【３話】初狩り　作：ゲトゥ

巨漢の騎士がこちらに馬で駆けてくる。

逃げなければ――

しかし、体は思うように動かない。

これが夢だからか？自分の体の動かし方をイメージできていないのか？

騎士はすでに目の前で手に携えた巨大なハルバードを振り上げている。

避、否、死 ――

無慈悲に振り降ろされた斧槍。

だが、自らの死よりも先に心の中にイメージされたモノ。

己の内より力の奔流が迸る。

「魔、《魔導戦士ブレイカー》！」

気が付くと、赤い甲冑の戦士が盾で斧槍を受け止めていた。

「で、できた…！召喚成功だ！」

自らの死の確信よりも、魔導戦士ブレイカーとツリーガードの対峙見たさが勝った！

戦士と騎士の攻防が始まる。

ブレイカーはツリーガードの猛攻を盾でいなし、反撃の剣を撃ち込む。

しかし、騎士の鉄壁の守りの前では大したダメージになっていない。

ブレイカーは善戦しているが、拮抗が崩れるのは時間の問題に思えた。

ツリーガードは俺がテレビゲームであるエルデンリングを始めて早々に出会ったボスで、序盤で戦うにはあまりに強力すぎる相手だった。

ゲームでは何百回と殺され、ゲーム開始早々６時間も消費させられた難敵だ。

簡単に倒せるはずがないと俺自身が確信してしまっている…！

次の一手を打たねばブレイカーがもたない。

「来い、《霊クラゲ ー クララ ー》！」

召喚に応じ、エルデンリングのクラゲモンスターが呼び出される。

「クララ、ツリーガードに攻撃しろ！」

攻撃命令を受け、クララが攻撃を仕掛ける。

クララから放たれた電撃がツリーガードを襲う。

あれぇ？！《霊クラゲー クララ ー》の攻撃方法は毒霧のはず…

まさか《海月 ジェリーフィッシュ》のモンスターカードと混同されてる？

しかし、攻撃には違いない。

と思ったのもつかの間、電撃に対しツリーガードは盾を構えた。

電撃が盾に当たる間際、盾から魔法陣が浮かび上がった。

電撃が魔法陣にぶつかった瞬間、光弾となってクララへ跳ね返された。

クララは光弾を受け、吹っ飛ばされる。

しまった、あいつの盾には魔術や奇跡を光弾に変換してはじき返す効果があった……

ツリーガードが難敵と言われる所以の一つだ。

巨躯によるタフネス、騎馬での機動力、搦め手には盾による反射。

これほど完成された戦力が他にあるだろうか。

だが、敵対した以上は何としても倒さなければならない。

圧倒的な力がいる――

ならば、《聖なるバリアー ミラーフォース ー》や《サンダーボルト》のような強力な効果は…

… 俺には使えるはずがないと確信してしまっている。

自分自身を納得させるだけの根拠がなければイメージを具現化させられない。

それが俺のルールだと感じる。

「なら… お前なら来てくれるだろ！」

俺にとって、特別なカード。

「《魔導戦士ブレイカー》と《霊クラゲー クララ ー》をダブルリリース！」

俺自身が、信じられるカード！

「レベル７！《ハーピィズペット竜》を召喚！」


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