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第19話 輝きの十二神使 作:いちごT
19話
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前回のあらすじ
元ジュニアチャンピオンの遠丹愛華がアカデミアでのデュエルを拒否していることを知った遊飛たち。そこで遊飛は夜中に愛華の部屋を訪ね、デュエルを申し込む。覚悟を決めてそれを承諾した愛華は湖にて、そのデュエルに臨むのであった。
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真夜中の湖、そのほとりに二人は立っていた。逆立った短い黒髪の少年、伴遊飛。着物を着た長い黒髪の少女、遠丹愛華。腕にはデュエルディスクを装着して向かい合っている。この二人のデュエルが今まさに始まろうとしていた。
デュエル!!!
遊飛「俺の先行で行くぜ! 俺は『機動獣-ライガー』を攻撃表示で召喚!」
・機動獣-ライガー ☆4 地 1800/800
遊飛「カードを1枚伏せてターンエンドだ!」
愛華(ライガー……入学式の朝のデュエルを再現しているかのような出だしですね。)
愛華「私のターン、ドロー。お願いします。『十二神使-子尊(じゅうにしんし-ねのみこと)』守備表示。」
・十二神使-子尊 ☆1 光 0/0
フィールドに小さなネズミのモンスターが召喚される。その体は白いが所々に赤い隈取りが施されており、神々しさを感じさせる。
遊飛「なんか神社っぽいし可愛いな! まあ可愛さなら俺のジークも負けてないけどな!」
愛華「ふふ、ありがとうございます。伏せカードを1枚、場に出してエンドフェイズに入ります。」
遊飛「よし、俺のター」「お待ちください。」
遊飛「あり?」
愛華「暦が移り変わる時、次なる神使がやってきます。エンドフェイズに場の子尊の効果を発動。デッキより『十二神使-丑尊』を攻撃表示で特殊召喚します。」
・十二神使-丑尊 ☆5 光 2100/1600
子尊と同様に白い体に赤い隈取りを持つ雄牛のモンスターが出現する。
遊飛「おおっ! いきなり五つ星モンスター!!」
愛華「ふふ、神使カードの効果で特殊召喚された丑尊は元々の攻撃力が2800になります。」
・丑尊 攻2100→攻2800
愛華「これにてターン終了です。」
●伴 遊飛 LP4000 手札3
モンスター:『ライガー』
魔法、罠:『伏せカード』
●遠丹 愛華 LP4000 手札4
モンスター:『子尊』『丑尊』
魔法、罠:『伏せカード』×1
遊飛「俺のターン、ドロー! 攻撃力2800か、厄介だぜ。」
遊飛「まずはライガーで子尊を攻撃だ! ストライクレーザークロー!」
小さな白ねずみに鉄爪が振り下ろされ、その体は四散する。
愛華「よろしいのですか? 次のターン、丑尊の攻撃が通れば1000ものライフを失ってしまいますが。」
遊飛「心配無用! 俺はバトルフェイズを終了し、手札から『融合』を発動!」
愛華「このタイミングで融合…ですか。」
遊飛「フィールドのライガーと手札の『機動獣-ヘビーホーン』を融合! 爆進しろ!『機動獣-デストロイ・バイソン!!』」
・機動獣-デストロイ・バイソン ☆6 地 2200/2600
黒い巨体に湾曲した二振りの角をかざし、頭部に8連装ミサイルポッド、背中には驚異の17門突撃砲を有する鋼の野牛が現れる。
遊飛「デストロイ・バイソンの効果発動、相手モンスター1体を破壊する。そしてこの効果は無効にできない。」
愛華「なるほど…やはり丑尊を倒す効果をお持ちだったのですね。故にあのタイミングでの融合召喚。」
遊飛「そういうことさ。行け! メガロマックスゥ……」
鋼の野牛は目の前にいる聖なる雄牛に狙いを定め、突撃砲とミサイルポッドを稼働させる。
遊飛「ファイヤーッ!!!」
叫んだ瞬間、前面を向いた全ての装備から砲弾、ミサイルが一斉に発射される。それは次々と撃ち出され、まるで濁流のように跡形もなく丑尊を飲み込んでいった。
遊飛「目には目を、牛には牛を…こっちの牛の方が強かったみたいだぜ。」
愛華「凄い迫力ですね…驚きました。」
遊飛「だろー? 」
愛華「では伏せカードを発動いたします。罠カード『差し伸べる手』」
遊飛「え?」
素直な感想を述べられた遊飛は自慢げに鼻の下を擦るが、愛華は淡々と伏せカードの発動ボタンを押す。
愛華「このターン、戦闘または相手のカードの効果で墓地へ送られたモンスターを全て特殊召喚いたします。」
このターンに葬った子尊、丑尊が再び愛華の場に出現する。
遊飛「げ…せっかく倒したのに。」
愛華「ふふ、ですがこのカードで特殊召喚されたモンスターの星一つにつき300…計六つなので1800のライフを失ってしまいます。」
・愛華 LP4000→LP2200
遊飛「これでまたエンドフェイズに次のモンスターが特殊召喚されるのか。どんな奴がでてくるんだ?」
愛華「いえ、残念ながら特殊召喚されたターンは次なる神使を呼ぶことが出来ないのですよ。」
遊飛「何だそうなのか…」
愛華「ご安心ください。またお見せできますよ。」
遊飛「よっしゃ来い!ターンエンドだぜ。」
愛華「私のターン、ドロー。」
愛華「魔法カード『神使の導き』を発動いたします。通常召喚を放棄する代わり、デッキより四つ星以下の神使モンスターを特殊召喚。お願いします。『十二神使-亥尊(じゅうにしんし-いのみこと)』攻撃表示。」
・十二神使-亥尊 ☆4 光 1700/1000
やはり白い体と赤い隈取りを持つ、猪のモンスター。
遊飛「今度はイノシシか。」
愛華「ええ、亥尊の効果を発動いたします。神使カードの効果で特殊召喚された時、モンスター1体を破壊させていただきます。」
遊飛「なに!?」
愛華「対象はもちろんデストロイ・バイソンです。」
遊飛「バイソンがやられちまった!? やべえ!!」
遊飛「……なんてな! リバースカードオープン!『復活のzi-コア』」
遊飛「相手の場にモンスターが存在する時、墓地の機動獣を特殊召喚する! 来い!デストロイ・バイソン守備表示!!」
黒い野牛は悲鳴をあげて消滅するが、即座に蘇り一鳴きする。
愛華「なるほど…これでは攻撃は通りませんね。」
遊飛「そう簡単にやられはしないぜ!」
愛華「ではこうしましょう。レベル4、亥尊とレベル5、丑尊にチューナーモンスター、レベル1の子尊をチューニング!」
遊飛「チューニング!?」
神の遣わし大いなる砦よ! 北方にて君臨し、全ての災厄を退けん!
シンクロ召喚!!
現れよ!『四聖神使-玄武之命(しせいしんし-げんぶのみこと)!!!』
・四聖神使-玄武之命 ☆10 光 2000/3600
出現した光輪を3体のモンスターがくぐり抜ける。モンスターはそのレベル分の星と姿を変え列をなす。その星の数は合計10、並んだ10の星を一筋の光が貫いて共鳴し、1体のモンスターが場に現れる。
それは亀であった。長い首、丸太のような脚、背中の甲羅は背中から首の上を通り顔にかけて覆われており顎には髭のようなものも見受けられる。二本の尾は蛇であり、それぞれ意思を持って体に巻きついていている。その見上げるほどの巨体はまるで要塞の様だ。
遊飛「でっ……でっけえ……」
愛華「ふふ、でしょう?」
ありのままの感想を漏らす遊飛ににっこりと笑顔を向ける。
遊飛「でも守備力がいくら高くても攻撃力は2000。バイソンは倒せねーし、次のターンでバイソンの効果で破壊してやるぜ。」
愛華「ふふ、玄武之命の効果を発動。シンクロ召喚に成功した時、墓地から素材となったモンスター1体を特殊召喚いたします。お願いします、丑尊。」
愛華「神使カードの効果で特殊召喚されたことにより、丑尊の攻撃力は2800となります。」
・十二神使-丑尊 攻2100→攻2800
遊飛「またか!」
愛華「ではバトル。丑尊でデストロイ・バイソンを攻撃いたします。」
丑尊が角を振りかざし突進、迎え撃とうとするデストロイバイソンを吹っ飛ばす。
遊飛「ぐ…バイソン!?」
愛華「ふふ、こちらの牛の方が強かったみたいですよ?」
遊飛「へへ、言ってくれるじゃねーか。」
愛華「私はこれでターンを終了いたします。」
●伴 遊飛 LP4000 手札2
モンスター:
魔法、罠:
●遠丹 愛華 LP2800 手札4
モンスター:『四聖神使-玄武之命』『十二神使-丑尊』
魔法、罠:
遊飛「ドロー! 今は耐えるしかねえ! 頼むぜ『機動獣-バグキャリー』を守備表示で召喚。」
・機動獣-バグキャリー ☆4 地 0/2000
遊飛「ターンエンドだ。」
愛華「ではエンドフェイズに丑尊の効果を発動いたします。デッキより次の神使を特殊召喚。お願いします『十二神使-寅尊(じゅうにしんし-とらのみこと)』」
・十二神使-寅尊 ☆4 光 1600/700
愛華「寅尊は神使カードの効果で特殊召喚した時、相手の魔法、罠カードを1枚破壊出来るのですけれど…残念ながら不発ですね。」
愛華「では私のターン、ドロー。そのモンスターは1ターンに1度、戦闘で破壊されない…でしたね。」
遊飛「そうだ!簡単には突破できねーぜ!」
愛華「………このターンの突破は難しそうですね。カードを2枚伏せてエンドフェイズとさせていただき、寅尊の効果を発動いたします。『十二神使-卯尊(じゅうにしんし-うのみこと)』守備表示で特殊召喚。」
愛華「卯尊が神使カードによって特殊召喚された時、デッキから1枚ドローさせていただきます。」
愛華「これにてターン終了です。」
●伴 遊飛 LP4000 手札2
モンスター:『機動獣-バグキャリー』
魔法、罠:
●遠丹 愛華 LP2800 手札4
モンスター:『四聖神使-玄武之命』『十二神使-丑尊』『十二神使-寅尊』『十二神使-卯尊』
魔法、罠:『伏せカード』×2
遊飛「ドロー! このモンスターは機動獣1体の生贄で召喚ができる! 俺は場のバグキャリーを生贄に『機動獣-レックス』を攻撃表示で召喚するぜ!」
・機動獣-レックス ☆8 地 2600/2200
遊飛「へへ、コイツのことも知ってるだろ?」
愛華「ええ、入学式の朝、船内で活躍された子ですね。確か…戦闘で破壊したモンスターのレベル1つにつき200のダメージを与える…でしたね。」
遊飛「その通り! そして魔法カード『覚醒のzi-コア』発動! 機動獣1体の攻撃力を元々の攻撃力の半分、アップする。」
・レックス 攻2600→攻3900
遊飛「決めさせてもらうぜ! 行け!レックスで寅尊を攻撃!! ハイパーキラーバイト!!!」
愛華「……見事です。」
巨大な口を開け、白い体に赤い模様を持つ虎に襲いかかる。そして愛華は静かに目を閉じる。
愛華(……いいの?)
愛華(これでいいの? ここで終わらせて…)
鋼の暴君が迫りくる中、愛華の心は渦巻いていた。ここで負けを受け入れること、それは今までデュエルから逃げてきたことと何も違わないのではないか。そう思わずにはいられなかった。
愛華(いけない!この方とのデュエルでさえ逃げていては……何も変われない! )
遊飛「なにっ!?」
その凶悪な牙が虎の体に食い込もうとする寸前、その動きが止まる。レックスの体に玄武の尾である二匹の蛇が絡みつき、完全に行動を封じていた。
愛華「………四聖神使-玄武之命の効果を発動させていただきました。」
愛華「バトルフェイズ中、手札を1枚捨てる事で相手モンスター1体の表示形式をこちらの意のままにいたします。なので、その子は守備表示となり、攻撃は通りません。」
遊飛「…カードを1枚伏せてターンエンド。」
愛華「エンドフェイズ時、卯尊の効果により、デッキから『十二神使-辰尊(じゅうにしんし-たつのみこと)』を特殊召喚。」
・十二神使-辰尊 ☆5 光 2000/1800
愛華「辰尊は神使カードによって特殊召喚した時、墓地の十二神使を1体、よみがえらせる事ができますが…私の場は埋まっていますので、効果は不発となります。」
愛華「私のターン…」「ちょっと待ってくれよ。」
デッキにその細い指がかかった瞬間、遊飛が唐突にストップをかける。
遊飛「確認したいことがある…玄武之命の効果は遠丹のバトルフェイズにも発動出来るのか?」
愛華「え…?」
遊飛「どうなんだ?」
愛華「それは……」
遊飛「遠丹。」
愛華「……はい。」
珍しく真剣な眼差しを向ける遊飛に対して、愛華は力無い返答をする。
遊飛「つーことはさ、さっきのターン…俺のバグキャリーを攻撃表示にして総攻撃したら勝てたはずだろ? なんでそうしなかったんだ?」
愛華「……なるほど。それは…」「気づかなかったとは言わせないぜ。」
遊飛「遠丹とは初めてデュエルするし、まだ数ターンしか経ってねえ…」
遊飛「でも数ターンでも分かる! お前ほどのデュエリストがそれを見逃すはずがない!!」
愛華「………」
遊飛「……理由を聞くつもりはねえ。だけど…」
遊飛「勝つ気のないデュエルって楽しいか?」
その発言に、愛華の体はビクッと震える。しかしゆっくりと深呼吸をして落ち着きを取り戻す。
愛華「…楽しく……ありませんよね。」
愛華「伴さん、大変失礼なことをしてしまい、申し訳ありません。」
愛華「……きっと貴方はこうお考えでしょう。私が今までこの学園でデュエルを避けてきた事と、こんなことをする事と、関係があるのでは?と。」
遊飛「…まあな。」
愛華「ふふ、その通りです。」
愛華「先程も玄武之命の効果を使わず、攻撃をそのまま受けて負けようかとさえ思いました。覚悟は決めたつもりでしたのに…本当にお恥ずかしい。」
遊飛「でもそうはしなかった。だろ?」
愛華「ええ、相手が貴方だから…なんとか踏みとどまる事が出来ました。」
愛華「……正直に告白しますと、私は勝つことを恐れているのです。……いえ。」
少しの間を取り、愛華は弱々しくつぶやく。
愛華「勝った…その先を。」
続く。
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次回予告
ちよ「次々とモンスターを繰り出して、伴くんを追い詰める遠丹さん。でも勝つのが怖いって一体どういうことなの? え?これが遠丹さんのチャンピオン時代…そこに理由があるのかな…」
ちよ「次回『幼き日の痛み』デュ、デュエルスタンバイ!!」
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実はこの作品を書くにあたって最初に考えたのがこの二人のデュエル。なので個人的には割と早めに書けました。
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前回のあらすじ
元ジュニアチャンピオンの遠丹愛華がアカデミアでのデュエルを拒否していることを知った遊飛たち。そこで遊飛は夜中に愛華の部屋を訪ね、デュエルを申し込む。覚悟を決めてそれを承諾した愛華は湖にて、そのデュエルに臨むのであった。
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真夜中の湖、そのほとりに二人は立っていた。逆立った短い黒髪の少年、伴遊飛。着物を着た長い黒髪の少女、遠丹愛華。腕にはデュエルディスクを装着して向かい合っている。この二人のデュエルが今まさに始まろうとしていた。
デュエル!!!
遊飛「俺の先行で行くぜ! 俺は『機動獣-ライガー』を攻撃表示で召喚!」
・機動獣-ライガー ☆4 地 1800/800
遊飛「カードを1枚伏せてターンエンドだ!」
愛華(ライガー……入学式の朝のデュエルを再現しているかのような出だしですね。)
愛華「私のターン、ドロー。お願いします。『十二神使-子尊(じゅうにしんし-ねのみこと)』守備表示。」
・十二神使-子尊 ☆1 光 0/0
フィールドに小さなネズミのモンスターが召喚される。その体は白いが所々に赤い隈取りが施されており、神々しさを感じさせる。
遊飛「なんか神社っぽいし可愛いな! まあ可愛さなら俺のジークも負けてないけどな!」
愛華「ふふ、ありがとうございます。伏せカードを1枚、場に出してエンドフェイズに入ります。」
遊飛「よし、俺のター」「お待ちください。」
遊飛「あり?」
愛華「暦が移り変わる時、次なる神使がやってきます。エンドフェイズに場の子尊の効果を発動。デッキより『十二神使-丑尊』を攻撃表示で特殊召喚します。」
・十二神使-丑尊 ☆5 光 2100/1600
子尊と同様に白い体に赤い隈取りを持つ雄牛のモンスターが出現する。
遊飛「おおっ! いきなり五つ星モンスター!!」
愛華「ふふ、神使カードの効果で特殊召喚された丑尊は元々の攻撃力が2800になります。」
・丑尊 攻2100→攻2800
愛華「これにてターン終了です。」
●伴 遊飛 LP4000 手札3
モンスター:『ライガー』
魔法、罠:『伏せカード』
●遠丹 愛華 LP4000 手札4
モンスター:『子尊』『丑尊』
魔法、罠:『伏せカード』×1
遊飛「俺のターン、ドロー! 攻撃力2800か、厄介だぜ。」
遊飛「まずはライガーで子尊を攻撃だ! ストライクレーザークロー!」
小さな白ねずみに鉄爪が振り下ろされ、その体は四散する。
愛華「よろしいのですか? 次のターン、丑尊の攻撃が通れば1000ものライフを失ってしまいますが。」
遊飛「心配無用! 俺はバトルフェイズを終了し、手札から『融合』を発動!」
愛華「このタイミングで融合…ですか。」
遊飛「フィールドのライガーと手札の『機動獣-ヘビーホーン』を融合! 爆進しろ!『機動獣-デストロイ・バイソン!!』」
・機動獣-デストロイ・バイソン ☆6 地 2200/2600
黒い巨体に湾曲した二振りの角をかざし、頭部に8連装ミサイルポッド、背中には驚異の17門突撃砲を有する鋼の野牛が現れる。
遊飛「デストロイ・バイソンの効果発動、相手モンスター1体を破壊する。そしてこの効果は無効にできない。」
愛華「なるほど…やはり丑尊を倒す効果をお持ちだったのですね。故にあのタイミングでの融合召喚。」
遊飛「そういうことさ。行け! メガロマックスゥ……」
鋼の野牛は目の前にいる聖なる雄牛に狙いを定め、突撃砲とミサイルポッドを稼働させる。
遊飛「ファイヤーッ!!!」
叫んだ瞬間、前面を向いた全ての装備から砲弾、ミサイルが一斉に発射される。それは次々と撃ち出され、まるで濁流のように跡形もなく丑尊を飲み込んでいった。
遊飛「目には目を、牛には牛を…こっちの牛の方が強かったみたいだぜ。」
愛華「凄い迫力ですね…驚きました。」
遊飛「だろー? 」
愛華「では伏せカードを発動いたします。罠カード『差し伸べる手』」
遊飛「え?」
素直な感想を述べられた遊飛は自慢げに鼻の下を擦るが、愛華は淡々と伏せカードの発動ボタンを押す。
愛華「このターン、戦闘または相手のカードの効果で墓地へ送られたモンスターを全て特殊召喚いたします。」
このターンに葬った子尊、丑尊が再び愛華の場に出現する。
遊飛「げ…せっかく倒したのに。」
愛華「ふふ、ですがこのカードで特殊召喚されたモンスターの星一つにつき300…計六つなので1800のライフを失ってしまいます。」
・愛華 LP4000→LP2200
遊飛「これでまたエンドフェイズに次のモンスターが特殊召喚されるのか。どんな奴がでてくるんだ?」
愛華「いえ、残念ながら特殊召喚されたターンは次なる神使を呼ぶことが出来ないのですよ。」
遊飛「何だそうなのか…」
愛華「ご安心ください。またお見せできますよ。」
遊飛「よっしゃ来い!ターンエンドだぜ。」
愛華「私のターン、ドロー。」
愛華「魔法カード『神使の導き』を発動いたします。通常召喚を放棄する代わり、デッキより四つ星以下の神使モンスターを特殊召喚。お願いします。『十二神使-亥尊(じゅうにしんし-いのみこと)』攻撃表示。」
・十二神使-亥尊 ☆4 光 1700/1000
やはり白い体と赤い隈取りを持つ、猪のモンスター。
遊飛「今度はイノシシか。」
愛華「ええ、亥尊の効果を発動いたします。神使カードの効果で特殊召喚された時、モンスター1体を破壊させていただきます。」
遊飛「なに!?」
愛華「対象はもちろんデストロイ・バイソンです。」
遊飛「バイソンがやられちまった!? やべえ!!」
遊飛「……なんてな! リバースカードオープン!『復活のzi-コア』」
遊飛「相手の場にモンスターが存在する時、墓地の機動獣を特殊召喚する! 来い!デストロイ・バイソン守備表示!!」
黒い野牛は悲鳴をあげて消滅するが、即座に蘇り一鳴きする。
愛華「なるほど…これでは攻撃は通りませんね。」
遊飛「そう簡単にやられはしないぜ!」
愛華「ではこうしましょう。レベル4、亥尊とレベル5、丑尊にチューナーモンスター、レベル1の子尊をチューニング!」
遊飛「チューニング!?」
神の遣わし大いなる砦よ! 北方にて君臨し、全ての災厄を退けん!
シンクロ召喚!!
現れよ!『四聖神使-玄武之命(しせいしんし-げんぶのみこと)!!!』
・四聖神使-玄武之命 ☆10 光 2000/3600
出現した光輪を3体のモンスターがくぐり抜ける。モンスターはそのレベル分の星と姿を変え列をなす。その星の数は合計10、並んだ10の星を一筋の光が貫いて共鳴し、1体のモンスターが場に現れる。
それは亀であった。長い首、丸太のような脚、背中の甲羅は背中から首の上を通り顔にかけて覆われており顎には髭のようなものも見受けられる。二本の尾は蛇であり、それぞれ意思を持って体に巻きついていている。その見上げるほどの巨体はまるで要塞の様だ。
遊飛「でっ……でっけえ……」
愛華「ふふ、でしょう?」
ありのままの感想を漏らす遊飛ににっこりと笑顔を向ける。
遊飛「でも守備力がいくら高くても攻撃力は2000。バイソンは倒せねーし、次のターンでバイソンの効果で破壊してやるぜ。」
愛華「ふふ、玄武之命の効果を発動。シンクロ召喚に成功した時、墓地から素材となったモンスター1体を特殊召喚いたします。お願いします、丑尊。」
愛華「神使カードの効果で特殊召喚されたことにより、丑尊の攻撃力は2800となります。」
・十二神使-丑尊 攻2100→攻2800
遊飛「またか!」
愛華「ではバトル。丑尊でデストロイ・バイソンを攻撃いたします。」
丑尊が角を振りかざし突進、迎え撃とうとするデストロイバイソンを吹っ飛ばす。
遊飛「ぐ…バイソン!?」
愛華「ふふ、こちらの牛の方が強かったみたいですよ?」
遊飛「へへ、言ってくれるじゃねーか。」
愛華「私はこれでターンを終了いたします。」
●伴 遊飛 LP4000 手札2
モンスター:
魔法、罠:
●遠丹 愛華 LP2800 手札4
モンスター:『四聖神使-玄武之命』『十二神使-丑尊』
魔法、罠:
遊飛「ドロー! 今は耐えるしかねえ! 頼むぜ『機動獣-バグキャリー』を守備表示で召喚。」
・機動獣-バグキャリー ☆4 地 0/2000
遊飛「ターンエンドだ。」
愛華「ではエンドフェイズに丑尊の効果を発動いたします。デッキより次の神使を特殊召喚。お願いします『十二神使-寅尊(じゅうにしんし-とらのみこと)』」
・十二神使-寅尊 ☆4 光 1600/700
愛華「寅尊は神使カードの効果で特殊召喚した時、相手の魔法、罠カードを1枚破壊出来るのですけれど…残念ながら不発ですね。」
愛華「では私のターン、ドロー。そのモンスターは1ターンに1度、戦闘で破壊されない…でしたね。」
遊飛「そうだ!簡単には突破できねーぜ!」
愛華「………このターンの突破は難しそうですね。カードを2枚伏せてエンドフェイズとさせていただき、寅尊の効果を発動いたします。『十二神使-卯尊(じゅうにしんし-うのみこと)』守備表示で特殊召喚。」
愛華「卯尊が神使カードによって特殊召喚された時、デッキから1枚ドローさせていただきます。」
愛華「これにてターン終了です。」
●伴 遊飛 LP4000 手札2
モンスター:『機動獣-バグキャリー』
魔法、罠:
●遠丹 愛華 LP2800 手札4
モンスター:『四聖神使-玄武之命』『十二神使-丑尊』『十二神使-寅尊』『十二神使-卯尊』
魔法、罠:『伏せカード』×2
遊飛「ドロー! このモンスターは機動獣1体の生贄で召喚ができる! 俺は場のバグキャリーを生贄に『機動獣-レックス』を攻撃表示で召喚するぜ!」
・機動獣-レックス ☆8 地 2600/2200
遊飛「へへ、コイツのことも知ってるだろ?」
愛華「ええ、入学式の朝、船内で活躍された子ですね。確か…戦闘で破壊したモンスターのレベル1つにつき200のダメージを与える…でしたね。」
遊飛「その通り! そして魔法カード『覚醒のzi-コア』発動! 機動獣1体の攻撃力を元々の攻撃力の半分、アップする。」
・レックス 攻2600→攻3900
遊飛「決めさせてもらうぜ! 行け!レックスで寅尊を攻撃!! ハイパーキラーバイト!!!」
愛華「……見事です。」
巨大な口を開け、白い体に赤い模様を持つ虎に襲いかかる。そして愛華は静かに目を閉じる。
愛華(……いいの?)
愛華(これでいいの? ここで終わらせて…)
鋼の暴君が迫りくる中、愛華の心は渦巻いていた。ここで負けを受け入れること、それは今までデュエルから逃げてきたことと何も違わないのではないか。そう思わずにはいられなかった。
愛華(いけない!この方とのデュエルでさえ逃げていては……何も変われない! )
遊飛「なにっ!?」
その凶悪な牙が虎の体に食い込もうとする寸前、その動きが止まる。レックスの体に玄武の尾である二匹の蛇が絡みつき、完全に行動を封じていた。
愛華「………四聖神使-玄武之命の効果を発動させていただきました。」
愛華「バトルフェイズ中、手札を1枚捨てる事で相手モンスター1体の表示形式をこちらの意のままにいたします。なので、その子は守備表示となり、攻撃は通りません。」
遊飛「…カードを1枚伏せてターンエンド。」
愛華「エンドフェイズ時、卯尊の効果により、デッキから『十二神使-辰尊(じゅうにしんし-たつのみこと)』を特殊召喚。」
・十二神使-辰尊 ☆5 光 2000/1800
愛華「辰尊は神使カードによって特殊召喚した時、墓地の十二神使を1体、よみがえらせる事ができますが…私の場は埋まっていますので、効果は不発となります。」
愛華「私のターン…」「ちょっと待ってくれよ。」
デッキにその細い指がかかった瞬間、遊飛が唐突にストップをかける。
遊飛「確認したいことがある…玄武之命の効果は遠丹のバトルフェイズにも発動出来るのか?」
愛華「え…?」
遊飛「どうなんだ?」
愛華「それは……」
遊飛「遠丹。」
愛華「……はい。」
珍しく真剣な眼差しを向ける遊飛に対して、愛華は力無い返答をする。
遊飛「つーことはさ、さっきのターン…俺のバグキャリーを攻撃表示にして総攻撃したら勝てたはずだろ? なんでそうしなかったんだ?」
愛華「……なるほど。それは…」「気づかなかったとは言わせないぜ。」
遊飛「遠丹とは初めてデュエルするし、まだ数ターンしか経ってねえ…」
遊飛「でも数ターンでも分かる! お前ほどのデュエリストがそれを見逃すはずがない!!」
愛華「………」
遊飛「……理由を聞くつもりはねえ。だけど…」
遊飛「勝つ気のないデュエルって楽しいか?」
その発言に、愛華の体はビクッと震える。しかしゆっくりと深呼吸をして落ち着きを取り戻す。
愛華「…楽しく……ありませんよね。」
愛華「伴さん、大変失礼なことをしてしまい、申し訳ありません。」
愛華「……きっと貴方はこうお考えでしょう。私が今までこの学園でデュエルを避けてきた事と、こんなことをする事と、関係があるのでは?と。」
遊飛「…まあな。」
愛華「ふふ、その通りです。」
愛華「先程も玄武之命の効果を使わず、攻撃をそのまま受けて負けようかとさえ思いました。覚悟は決めたつもりでしたのに…本当にお恥ずかしい。」
遊飛「でもそうはしなかった。だろ?」
愛華「ええ、相手が貴方だから…なんとか踏みとどまる事が出来ました。」
愛華「……正直に告白しますと、私は勝つことを恐れているのです。……いえ。」
少しの間を取り、愛華は弱々しくつぶやく。
愛華「勝った…その先を。」
続く。
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次回予告
ちよ「次々とモンスターを繰り出して、伴くんを追い詰める遠丹さん。でも勝つのが怖いって一体どういうことなの? え?これが遠丹さんのチャンピオン時代…そこに理由があるのかな…」
ちよ「次回『幼き日の痛み』デュ、デュエルスタンバイ!!」
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実はこの作品を書くにあたって最初に考えたのがこの二人のデュエル。なので個人的には割と早めに書けました。
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142 | 第13話 愛ゆえの奮闘 | 1143 | 8 | 2017-06-19 | - | |
140 | 第14話 資格への狭き門 | 1056 | 8 | 2017-07-02 | - | |
101 | 第15話 希望の魔法少女 | 1256 | 6 | 2017-11-16 | - | |
69 | 16話 遭遇の犬猿 | 882 | 4 | 2018-03-03 | - | |
82 | 17話 強さの証明 | 851 | 6 | 2018-09-06 | - | |
57 | 第18話 遠丹愛華の憂鬱 | 711 | 4 | 2018-10-14 | - | |
93 | 第19話 輝きの十二神使 | 1028 | 4 | 2018-10-26 | - |
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果たして幼き日の痛みとは、重めな回想回になりそうです。 (2018-10-27 07:18)
スピードは遅いですが毎ターンモンスターを増やしていくのは強いです。初シンクロ召喚は実は6話だったり(震え声)
回想回は初めてなので頑張ります。 (2018-10-27 14:38)
おちゃらけているようでデュエルに関しては鋭い…流石主人公。
次回は回想回ですか。(ここ最近回想ばっかり書いてた)チャンピオンの過去に一体何が…。実技すら休んでるあたり相当な理由がありそう。 (2018-10-28 00:19)
我ながら十二神使のバランスは良くできたと思っていたので、褒めていただいてとても嬉しいです!
遊飛くん、デュエルに関しては真摯ですからね。十代とキャラ被ってるんで。
確かにAURAはここ最近回想回でしたね。自分が主に参考にしてるSSなのであのクオリティに近づけるよう頑張ります。 (2018-10-28 07:09)