Draw４ 新しい場所　作：スケア

「はい、今日は皆さんにお知らせがあります。」
私、水白 遊季が新しく入ることになったクラスの担任の多比良(たいら)美亜（みあ）の一言がクラスの中に響いた。私は今は教室の扉の前にいるけどクラスのざわつきが聞こえてくる。「なにがあるんだ？」とか「転校生かな？」などの声も聞こえてくる。まぁ…後者のが正解なんだけど…
「このクラスに転入生が来ます。」
再び、多比良美亜の声が聞こえてきた。みんなの注目が私に向くと考えると緊張が込み上げてくる。
心を落ち着かせているといつの間にか多比良美亜が扉の前まで来ていていた。扉を開けて「どうぞ、入って」と促された。緊張はしていた。私は頷くだけで教室に入り。教卓の隣までゆっくりと向かった。
教卓の隣まで行くまでなのに遠く感じた。「綺麗」や「かわいい」など色々な声が聞こえて心は落ち着かなかった。教卓の隣まで来て初めて生徒の方を向く。
自己紹介をどうぞ。と再び促されたので「水白 遊季です。よろしくお願いします」と言った。これしか言えなかった。「できれば、質問などは個人で聞きに来て欲しいです。」続けれたのはこれだけだった。初対面で自分の事をさらけ出すのは勇気がでなかった。まだあちらのこともわからないのに。
あなたはあの席へ。そう言われたのでその席を見ると、隣の席に朝の少女がいた。すごくにこにこしていた。私はどう反応したらいいのかわからず、俯くことしかできず、そのまま席へ着いた。こうして私の学校生活は幕を開けた。

午前の授業がおわり、昼の時間になったので購買へ向かう途中に後ろから声をかけられた。凄く聞き覚えのある声だったので振り返るとやはりあの少女だった「こんにちは、水白 遊季さん。喋るのは朝以来かな」
「こんにちは。えぇと…」
「潤畑(うるばた)碧里(みどり)よ」
「碧里さんね、よろしく あなたが同じクラスだったのは意外でした」朝とは違い、ちゃんと対応出来た。冷静はしているけど心の中では安堵していた。
「もしかして遊季さんも購買に？」と聞かれたのでえぇ、そうよと返した。「それなら一緒にご飯食べない？」そう言われた。初日からぐいぐい来れるのは少し驚いた。私はできなかった。こうして1人で購買に向かっていたのだから。
否定する理由もないので購買でそれぞれ昼食を買った。碧里と一緒に食べていると
「あなたはどうしてこの学校に入ったの？」
突然、聞かれた。私は少し沈黙してから
「家の事情、かな こっちに引っ越してきたから」家の事情、嘘である。家には誰もいないのだから。
「そうなんだ、私はここでデュエルが強くなりたいから来たんだ！」碧里は無邪気にそう言ってるけど、なんだから嘘ってことを見透かされている気がする。気のせいだろうか…
「今朝はありがとう」感謝された。今朝というのは助けたことだろう。
「人のデッキを奪う人は悪い、そう判断しただけ。でも無事でよかった」感謝されるのは慣れていない。でもなんだか嬉しかった。
2人とも昼食は食べ終わった。だけど会話は続いた。そうして昼休みが終わる頃
「友達になってよ」碧里のその一言が心に深刺さった。嬉しかった。
「うん。よろしく」今日初めて笑った気がした。
「あっ、今日初めて笑ったんじゃない？」本当だった。自覚はなかったけどそんなに笑っていなかったのか。
ともあれ1日目はいいスタートをきれたと思う。



次回予告
水白 遊季です。まさか今朝助けた子が一緒のクラスになるとは思ってもいなかった。でもよかったかも、喋りかけてくれたから。友達になって欲しいと言ってくれたから。嬉しいな 学校生活まだ慣れないけどがんばろう！

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