える。
【モンスター効果】
①相手フィールドのモンスターの数が自分フィールドのモンスターより多い場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
②1ターンに1度、自分のLPを1000払って発動できる。相手の手札を1枚選び確認する。そのカードと同じ種類(モンスター・魔法・罠)のカードを自分のデッキから1枚選び手札に加え、このカードの守備力を1000アップする。
ガルシルは恐竜が擬人化されたモンスターだ。手足や顔は恐竜そのもので見える肌は鱗で覆われているが、骨格は人間と同様で二足歩行をしている。格好は革のコートを着こなしたいかにも情報屋といった感じだ。
「俺はLPを1000払ってガルシルの効果を発動する!」
小鳥遊 広
LP1400→400
「希空の手札からランダムに1枚選んで確認し、そのカードと同じ種類のカードを俺のデッキから手札に加える!」
「俺は希空の手札の右のカードを選択するぜ!さぁ、見せてもらおうか!」
希空が公開したカードは楽園の陰美 ヒメであった。
「モンスターカードが公開されたことにより俺はデッキから《地神街の薬師ミューレ》を手札に加える!」
「その後ガルシルの守備力は1000アップする!」
地神街の情報屋ガルシル
守備力2500→3500
「そして手札に加えたミューレをそのまま召喚!」
地神街の薬師ミューレ
攻撃力600/守備力1500
レベル:4
属性:地属性
種族:爬虫類族
効果モンスター
①自分フィールドに「地神街"ガルド・バザール"」が存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
②1ターンに1度、このカードの守備力を5000ダウンして発動できる。自分のデッキ・墓地からLPを回復する効果を持つ魔法・罠カード1枚を選んで自分フィールドにセットする。
③LPを回復する効果を持つ魔法・罠カードの効果が発動した場合、発動する。このカードの守備力を1000アップする。
ミューレはガルシャーヌ達と同様にラミア型のモンスターだ。長い緑色の髪が特徴で、薬師の役柄も相まってか近くにいるだけでも癒されてしまうかのようなオーラを帯びている。
「ミューレの効果を発動!ミューレの守備力を500ダウンしデッキからLPを回復する効果を持つ魔法・罠カードを自分フィールドにセットする!」
「俺がセットするのは《アクシスの霊薬》!」
地神街の薬師ミューレ
守備力1500→1000
「そしてそのままアクシスの霊薬を発動だぁ!」
アクシスの霊薬
通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。
①以下の効果から1つ選んで適用する。
●自分のLPを8000になるように回復する。
●自分の墓地からモンスター1体を特殊召喚する。
現れたのはやや角張っている透明な小瓶であった。小瓶には青白く仄かに発光する液体が入っており、神聖な雰囲気を放っている。
「これは効果を選んで適用する魔法カード!」
「俺が今回選ぶのはもちろん蘇生の方!」
小瓶の蓋が開くと中の液体が一気に気化し青白く輝く煙に包まれた。
そして煙が晴れると俺のフィールドにはゼロードが舞い戻っていた。
「俺が墓地から特殊召喚したのは地神街の武具屋ゼロード!」
地神街の武具屋ゼロード
攻撃力1700/守備力2000
レベル4
属性:地属性
種族:爬虫類族
効果モンスター
①自分フィールドに「地神街"ガルド・バザール"」が存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
②1ターンに1度、このカードの守備力を1000ダウンして発動できる。デッキ・墓地から装備魔法カード1枚を選んで手札に加える。
③装備魔法カードが発動した場合、発動する。このカードの守備力を2000アップする。
「そしてLPを回復する効果を持つ魔法カードが発動したことによりミューレの守備力は1000アップする!」
地神街の薬師ミューレ
守備力1000→2000
「ゼロードの効果を発動!ゼロードの守備力を1000ダウンして墓地に存在する黄金剣-クリューサーオールを手札に加える!」
地神街の武具屋ゼロード
守備力2000→1000
「クリューサーオール…!ということはまた攻撃力を上げて一点突破で抜けようっていう魂胆だねっ?」
希空が俺へ問いかけるように言う。
「でもヒメの効果でヒメよりレベルの低いモンスターは攻撃できない!広のエースであるミルダムのレベルはヒメより低い8!ミルダムを出そうとも意味はないよ!」
「それに例えヒメを突破できたとしても残りのモンスターは攻撃力3000と4100、それじゃあ倒しきることはできたとしても勝ちきるのは難しいんじゃないかなぁ!」
希空はどことなく悪役のような、やられ役のような言い回しで現状を解説しながら俺をまくし立てる。
解説は負けフラグって知ってるか?
…というか?
なんか前のターンくらいから希空のテンション異様に高くない???
いや、そもそもこの決闘が始まったときから既にテンションが高い気もするんだけどさ?さっきの休み時間とかグループ決めの時は大人しいというか淑やかな感じだったし?
決闘に集中するがあまり素が出てきてるのかね。それか緊張が解れてきたとか?
いやまあ、俺としては今の方が決闘をしてて気分が乗って熱くなれるからいいんだけどね!
と、余計なことに思考を回してしまったが改めて決闘に集中し直す。
「…ならばお見せしよう俺のもう一つの切り札を!」
俺は希空に呼応するように気取って返答する。
「今俺のフィールドの神界の冒険者はその効果により地属性となっている!」
「そして神界の冒険者は前のターンに召喚されている。即ちこのターンには召喚されていない!」
「この2つの条件を満たした時!X召喚することのできるモンスターがいる!!」
俺は一呼吸入れる。
「俺は神界の冒険者1体でオーバーレイ!」
「地神の加護を授かり冒険者よ!その力覚醒させ敵を討て!」
「現れよランク4!鎧袖一触!《地神影の冒険者》ぁ!!」
オーバーレイの掛け声と共に金色と闇色の銀河のような渦が俺の前に現れ、神界の冒険者がオレンジ色の一筋の光となり渦の中心へと飛び込んでいく。その光が見えなくなった後渦の中心から白い光の柱が現れるのであった。
そして光の柱の中にはモンスターの姿が見える。
モンスターは鎧を身につけていた。いや、通常イメージする鎧とは異なるので鎧のようなものを身につけていたと言うのが正しいか。
見た目は薄透明な橙色のチェストプレートやグリーヴ、ガントレット等が全身を完全に覆った騎士といった感じで、薄透明な鎧の中身は神界の冒険者の姿が見える。鎧のサイズは神界の冒険者よりも一回りも二回りも遥かに大きく、鎧を着ているというよりは巨大ロボットに乗り込んでいるに近かった。
「地神影の冒険者の効果ぁ!X召喚に成功した時、このカード以外のフィールドのモンスターの守備力を全て0にする!」
地神街の薬師ミューレ
守備力2000→0
地神街の武具屋ゼロード
守備力1000→0
地神街の情報屋ガルシル
守備力3500→0
楽園の帝王 ブラック
守備力2400→0
楽園の瘴姫 ヒメ
守備力0
ガーディアン・キマイラ
守備力3300→0
「そしてぇ!ダウンさせた数値の合計分、冒険者の攻撃力と守備力をアップさせる!」
「!?」カン☆コーン
地神影の冒険者が手を天へ翳すと他のモンスター達から黄金色のオーラが湧き上がる。程なくしてそのオーラは地神影の冒険者へ吸収されるように伸びていくとどんどんと小さくなっていき、あっという間に吸い尽くされてしまうのであった。
地神影の冒険者
攻撃力1800/守備力3000
ランク4
属性:地属性
種族:戦士族
Xモンスター
地属性レベル4モンスター×4
「地神影の冒険者」は、「神界の冒険者」が召喚・特殊召喚されていないターンに1度、自分フィールドに存在する地属性の「神界の冒険者」の上に重ねてX召喚する事もできる。
①このカードが特殊召喚した場合に発動できる。フィールド上に存在するこのカード以外の全てのモンスターの守備力を0になるようにダウンし、このカードの攻撃力・守備力はこの効果でダウンさせた守備力の数値の合計分アップする。
②このカードが相手の効果で破壊される場合、代わりにこのカードの守備力を3000ダウンする事ができる。
③このカードの守備力より低い守備力を持つモンスターの効果が発動した場合、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。この効果を無効にし破壊する。
地神影の冒険者
攻撃力1800→14000
守備力3000→15200
「おまけに手札から黄金剣-クリューサーオールを地神影の冒険者に装備!それによってその守備力の数値分攻撃力はアップ!」
「さらにさらに装備魔法を発動したことでゼロードの守備力は2000アップ!」
地神影の冒険者
攻撃力14000→29200
地神街の武具屋ゼロード
守備力0→2000
「ッバトルだぁ!」
「地神影の冒険者で楽園の瘴姫 ヒメに攻撃ぃ!ガルド・インパクトぉ!」
俺の攻撃指示と共に地神影の冒険者は大地へとクリューサーオールを突き刺す。そしてそこを起点として放射線状に地割れが起きる。
地割れがヒメへと到達せんとすると、ヒメはなんとか逃れようとするが抵抗虚しく地割れへと飲み込まれるのであった。
五十嵐 希空
LP7500→0
「……勝負あり、だね」
「くっそー、エクシーズモンスターも居たのかぁ。ヒメが易々と突破されちゃったよ」
希空は俺の方へ寄ってくると少し悔しそうに、だが何処か満足そうに話しかけて来た。
「いんや、たまたまデッキの相性が良かっただけだよ」
「地神影の冒険者がなければ負けてたのは俺だったしな」
俺は希空に答えるようにその健闘を称えた。
「とりあえず決闘は終わったけど、待機してればいいんかね?」
「どうだろう?」
「周りを見る限りだと早く終わった組は自由に他の決闘を見てるみたいだし、ボク達もそうしない?」
「んだな。一先ずあっちの人集りができてるデュエルコートの方に行ってみるかぁ」
こうして決闘を終えた俺達は雑談をしながら移動を始めるのであった。
──────
─────
────
place:移動中
「そういえばさ」
「さっきの決闘中、なんか随分とテンションが高い気がしたけどあれが希空の素なのか?」
人集りがあるデュエルコートへ向かう途中、先程の決闘中にふと過ぎった疑問を希空へ問いかける。
「うっ…」
それに対して希空はうめき声のような声をあげると口元に手の甲を当て目を逸らした。
(やべ、なんかマぁズいこと聞いちゃったか?)
俺が希空のリアクションを見て内心焦っていれば、希空はどう返答すべきかと迷っているような様子であった。
少しの間を置き、希空は意を決したように頷くと、俯きがちに、どこか照れくさそうに話し始めた。
「そんな深く捉えないでね…?」
「いや、あのね?前の学校に通ってた時にさ?友達と決闘する機会があんまり…いやほとんど無くってさ──」
「もしかして…なんかハブられてたとかか?」
俺は食い気味に言葉を返す。
こんないい子をハブるとは何事か!俺ぁ憤りを隠せませんよ!
希空さんはなぁ!危うくぼっちになりかけた俺を救ってくれた救世主なんやぞ!めちゃくちゃいい人なんやぞ!
そぉれをお前──
「いやいや!ハブられてたとか虐められてたとかではないんだけどさ!」
希空は手をバタバタと振って俺の問いを否定する。
「なんと言うかぁ…そのぉ…笑わないで欲しいんだけどぉ…」
「ボクの見た目って…その…かわいい…みたいで…?それもケッコー…?」
「それで周りの子達から『かわいい!かわいい!』って蝶よ花よ〜みたいな感じで扱われちゃって、女子はボクを守らないと〜って親衛隊みたいのができてるし、男子はボクと一定のキョリを空けて接してくるしで、友達っていう友達もいなくって、決闘をするどころの状態じゃない学校生活でね?」
「この学園に入学して久々に友達ができて、決闘ができて、それがすっごく楽しくて」
「気分がアガりすぎちゃったんだ…」
「変なテンションで困惑させてゴメンね…?」
「そんな事情があったのか…」
まあ俺も初対面で希空のことその見た目の可憐さ故に女子と見間違えそうになったぐらいだし、こんだけ顔が良いと特別扱いしたくなる気持ちは分からんでもない。
だからと言って皆が皆特別扱いし出たら仲間はずれにしてるのと変わらんと思うがねぇ?
「それでね、タイミングもいいから言わせてもらいたいんだけど…その…」
「…ありがとね広、友達になってくれて。決闘してくれて。広からすれば普通のことかもしれないけど、ボクからするとそんな普通のことがすごく、すっごく嬉しかった!」
「それと、これからも友達としてよろしく…ね?」
希空は話を終えるとおずおずとした表情でこちらを見ている。
そんな希空の独白を聞いた俺は返答として──
「希空お前……流石にあざとすぎんか?(笑)」
──ちょけるのであった。
いやね、マジメに答えるべき場面だとは思いましたよ?
でもね!?マジメに畏まった言葉とか俺の柄じゃないのよ!
「…!?」
希空はそんな返答を予想していなかったのか目を丸くして驚いている。
「前の学校のヤツらがこぞって希空を特別扱いした気持ちがなんとなく分かったわ。分かってしまったわ」
さっきまで希空の前の学友のことを内心でボロクソ言っていたのに俺は早くも手のひらを返した。
いや、だって希空(この子)あざとすぎんだもん。
なんか小動物的な感じっていうのか?守ってあげたくなるっていうのか?
『これからも友達としてよろしく…ね?』って言った時なんか小首を傾げてる感じとか狙ってやってないとしたら怖すぎるぞ!?
希空に末恐ろしいものを感じつつ、俺はひとつ咳払いをして言葉を紡ぐ。
「まずひとつ、お願いなんかされなくても俺と希空(おまえ)はもう友達だ。頼まれたって辞めるつもりはねぇよ」
「だからそんな不安そうな顔すんな」
これは俺の本音だ。
「でもまあ?友達になったばっかの俺に胸の内をさらけ出せるとことか?あまつさえ超ヘビィな感謝の言葉とか?流石に距離の詰め方怖くてちょっと引いたけどな?(笑)」
「最初話した時は希空のことコミュ強かと思ってたけど、存外俺とは別ベクトルで希空もコミュ障か?可愛いね(笑)」
これは俺の揶揄いだ。
俺は┐(´ ∟ゝ `)┌のような顔とポーズを取りながらフッ…と鼻で笑う。
希空は友達からこんな揶揄いを受けたことが無かったのだろうか、「なっ…!な、なな、なぁ゛!?」のような謎の鳴き声を上げて呆気に取られたかのように目を白黒させている。
そして──
「ななな、なにその半笑いの顔はぁ!その生暖かい目線はぁ!その『ヤレヤレだぜぃ』みたいな態度はぁ!?」
──過剰なインプットからやっとアウトプットを出せたようで、希空は照れと恥ずかしさと怒りが入り交じったような表情で顔を赤くしながら俺の事を指差して抗議してくる。
「はいはい、そんな照れなくっていいって(笑)」
「肩の力抜けよ、マイフレンド(笑)」
俺は「うぇーい」と拳を希空へ向けグータッチを待つ態勢を取る。
「〜〜!!」
「──広のことなんてもう知らないんだからねっ!」
希空はツンデレのような捨て台詞を吐くとぷりぷりと怒りながら俺を置いて先へ行ってしまう。
俺は慌ててその後を追うのであった。
「機嫌直してくれよぉ〜。揶揄って悪かったって〜。ちょっとシリアスになった雰囲気を宥める小粋なジョークをかましただけだって〜」
「…あ、ほらっ!人集りに着きましたよ?!機嫌直して一緒に観戦しましょうよ!」
俺は希空の機嫌を取ろうと手でゴマを擦りながら希空の顔色を伺う。だが、希空は俺に目もくれないのだった。
ホントに怒らせてしまったかと頭をよぎるが希空の表情には怒りはなく、驚きのような畏怖のような感情が見えた。
これは俺に目もくれないのではない。これは何かに目を奪われている感じだ。
希空の視線の先を追うと件のデュエルコートに向かっていたので、俺もデュエルコートへ視線を向けると──
そこには異様な威圧感を放つ巨大にして強大な龍が鎮座していた。
「さぁ行くよ!ボクのターン!」
「ドロー!」
ターンは移り希空の手番。
俺の場には永続魔法ガルド・バザールがあるため、フィールドに存在する守備力より攻撃力が高いモンスターは効果が発動できない。
俺のモンスターゾーンにいる唯一のモンスターであるミルダムは、自身の守備力より低い守備力を持つモンスターの効果を受けない。加えて黄金剣-クリューサーオールを装備したことによって攻撃力が5000となっているので突破は容易ではないだろう。
この比較的万全の布陣で希空を迎え撃つ。
…まあ、魔法カードの突破札とかがあれば抜けられちゃうんだけどね!
地神街"ガルド・バザール"
永続魔法
①このカードの効果発動処理として、手札を1枚捨て、デッキから「地神」モンスターを2枚まで選び手札に加えることができる。
②自分フィールドにこのカードと「地神」モンスターが存在する限り、フィールドの「地神」以外のモンスターはその守備力をその攻撃力分ダウンさせなければ効果を発動できない。
地神街の黄金王ミルダム
攻撃力3000/守備力?
レベル:8
属性:地属性
種族:戦士族
ペンデュラムモンスター
【P効果(Pスケール:青9/赤9)】
このカード名のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
① 自分フィールドに「地神」永続魔法が存在しない場合、発動できる。デッキから「地神」永続魔法2枚を自分の魔法&罠ゾーンにセットする(同名カードは1枚まで)。その後、このカードを特殊召喚する。
【モンスター効果】
①このカードの元々の守備力は、自分フィールドに存在する「地神街の黄金王ミルダム」以外のモンスターの守備力の合計と同じ数値になる。
②このカードはこのカードの守備力より低い守備力を持つモンスターの効果を受けない。
③自分フィールドの「黄金トークン」以外のトークン1体を対象に発動できる。そのカードをリリースし、以下の効果を持つ「黄金トークン」(岩石族・地・星1・攻1000/守1000)1体を特殊召喚する。
●このカードをリリースして発動できる。自分フィールドのモンスターの守備力を1000アップする。
黄金剣-クリューサーオール
装備魔法
①装備モンスターの攻撃力は、そのモンスターの守備力分アップする。
②装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。
「スタンバイフェイズ、楽園の効果が発動しカウンターを1つ乗せる」
楽園
フィールド魔法
このカード名のカードはデュエル中に1度しか使用できず、このカードの発動に対して相手はカードを使用できない。
①このカードは相手の効果を受けない。
②自分スタンバイフェイズに発動する。このカードにカウンターを1つ置く。
③自分メインフェイズ1開始時に発動する。このカードに乗っているカウンターの数によって以下の効果を順番に適用する。この効果の発動に対して相手は効果を発動できない。
●1つ以上:自分のLPを8000にする。
●2つ以上:自分のデッキ・墓地から「楽園」カード1枚を選んで手札に加えることができる。
●3つ以上:自分のデッキから「楽園」モンスターを可能な限り特殊召喚できる。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。
●4つ以上:自分フィールドのカードの枚数が3枚になるようにこのカード以外のカードを墓地へ送る。
●5つ以上:このターンの終了時、自分のLPの数値分だけ自分のLPを失う。
楽園
カウンター0→1
「さらに手札から速攻魔法《楽園の営み》を発動。その効果でデッキから楽園モンスター《楽園の陰美 ヒメ》を特殊召喚。その後、楽園にカウンターを1つ乗せる」
楽園
カウンター1→2
楽園の営み
速攻魔法
このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。
①自分のデッキから「楽園」モンスター1体を選んで特殊召喚する。その後、自分フィールドの「楽園」にカウンターを1つ置くことができる。
楽園の陰美 ヒメ
攻撃力1200/守備力2000
レベル:4
属性:地属性
種族:獣族
効果モンスター
このカード名の②③の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
①自分フィールドに「楽園」が存在する場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
②自分・相手のメインフェイズにフィールドのモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターとこのカードで融合召喚を行う。
③フィールドのこのカードよりレベルの高いモンスター1体を対象に発動できる。そのカードの効果を次のターンのスタンバイフェイズまで無効にする。
楽園の営みの効果によって現れたモンスターは、クリーム色のボブカットに片目を前髪で隠した小柄のネズミ型の獣人のモンスターであった。
服装はどこかみすぼらしいものの顔は非常に整っており、見る者全ての目を奪って離さないだろう。
ただ纏う雰囲気は蠱惑的で、退廃的で、引き寄せられるが突き放されるような、まるで毒と砂糖とを煮詰めたかのようなものを想起させられた。
この背筋がゾクッとさせられる気配、これが希空のデッキのエースモンスターなのだろう。俺はそう直感した。
「それが希空のエースだな?」
伝う汗を拭いながら俺は問う。
「ご名答、やっぱ分かるんだね」
「──そう!このヒメこそが逆転の切り札!!今から始まるボクの全力の逆転劇…受け止めてね!!」
問いに対し、希空は身振り手振りをしながらどこか気取ったかのように、カッコつけたかのように応える。
「メインフェイズ1に移行し、その開始時にも楽園の効果が発動する!」
「今楽園に乗っているカウンターは2つ!よってボクのLPは8000になり、デッキから楽園の無情 カヤを手札に加えるよ!」
五十嵐 希空
LP6500→8000
前のターンに削ったLPが呆気なく元に戻ってしまった。
焦る気持ちを抑えつつ俺は楽園について考察を始める。
楽園は相手の効果を受けない効果があるため除去ができるカードは限られる。生憎俺のデッキにはその耐性を掻い潜って除去ができるカードはないため、除去ができないことは確定している。そうなれば1ターンで8000以上のダメージを与えなければ勝つことは難しい。
カウンターが5個乗っているときの効果は自滅する効果になってはいるが、恐らくそれの対策はされている筈なので耐久するのは悪手だろう。
それに希空は今し方逆転すると言いきったのだ。まずは今のターンをどう凌ぐかを考えなければいけないはずだ。
俺は「よし」と思考を一旦切り上げると、手札のカードに目を落とし、墓地や伏せカードを改めて確認し、受けの布陣に問題がないかを確認するのであった。
「フィールドの楽園の少女 アカネの効果を発動!この効果で楽園の帝王 ブラックをデッキから特殊召喚!」
「さらにブラックの特殊召喚時の効果!デッキから…と行きたかったんだけど、ガルド・バザールがあるから効果が発動できないんだったね」
「そしてガルド・バザールの効果でアカネの守備力はその攻撃力分、2000ダウンするよ」
楽園の少女 アカネ
攻撃力2000/守備力2000
レベル:5
属性:地属性
種族:獣族
効果モンスター
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①自分フィールドに「楽園」が存在する場合に発動できる。デッキからレベル5以上の「楽園」モンスター1体を選んで特殊召喚する。
②自分フィールドの「楽園の少女 アカネ」以外の「楽園」モンスターの攻撃力は500アップする。
③フィールドにこのカードよりレベルの高いモンスターが存在する場合、このカードは破壊されない。
楽園の帝王 ブラック
攻撃力3000/守備力2400
レベル:8
属性:地属性
種族:獣族
効果モンスター
このカード名の、①の方法による特殊召喚は1ターンに1度しか使用できない。
①自分フィールドに「楽園」が存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
②このカードが召喚・特殊召喚した場合に発動できる。デッキから「楽園」速攻魔法・通常罠カード1枚を手札に加える。
③このカードがフィールドに存在する限り、フィールドのモンスターのレベルは変更できない。
楽園の少女 アカネ
守備力2000→0
前のターンに倒したブラックまでもが戻ってきてしまい完全に元通りとなってしまう。いや、ヒメがいる分前のターンよりも状況は悪化している。
以降の展開によってはかなり不味いぞ…!
「よし!これで準備は整った!ここからはヒメの力を広に見せてあげるよ!!」
希空は意気揚々と宣言する。
「…応!来い!」
俺が内心焦りながらそう応えれは、希空は満足そうに頷くのであった。
「ヒメの攻撃力は1200、守備力は2000!よってガルド・バザールの制圧効果の影響下でも問題なく効果は使用できる!」
「ボクはヒメの②の効果を発動!ボクのフィールドのアカネを対象にヒメと融合する!!」
融合召喚の宣言がなされると希空の背後に青とオレンジの渦、融合のカードイラストと同じ渦が現れる。そしてその渦に楽園の少女 アカネと楽園の陰美 ヒメは吸い込まれていく。
そして希空は自身の体の前で指を組む。
「冒涜の獣よ!絢爛の華よ!堕落の奸計にて永世の都市を支配せよ!融合召喚!!」
「現れよ!想いを焦がす大罪の炎!《楽園の瘴姫 ヒメ》!!」
召喚の宣言と共に辺りが一瞬にして炎に包まれる。そして炎の中から現れたのは、血のような赤に金や宝石の装飾が施され所々が薄く透けた扇情的なドレスに身を包んだ、美しいながらもどこかみすぼらしかった先程までとは全く異なるヒメであった。
その美貌には華やかで毒々しい化粧が施されており、深淵のように光がない瞳に射抜かれてしまえば、瞳の奥に吸い込まれてしまうような錯覚を引き起こすだろう。
形容するなれば焔の如き傾国の美人、そんな言葉がしっくりくるのであった。
楽園の瘴姫 ヒメ
攻撃力2700/守備力2700
レベル:9
属性:炎属性
種族:獣族
融合モンスター
「楽園の陰美 ヒメ」+効果モンスター
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①自分フィールドに「楽園」が存在する場合に発動できる。自分は相手フィールドのカードを1枚選ぶ。相手はそのカードを墓地へ送らなければならない。
②自分・相手のメインフェイズに自分のLPを500払って発動できる。デッキから「楽園」モンスター1体を選んで特殊召喚する。
③このカードよりレベルの低い相手モンスターは攻撃できない。
「その特殊召喚成功時、俺は伏せていた《地神砂海の大流砂》を楽園の瘴姫 ヒメを対象に発動!その効果で対象モンスター及びそのモンスターより守備力の低い相手モンスターを全て手札に戻す!」
「ムダだよ!さっき手札に加えた楽園の無情 カヤを手札からリリースすることでその効果を無効化するよ!」
地神砂海の大流砂
通常罠
①モンスターが召喚・特殊召喚・反転召喚された時、フィールドのモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスター及びフィールドに存在するそのモンスターより守備力の低い相手モンスターを全て手札に戻す。
②自分フィールドに「地神砂海"ガルメギス"」が存在し、このカードがこのターンに墓地へ送られていなければ発動できる。墓地のこのカードを自分フィールドにセットする。
楽園の無情 カヤ
攻撃力0/守備力0
レベル:1
属性:地属性
種族:獣族
効果モンスター
このカード名のカードの①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①自分フィールドに「楽園」が存在し、相手が効果を発動した場合、手札・フィールドのこのカードをリリースして発動できる。その効果を無効化する。
②このカードが墓地に存在し、自分のフィールドに「楽園」モンスターが存在しない場合に発動できる。このカードを手札に加えるか自分フィールドに特殊召喚する。その後、自分はLPを2000失う。
(大流砂をカヤに無効化されるのは想定内!ここはカヤを消費させるのが正解!)
思い通りにいったことで俺は内心ほくそ笑む。ここで予期せぬ妨害が飛んできていたらかなり不味い状況になっていたので一安心だ。
「楽園の瘴姫 ヒメの効果を発動!ボクは地神街の黄金王ミルダムを選択することで、相手はそのカードを墓地へ送らなければならない!愛欲の支配(テンプテーション・ドミネイティング)!」
希空の指示を受けるとヒメは不敵な笑みを浮かべる。そして一瞬のまばたきの間にその姿が俺の視界から消える。どこに行ったのだと辺りを見回せば、背後から伸びてきた手に目を覆われ視界が奪われる。そして鼻腔がくすぐられるような甘ったるい香りを感じ取ったときには俺の意識は朦朧としてしまう。
そして意識がはっきりした時には(といってもその実5秒も経っていないのだが)フィールドにミルダムの姿は無かった。
「…だが!ヒメの守備力は2700ダウンするぜ!」
楽園の瘴姫 ヒメ
守備力2700→0
しかし俺の場はがら空き、よってガルド・バザールはその効力を失ってしまう。そしてまだヒメには2つ目の効果がある…!
「ヒメのもうひとつの効果を発動!LPを500払いデッキからもう1体のブラックを特殊召喚!」
五十嵐 希空
LP8000→7500
「そして地神モンスターがいなくなったことでガルド・バザールの制圧効果は効力を失っているためブラックの効果が発動する!」
「ボクはデッキから《楽園の支配》を手札に加える!」
こうして希空の場にはブラックが2体、前のターンに召喚されたダイコク、そしてヒメと計4体のモンスターが並んでしまった。
楽園の帝王 ブラック
攻撃力3000
楽園の帝王 ブラック
攻撃力3000
楽園の無頼 ダイコク
攻撃力2300
楽園の瘴姫 ヒメ
攻撃力2700
「──バトルだ!楽園の帝王 ブラックで広へ直接攻撃!」
ブラックは懐から拳銃を取り出すと俺に向けて照準を合わせる。そしてその引き金にゆっくりと指をかける。
今まさに銃弾が放たれようとしている時、俺は宣言する。
「この瞬間、俺は墓地の《精霊の加護》の効果を発動する!!その効果で墓地またはEXデッキに表側で存在する属性を持たないモンスターを攻撃表示で特殊召喚できる!」
「俺はEXデッキの神界の冒険者を攻撃表示で特殊召喚する!来い、神界の冒険者!」
「!!」
「そんなカードいつの間に!」
「…前のターンにガルド・バザールの効果で手札を捨てただろ?その時に捨てたのがこのカードさ」
精霊の加護
通常罠
①自分フィールドに属性を持たないモンスターが存在する場合、属性を1つ宣言して発動できる。このターン、フィールドの宣言した属性を持つモンスターの効果は無効化される。
②墓地のこのカードを除外して発動できる。自分のEXデッキ(表側)・墓地から属性を持たないモンスター1体を選び攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン中のみ戦闘・効果で破壊されない。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。
神界の冒険者
攻撃力1800/守備力1000
レベル:4
属性:(なし)
種族:戦士族
ペンデュラムモンスター
【P効果(Pスケール:青0/赤10)】
①もう片方の自分のPゾーンにカードが存在しない場合に発動できる。このカードをそのPゾーンに置く。
【モンスター効果】
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードの属性は自分フィールドに存在するそれぞれのモンスターと同じ属性としても扱い、このカードと同じ属性のモンスターの効果を受けない。
②自分がモンスターを召喚・特殊召喚した場合に発動できる。自分の手札・デッキからこのカードと同じ属性のモンスター1体を選んで特殊召喚する。
「…くっ!」
「でもバトルは続行するよ!ボクはそのままブラックで神界の冒険者に攻撃!」
ブラックは俺に向けていた銃を神界の冒険者へ向け直すと引き金を引く。そして拳銃は火を吹き、放たれた弾丸は神界の冒険者へと襲いかかる。
…が、問題はない!
「精霊の加護の効果によって特殊召喚されたモンスターはこのターンのみ戦闘・効果では破壊されない!」
「…っ!でもダメージは受けてもらうよ!」
「ぐっ…」
小鳥遊 広
LP7500→6300
神界の冒険者は破壊はされなかったものの、貫通した弾丸は俺をも貫き、俺はダメージを受けるのであった。
「もう1体のブラックと楽園の無頼 ダイコクも神界の冒険者へ攻撃!」
小鳥遊 広
LP6300→5100→4600
「最後に楽園の瘴姫 ヒメも神界の冒険者へ攻撃だ!堕落の果実(ザ・フォールン)!」
ヒメは体の前で何かを持つかのように、掬い上げるかのように手のひらを上に向ける。間もなく赤黒い光が手のひらの上に集まり出せばあっという間にリンゴ程の大きさの光球が形成される。
ヒメはその赤黒い光球を放り捨てると光球は神界の冒険者へふよふよと漂いながら向かい、あと数メートルというところまで近づくと大爆発を起こすのであった。
「ぐぁっ…」
小鳥遊 広
LP4600→3700
「っ…。ふぅ、なんとか耐えきったぜ…」
ふぅふぅと息をしながらかいた冷や汗を拭う。
精霊の加護の効果が通ったから良かったものの、あれが無効化されてたら負けてたぞ。
学園に入って早々の限界バトルで若干胃がキリキリとするが気を取り直して次のターンへ気持ちを切り替えようとする──
「──まだだ!ボクは速攻魔法、楽園の支配を発動!」
希空勢いよく手を振り上げる。それに呼応するように楽園の支配のカードが高々と表示される。
「!!」
俺は急の事に驚き希空へ視線を合わせる。
「ボクのフィールドのダイコクとブラック、そして手札の《楽園の気障 スミス》を融合素材として融合召喚を行う!」
「守護者に座す合成獣よ!その悉くを討ち滅ぼせ!融合召喚!!」
「現れよ!《ガーディアン・キマイラ》!」
3体のモンスターが融合の渦へと吸い込まれると、その渦の中から獣の手が這い出してくる。そして手が渦の淵を掴むとモンスターが勢いよく飛びててくる。
モンスターは三つ首の怪物でそれぞれが獅子・猛禽・竜のような見た目をしており、胴体には漆黒の鎧を身につけていた。生えている尾は蛇になっており明らかな異形、合成獣(キマイラ)と呼ばれるものであった。
楽園の支配
速攻魔法
①自分の手札・フィールドの「楽園」モンスターを融合素材とし、融合モンスター1体を融合召喚する。さらにこの効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力は、そのレベル×100アップする。
②自分フィールドの「楽園」カードが破壊される場合、代わりに墓地のこのカードを除外できる。
ガーディアン・キマイラ(OCGカード)
攻撃力3300/守備力3300
レベル:9
属性:闇属性
種族:獣族
融合モンスター
カード名が異なるモンスター×3
このカードは手札と自分フィールドのモンスターのみをそれぞれ1体以上素材とした融合召喚でのみEXデッキから特殊召喚できる。
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①このカードが魔法カードの効果で融合召喚に成功した場合に発動できる。手札で融合素材としたカードの数だけ自分はデッキからドローし、フィールドで融合素材としたカードの数だけ相手フィールドのカードを選んで破壊する。
②:自分の墓地に「融合」が存在する限り、このカードは相手の効果の対象にならない。
「楽園の支配によって融合召喚したモンスターの攻撃力は、そのレベル×100アップする!」
ガーディアン・キマイラ
攻撃力3300→4100
「そして融合召喚に成功したガーディアン・キマイラの効果を発動!」
「ボクは1枚ドローし、広のフィールドのガルド・バザールと神界の冒険者を選んで破壊する!…ま、神界の冒険者は破壊できないんだけどね」
ガーディアン・キマイラが猛烈な咆哮を上げると俺のガルド・バザールが耐える間もなく破壊されてしまう。神界の冒険者は咆哮を受けるがなんとか耐え凌ぐ。
全てのゾーンが埋まらんとするくらいには横広がりしていた俺の場には、神界の冒険者と地神砂海"ガルメギス"しか残っていないのであった。
地神砂海"ガルメギス"
永続魔法
効果
①このカードの効果発動処理として、自分のデッキ・墓地から「地神砂海"ガルメギス"」以外の「地神砂海」魔法・罠カード1枚を手札に加える。
②1ターンに1度、発動できる。自分フィールドに「砂トークン」(岩石族・地・星1・攻/守0)2体を特殊召喚する。このトークンは素材にできない。
(破壊可能なガルメギスをわざわざ破壊しなかったのはミルダムを再利用されたときにそのP効果でアドを稼がれるのを阻止するためだな?)
ミルダムは地神永続魔法があるとそのP効果を使用できない。ミルダムのP効果はかなり強力なためできれば何度も使用したいが、その制約がネックなのだ。
ミルダムを回収し直す算段は付けていたのだが無駄になってしまったなぁと俺は感嘆する。
「そして今はまだバトルフェイズ中!ガーディアン・キマイラで神界の冒険者へ攻撃!」
ガーディアン・キマイラがその前腕?前足?を振り上げて地面を強打すると衝撃波が発生する。衝撃波はまず神界の冒険者へ到達し勢いが減衰されるが、依然と強い勢いで俺へと到達する。
「ぐぅぅ…!」
小鳥遊 広
LP3700→1400
「決めきれなかったね…」
「…でもやれることは全部やった!ボクはこれでターンエンドするよ!」
五十嵐 希空
LP7500
手札:2枚
バトルゾーン:楽園の帝王 ブラック
楽園の瘴姫 ヒメ
ガーディアン・キマイラ
魔法・罠ゾーン:なし
フィールド魔法ゾーン:楽園
「…希空の猛攻、凄かったぜ!だがこっからは俺の逆転劇だ!刮目するがいい!」
「俺のターン!ドロー!」
俺の手札は4枚。まずここは前のターンにサーチしたガルシルで場を整える!
「俺は手札の地神街の情報屋ガルシルの効果を発動!相手フィールドのモンスターの数が自分フィールドより多いとき、このカードは手札から特殊召喚できる!」
地神街の情報屋ガルシル
攻撃力2000/守備力2500
レベル:5
属性:地属性
種族:恐竜族
Pモンスター
効果
【P効果(Pスケール:青2/赤2)】
このカード名の①のP効果は1ターンに1度しか使用できない。
①自分メインフェイズに発動できる。自分のEXデッキ(表側)から「地神街の情報屋ガルシル」以外のPモンスター1体を手札に加える。
【モンスター効果】
①相手フィールドのモンスターの数が自分フィールドのモンスターより多い場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。
②1ターンに1度、自分のLPを1000払って発動できる。相手の手札を1枚選び確認する。そのカードと同じ種類(モンスター・魔法・罠)のカードを自分のデッキから1枚選び手札に加え、このカードの守備力を1000アップする。
ガルシルは恐竜が擬人化されたモンスターだ。手足や顔は恐竜そのもので見える肌は鱗で覆われているが、骨格は人間と同様で二足歩行をしている。格好は革のコートを着こなしたいかにも情報屋といった感じだ。
「俺はLPを1000払ってガルシルの効果を発動する!」
小鳥遊 広
LP1400→400
「希空の手札からランダムに1枚選んで確認し、そのカードと同じ種類のカードを俺のデッキから手札に加える!」
「俺は希空の手札の右のカードを選択するぜ!さぁ、見せてもらおうか!」
希空が公開したカードは楽園の陰美 ヒメであった。
「モンスターカードが公開されたことにより俺はデッキから《地神街の薬師ミューレ》を手札に加える!」
「その後ガルシルの守備力は1000アップする!」
地神街の情報屋ガルシル
守備力2500→3500
「そして手札に加えたミューレをそのまま召喚!」
地神街の薬師ミューレ
攻撃力600/守備力1500
レベル:4
属性:地属性
種族:爬虫類族
効果モンスター
①自分フィールドに「地神街"ガルド・バザール"」が存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
②1ターンに1度、このカードの守備力を5000ダウンして発動できる。自分のデッキ・墓地からLPを回復する効果を持つ魔法・罠カード1枚を選んで自分フィールドにセットする。
③LPを回復する効果を持つ魔法・罠カードの効果が発動した場合、発動する。このカードの守備力を1000アップする。
ミューレはガルシャーヌ達と同様にラミア型のモンスターだ。長い緑色の髪が特徴で、薬師の役柄も相まってか近くにいるだけでも癒されてしまうかのようなオーラを帯びている。
「ミューレの効果を発動!ミューレの守備力を500ダウンしデッキからLPを回復する効果を持つ魔法・罠カードを自分フィールドにセットする!」
「俺がセットするのは《アクシスの霊薬》!」
地神街の薬師ミューレ
守備力1500→1000
「そしてそのままアクシスの霊薬を発動だぁ!」
アクシスの霊薬
通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1度しか使用できない。
①以下の効果から1つ選んで適用する。
●自分のLPを8000になるように回復する。
●自分の墓地からモンスター1体を特殊召喚する。
現れたのはやや角張っている透明な小瓶であった。小瓶には青白く仄かに発光する液体が入っており、神聖な雰囲気を放っている。
「これは効果を選んで適用する魔法カード!」
「俺が今回選ぶのはもちろん蘇生の方!」
小瓶の蓋が開くと中の液体が一気に気化し青白く輝く煙に包まれた。
そして煙が晴れると俺のフィールドにはゼロードが舞い戻っていた。
「俺が墓地から特殊召喚したのは地神街の武具屋ゼロード!」
地神街の武具屋ゼロード
攻撃力1700/守備力2000
レベル4
属性:地属性
種族:爬虫類族
効果モンスター
①自分フィールドに「地神街"ガルド・バザール"」が存在する場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
②1ターンに1度、このカードの守備力を1000ダウンして発動できる。デッキ・墓地から装備魔法カード1枚を選んで手札に加える。
③装備魔法カードが発動した場合、発動する。このカードの守備力を2000アップする。
「そしてLPを回復する効果を持つ魔法カードが発動したことによりミューレの守備力は1000アップする!」
地神街の薬師ミューレ
守備力1000→2000
「ゼロードの効果を発動!ゼロードの守備力を1000ダウンして墓地に存在する黄金剣-クリューサーオールを手札に加える!」
地神街の武具屋ゼロード
守備力2000→1000
「クリューサーオール…!ということはまた攻撃力を上げて一点突破で抜けようっていう魂胆だねっ?」
希空が俺へ問いかけるように言う。
「でもヒメの効果でヒメよりレベルの低いモンスターは攻撃できない!広のエースであるミルダムのレベルはヒメより低い8!ミルダムを出そうとも意味はないよ!」
「それに例えヒメを突破できたとしても残りのモンスターは攻撃力3000と4100、それじゃあ倒しきることはできたとしても勝ちきるのは難しいんじゃないかなぁ!」
希空はどことなく悪役のような、やられ役のような言い回しで現状を解説しながら俺をまくし立てる。
解説は負けフラグって知ってるか?
…というか?
なんか前のターンくらいから希空のテンション異様に高くない???
いや、そもそもこの決闘が始まったときから既にテンションが高い気もするんだけどさ?さっきの休み時間とかグループ決めの時は大人しいというか淑やかな感じだったし?
決闘に集中するがあまり素が出てきてるのかね。それか緊張が解れてきたとか?
いやまあ、俺としては今の方が決闘をしてて気分が乗って熱くなれるからいいんだけどね!
と、余計なことに思考を回してしまったが改めて決闘に集中し直す。
「…ならばお見せしよう俺のもう一つの切り札を!」
俺は希空に呼応するように気取って返答する。
「今俺のフィールドの神界の冒険者はその効果により地属性となっている!」
「そして神界の冒険者は前のターンに召喚されている。即ちこのターンには召喚されていない!」
「この2つの条件を満たした時!X召喚することのできるモンスターがいる!!」
俺は一呼吸入れる。
「俺は神界の冒険者1体でオーバーレイ!」
「地神の加護を授かり冒険者よ!その力覚醒させ敵を討て!」
「現れよランク4!鎧袖一触!《地神影の冒険者》ぁ!!」
オーバーレイの掛け声と共に金色と闇色の銀河のような渦が俺の前に現れ、神界の冒険者がオレンジ色の一筋の光となり渦の中心へと飛び込んでいく。その光が見えなくなった後渦の中心から白い光の柱が現れるのであった。
そして光の柱の中にはモンスターの姿が見える。
モンスターは鎧を身につけていた。いや、通常イメージする鎧とは異なるので鎧のようなものを身につけていたと言うのが正しいか。
見た目は薄透明な橙色のチェストプレートやグリーヴ、ガントレット等が全身を完全に覆った騎士といった感じで、薄透明な鎧の中身は神界の冒険者の姿が見える。鎧のサイズは神界の冒険者よりも一回りも二回りも遥かに大きく、鎧を着ているというよりは巨大ロボットに乗り込んでいるに近かった。
「地神影の冒険者の効果ぁ!X召喚に成功した時、このカード以外のフィールドのモンスターの守備力を全て0にする!」
地神街の薬師ミューレ
守備力2000→0
地神街の武具屋ゼロード
守備力1000→0
地神街の情報屋ガルシル
守備力3500→0
楽園の帝王 ブラック
守備力2400→0
楽園の瘴姫 ヒメ
守備力0
ガーディアン・キマイラ
守備力3300→0
「そしてぇ!ダウンさせた数値の合計分、冒険者の攻撃力と守備力をアップさせる!」
「!?」カン☆コーン
地神影の冒険者が手を天へ翳すと他のモンスター達から黄金色のオーラが湧き上がる。程なくしてそのオーラは地神影の冒険者へ吸収されるように伸びていくとどんどんと小さくなっていき、あっという間に吸い尽くされてしまうのであった。
地神影の冒険者
攻撃力1800/守備力3000
ランク4
属性:地属性
種族:戦士族
Xモンスター
地属性レベル4モンスター×4
「地神影の冒険者」は、「神界の冒険者」が召喚・特殊召喚されていないターンに1度、自分フィールドに存在する地属性の「神界の冒険者」の上に重ねてX召喚する事もできる。
①このカードが特殊召喚した場合に発動できる。フィールド上に存在するこのカード以外の全てのモンスターの守備力を0になるようにダウンし、このカードの攻撃力・守備力はこの効果でダウンさせた守備力の数値の合計分アップする。
②このカードが相手の効果で破壊される場合、代わりにこのカードの守備力を3000ダウンする事ができる。
③このカードの守備力より低い守備力を持つモンスターの効果が発動した場合、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。この効果を無効にし破壊する。
地神影の冒険者
攻撃力1800→14000
守備力3000→15200
「おまけに手札から黄金剣-クリューサーオールを地神影の冒険者に装備!それによってその守備力の数値分攻撃力はアップ!」
「さらにさらに装備魔法を発動したことでゼロードの守備力は2000アップ!」
地神影の冒険者
攻撃力14000→29200
地神街の武具屋ゼロード
守備力0→2000
「ッバトルだぁ!」
「地神影の冒険者で楽園の瘴姫 ヒメに攻撃ぃ!ガルド・インパクトぉ!」
俺の攻撃指示と共に地神影の冒険者は大地へとクリューサーオールを突き刺す。そしてそこを起点として放射線状に地割れが起きる。
地割れがヒメへと到達せんとすると、ヒメはなんとか逃れようとするが抵抗虚しく地割れへと飲み込まれるのであった。
五十嵐 希空
LP7500→0
「……勝負あり、だね」
「くっそー、エクシーズモンスターも居たのかぁ。ヒメが易々と突破されちゃったよ」
希空は俺の方へ寄ってくると少し悔しそうに、だが何処か満足そうに話しかけて来た。
「いんや、たまたまデッキの相性が良かっただけだよ」
「地神影の冒険者がなければ負けてたのは俺だったしな」
俺は希空に答えるようにその健闘を称えた。
「とりあえず決闘は終わったけど、待機してればいいんかね?」
「どうだろう?」
「周りを見る限りだと早く終わった組は自由に他の決闘を見てるみたいだし、ボク達もそうしない?」
「んだな。一先ずあっちの人集りができてるデュエルコートの方に行ってみるかぁ」
こうして決闘を終えた俺達は雑談をしながら移動を始めるのであった。
──────
─────
────
place:移動中
「そういえばさ」
「さっきの決闘中、なんか随分とテンションが高い気がしたけどあれが希空の素なのか?」
人集りがあるデュエルコートへ向かう途中、先程の決闘中にふと過ぎった疑問を希空へ問いかける。
「うっ…」
それに対して希空はうめき声のような声をあげると口元に手の甲を当て目を逸らした。
(やべ、なんかマぁズいこと聞いちゃったか?)
俺が希空のリアクションを見て内心焦っていれば、希空はどう返答すべきかと迷っているような様子であった。
少しの間を置き、希空は意を決したように頷くと、俯きがちに、どこか照れくさそうに話し始めた。
「そんな深く捉えないでね…?」
「いや、あのね?前の学校に通ってた時にさ?友達と決闘する機会があんまり…いやほとんど無くってさ──」
「もしかして…なんかハブられてたとかか?」
俺は食い気味に言葉を返す。
こんないい子をハブるとは何事か!俺ぁ憤りを隠せませんよ!
希空さんはなぁ!危うくぼっちになりかけた俺を救ってくれた救世主なんやぞ!めちゃくちゃいい人なんやぞ!
そぉれをお前──
「いやいや!ハブられてたとか虐められてたとかではないんだけどさ!」
希空は手をバタバタと振って俺の問いを否定する。
「なんと言うかぁ…そのぉ…笑わないで欲しいんだけどぉ…」
「ボクの見た目って…その…かわいい…みたいで…?それもケッコー…?」
「それで周りの子達から『かわいい!かわいい!』って蝶よ花よ〜みたいな感じで扱われちゃって、女子はボクを守らないと〜って親衛隊みたいのができてるし、男子はボクと一定のキョリを空けて接してくるしで、友達っていう友達もいなくって、決闘をするどころの状態じゃない学校生活でね?」
「この学園に入学して久々に友達ができて、決闘ができて、それがすっごく楽しくて」
「気分がアガりすぎちゃったんだ…」
「変なテンションで困惑させてゴメンね…?」
「そんな事情があったのか…」
まあ俺も初対面で希空のことその見た目の可憐さ故に女子と見間違えそうになったぐらいだし、こんだけ顔が良いと特別扱いしたくなる気持ちは分からんでもない。
だからと言って皆が皆特別扱いし出たら仲間はずれにしてるのと変わらんと思うがねぇ?
「それでね、タイミングもいいから言わせてもらいたいんだけど…その…」
「…ありがとね広、友達になってくれて。決闘してくれて。広からすれば普通のことかもしれないけど、ボクからするとそんな普通のことがすごく、すっごく嬉しかった!」
「それと、これからも友達としてよろしく…ね?」
希空は話を終えるとおずおずとした表情でこちらを見ている。
そんな希空の独白を聞いた俺は返答として──
「希空お前……流石にあざとすぎんか?(笑)」
──ちょけるのであった。
いやね、マジメに答えるべき場面だとは思いましたよ?
でもね!?マジメに畏まった言葉とか俺の柄じゃないのよ!
「…!?」
希空はそんな返答を予想していなかったのか目を丸くして驚いている。
「前の学校のヤツらがこぞって希空を特別扱いした気持ちがなんとなく分かったわ。分かってしまったわ」
さっきまで希空の前の学友のことを内心でボロクソ言っていたのに俺は早くも手のひらを返した。
いや、だって希空(この子)あざとすぎんだもん。
なんか小動物的な感じっていうのか?守ってあげたくなるっていうのか?
『これからも友達としてよろしく…ね?』って言った時なんか小首を傾げてる感じとか狙ってやってないとしたら怖すぎるぞ!?
希空に末恐ろしいものを感じつつ、俺はひとつ咳払いをして言葉を紡ぐ。
「まずひとつ、お願いなんかされなくても俺と希空(おまえ)はもう友達だ。頼まれたって辞めるつもりはねぇよ」
「だからそんな不安そうな顔すんな」
これは俺の本音だ。
「でもまあ?友達になったばっかの俺に胸の内をさらけ出せるとことか?あまつさえ超ヘビィな感謝の言葉とか?流石に距離の詰め方怖くてちょっと引いたけどな?(笑)」
「最初話した時は希空のことコミュ強かと思ってたけど、存外俺とは別ベクトルで希空もコミュ障か?可愛いね(笑)」
これは俺の揶揄いだ。
俺は┐(´ ∟ゝ `)┌のような顔とポーズを取りながらフッ…と鼻で笑う。
希空は友達からこんな揶揄いを受けたことが無かったのだろうか、「なっ…!な、なな、なぁ゛!?」のような謎の鳴き声を上げて呆気に取られたかのように目を白黒させている。
そして──
「ななな、なにその半笑いの顔はぁ!その生暖かい目線はぁ!その『ヤレヤレだぜぃ』みたいな態度はぁ!?」
──過剰なインプットからやっとアウトプットを出せたようで、希空は照れと恥ずかしさと怒りが入り交じったような表情で顔を赤くしながら俺の事を指差して抗議してくる。
「はいはい、そんな照れなくっていいって(笑)」
「肩の力抜けよ、マイフレンド(笑)」
俺は「うぇーい」と拳を希空へ向けグータッチを待つ態勢を取る。
「〜〜!!」
「──広のことなんてもう知らないんだからねっ!」
希空はツンデレのような捨て台詞を吐くとぷりぷりと怒りながら俺を置いて先へ行ってしまう。
俺は慌ててその後を追うのであった。
「機嫌直してくれよぉ〜。揶揄って悪かったって〜。ちょっとシリアスになった雰囲気を宥める小粋なジョークをかましただけだって〜」
「…あ、ほらっ!人集りに着きましたよ?!機嫌直して一緒に観戦しましょうよ!」
俺は希空の機嫌を取ろうと手でゴマを擦りながら希空の顔色を伺う。だが、希空は俺に目もくれないのだった。
ホントに怒らせてしまったかと頭をよぎるが希空の表情には怒りはなく、驚きのような畏怖のような感情が見えた。
これは俺に目もくれないのではない。これは何かに目を奪われている感じだ。
希空の視線の先を追うと件のデュエルコートに向かっていたので、俺もデュエルコートへ視線を向けると──
そこには異様な威圧感を放つ巨大にして強大な龍が鎮座していた。
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