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第3話 そして非日常は起こる 作:ヒラーズ
しばらくして放課後、遊我は生命の樹があったとされるフラワーショップに向かい、店内の奥を調べる。
「そういえば勝手に持ってったな、返しておくか」
遊我はセフィロトの樹を見つけ、木の根の近くに果実を置く。
「勝手に持っていって悪かった、食べてないからな」
遊我は店を出て、家に向かう。
そんな中、遊我が店を出た数分後、店内に謎の会話が響く。
【ふむ、知恵の果実をわざと落としてみたが、どうやら奴だけは違うようだな】
【少し動揺したが、果実を食わずにむしろ成分とやらを調べようとするとは変わった奴だ】
【おまけに返してくるという始末だ、だいぶ無欲に見えるが…?】
【確かに、並大抵の人間は果実を食べてしまう。だが奴は…】
【ほう、珍しくザフキエルが考え事とはな、世も末だ】
【…この世界では私の名はザフィオンだ】
【どうする?もう猶予はないぞ】
【だが…あの少年は無実ですぞ?先に仕掛けたのは我々です】
【仮にあの少年がこの店に来なかった場合も兼ねて考えたのではないのか?ラツィオン?】
【残された手段はこれしかございません、後の判断はセフィロンにかかっています】
【では、異論はないな?】
そして破界家へ…
遊我は一人寂しく、学校から出された宿題を黙々とやっていた。
散らばる消しゴムのカス、時折黒くなる手、夜になっても勉学に励んでいた。
「…3を入れて、4で割って、この計算式をグラフで求めよ…って簡単すぎじゃないか、答えは√3だな」
遊我はさらりと書き足し、宿題を終える。机から離れ、ベッドへ飛び込み、横になる。
「…美少女に話しかけられたのは良いけど、出会いという感じがしないなぁ、青春はいいとか聞いたけど、正直どうでも良くなってくる」
遊我は退屈そうにルービックキューブをいじり始める。
「今度は難関の知恵の輪でも買ってみようかな…っと全面揃った、タイムは1分40秒、変わらない」
遊我は机にルービックキューブを置き、再びベッドに潜る。
「…平和すぎるなぁ…まぁ、明日は部活選びとか、面倒くさいなぁ」
そう言って遊我は眠りに落ちる。
翌日、遊我は朝食を済ませ、登校の準備をしていた。
「えーと、今日は物理学と生物学があるんだっけ?さっさと準備して行くか」
遊我はせっせと準備を済ませ、まっすぐ登校した。
そして学校内、相も変わらず女子が多い学校ではガールズトークは絶えない。
そんな中、また黄美が話しかけてくる。
「またナコト写本?」
「いや…今日は黄衣の王だ」
「ふーん…」
黄美は興味深そうに遊我の本を見つめ、しまいには取り上げ、謎の質問攻めを仕掛ける。
「…」
「そういえば遊我、入る部活は決まっているの?」
「入るわけないだろ、それに返してくれ、高かったんだからなその本」
「どれくらい?」
「…9800円だ」
その値段を聞いた黄美は「高っ!」っと声を上げる。
「そんなにするのこの本?」
「なんせフランス語で書かれていたのを日本語に訳したことで誰でも読みやすくしたんだ。返せ」
遊我は本を取り返そうとするが黄美が自分の鞄に入れ、逃げ出す。
「あ!待て泥棒!!」
遊我は慌てて黄美を追いかけるが途中で教師に止められ、教室に戻されたのだった。
「あーあ、本が盗まれるとは自分自身が情けないよ。やはり油断してはいけないな」
遊我は溜息を吐き、一人寂しく外で昼食を取っていた。
「…今日の購買は牛乳と焼きそばパンにあんパンか」
もぐもぐとパンを食べ、牛乳を飲み始める。
その時だった。
ドガッシャーン!!
校舎の窓が割れる音が聞こえた。
しかし遊我は気にせずに昼食をとる。
「(どうせ不良生徒と教師が喧嘩しているんだろう、関係ない。そっとしておこう)」
しばらくして昼食を終えた遊我は一足先に教室へ戻る。
だが、その教室は変わり果てていた。
中に入ると教師を除く女子生徒全員が発狂していたのである。
あるものは幻覚を見ているのか虚無に対して笑っていたり。
あるものは気絶していたり。あるものは破壊衝動に見舞われたりしていた。
ある意味で平和ではない出来事、無論遊我はその原因は知っていた。
「まったく…人の本を盗んだからだ」
遊我は発狂者をすり抜け、机に置いてあった本を取る。
「やはり泥棒はいけないな」
本を持ち、教室を去ろうと扉を開けようとした時、背後からの殺意を感じたのか遊我は後ろを向く。
「ん?」
「ゆっ、遊我!!アンタ、なんてものを持って来てるの!!」
遊我の視界に写ったのは目つきが変わった黄美の姿だった。
目は釣り合っており、怒っているように見えた。
「勝手に盗んだ奴が悪いんだ、自業自得だよ」
「それは謝るけど、どうやったら皆を戻せるの?」
「簡単だ、恐怖を紛らわせばいい、駄目なら気絶させればいい。むしろ聞くがなんで盗んだ?」
一瞬、黄美は黙り、気が進まなそうな顔をする。
「…遊我の本に興味が湧いたから」
「はぁ?それなら買いに行けよ。こうなってしまった以上、今日の授業はここまでのようだし、帰る」
遊我は本を鞄に入れ、早めの下校をしようとした時だった。
「え…?止めないの?」
「君と教師以外、ああなったんだ。全員を落ち着かせるは時間の無駄だ。精々頑張れ」
「はぁ!?無責任にもほどあるでしょ!!」
「あのなぁ!あの本はメンタルが強くないと即発狂する趣味の本だ!確かにアレは自分の本だけど、盗んだのは君じゃないか。責任は君が取るべきじゃないの?」
「そ…それは」
遊我は再び溜息をつき、「しょうがない」っと言って、鞄から黄衣の王を取り出し、机に叩きつける。
バシンッ!
その音と同時に遊我と黄美以外の女子生徒は全員ドサリと倒れ込む。
「はい終わり、帰る」
「ええ?何?何?」
黄美は遊我が魔法でも使ったかのように見えたのか。
遊我に問いかける。
「何やったの?」
「何って、発狂から覚まさせただけだ。もういいだろ」
それからして突然の学級閉鎖となりこの日の授業は中止となった。
「全く、今日は散々な目に遭ったな、この本を持ってくるのはやめよう」
何事もなく帰宅した遊我は鞄から黄衣の王を取り出し、本棚にしまう。
「しかし、窃盗か。これじゃあ楽しみが減るなぁ」
次回に続く
「そういえば勝手に持ってったな、返しておくか」
遊我はセフィロトの樹を見つけ、木の根の近くに果実を置く。
「勝手に持っていって悪かった、食べてないからな」
遊我は店を出て、家に向かう。
そんな中、遊我が店を出た数分後、店内に謎の会話が響く。
【ふむ、知恵の果実をわざと落としてみたが、どうやら奴だけは違うようだな】
【少し動揺したが、果実を食わずにむしろ成分とやらを調べようとするとは変わった奴だ】
【おまけに返してくるという始末だ、だいぶ無欲に見えるが…?】
【確かに、並大抵の人間は果実を食べてしまう。だが奴は…】
【ほう、珍しくザフキエルが考え事とはな、世も末だ】
【…この世界では私の名はザフィオンだ】
【どうする?もう猶予はないぞ】
【だが…あの少年は無実ですぞ?先に仕掛けたのは我々です】
【仮にあの少年がこの店に来なかった場合も兼ねて考えたのではないのか?ラツィオン?】
【残された手段はこれしかございません、後の判断はセフィロンにかかっています】
【では、異論はないな?】
そして破界家へ…
遊我は一人寂しく、学校から出された宿題を黙々とやっていた。
散らばる消しゴムのカス、時折黒くなる手、夜になっても勉学に励んでいた。
「…3を入れて、4で割って、この計算式をグラフで求めよ…って簡単すぎじゃないか、答えは√3だな」
遊我はさらりと書き足し、宿題を終える。机から離れ、ベッドへ飛び込み、横になる。
「…美少女に話しかけられたのは良いけど、出会いという感じがしないなぁ、青春はいいとか聞いたけど、正直どうでも良くなってくる」
遊我は退屈そうにルービックキューブをいじり始める。
「今度は難関の知恵の輪でも買ってみようかな…っと全面揃った、タイムは1分40秒、変わらない」
遊我は机にルービックキューブを置き、再びベッドに潜る。
「…平和すぎるなぁ…まぁ、明日は部活選びとか、面倒くさいなぁ」
そう言って遊我は眠りに落ちる。
翌日、遊我は朝食を済ませ、登校の準備をしていた。
「えーと、今日は物理学と生物学があるんだっけ?さっさと準備して行くか」
遊我はせっせと準備を済ませ、まっすぐ登校した。
そして学校内、相も変わらず女子が多い学校ではガールズトークは絶えない。
そんな中、また黄美が話しかけてくる。
「またナコト写本?」
「いや…今日は黄衣の王だ」
「ふーん…」
黄美は興味深そうに遊我の本を見つめ、しまいには取り上げ、謎の質問攻めを仕掛ける。
「…」
「そういえば遊我、入る部活は決まっているの?」
「入るわけないだろ、それに返してくれ、高かったんだからなその本」
「どれくらい?」
「…9800円だ」
その値段を聞いた黄美は「高っ!」っと声を上げる。
「そんなにするのこの本?」
「なんせフランス語で書かれていたのを日本語に訳したことで誰でも読みやすくしたんだ。返せ」
遊我は本を取り返そうとするが黄美が自分の鞄に入れ、逃げ出す。
「あ!待て泥棒!!」
遊我は慌てて黄美を追いかけるが途中で教師に止められ、教室に戻されたのだった。
「あーあ、本が盗まれるとは自分自身が情けないよ。やはり油断してはいけないな」
遊我は溜息を吐き、一人寂しく外で昼食を取っていた。
「…今日の購買は牛乳と焼きそばパンにあんパンか」
もぐもぐとパンを食べ、牛乳を飲み始める。
その時だった。
ドガッシャーン!!
校舎の窓が割れる音が聞こえた。
しかし遊我は気にせずに昼食をとる。
「(どうせ不良生徒と教師が喧嘩しているんだろう、関係ない。そっとしておこう)」
しばらくして昼食を終えた遊我は一足先に教室へ戻る。
だが、その教室は変わり果てていた。
中に入ると教師を除く女子生徒全員が発狂していたのである。
あるものは幻覚を見ているのか虚無に対して笑っていたり。
あるものは気絶していたり。あるものは破壊衝動に見舞われたりしていた。
ある意味で平和ではない出来事、無論遊我はその原因は知っていた。
「まったく…人の本を盗んだからだ」
遊我は発狂者をすり抜け、机に置いてあった本を取る。
「やはり泥棒はいけないな」
本を持ち、教室を去ろうと扉を開けようとした時、背後からの殺意を感じたのか遊我は後ろを向く。
「ん?」
「ゆっ、遊我!!アンタ、なんてものを持って来てるの!!」
遊我の視界に写ったのは目つきが変わった黄美の姿だった。
目は釣り合っており、怒っているように見えた。
「勝手に盗んだ奴が悪いんだ、自業自得だよ」
「それは謝るけど、どうやったら皆を戻せるの?」
「簡単だ、恐怖を紛らわせばいい、駄目なら気絶させればいい。むしろ聞くがなんで盗んだ?」
一瞬、黄美は黙り、気が進まなそうな顔をする。
「…遊我の本に興味が湧いたから」
「はぁ?それなら買いに行けよ。こうなってしまった以上、今日の授業はここまでのようだし、帰る」
遊我は本を鞄に入れ、早めの下校をしようとした時だった。
「え…?止めないの?」
「君と教師以外、ああなったんだ。全員を落ち着かせるは時間の無駄だ。精々頑張れ」
「はぁ!?無責任にもほどあるでしょ!!」
「あのなぁ!あの本はメンタルが強くないと即発狂する趣味の本だ!確かにアレは自分の本だけど、盗んだのは君じゃないか。責任は君が取るべきじゃないの?」
「そ…それは」
遊我は再び溜息をつき、「しょうがない」っと言って、鞄から黄衣の王を取り出し、机に叩きつける。
バシンッ!
その音と同時に遊我と黄美以外の女子生徒は全員ドサリと倒れ込む。
「はい終わり、帰る」
「ええ?何?何?」
黄美は遊我が魔法でも使ったかのように見えたのか。
遊我に問いかける。
「何やったの?」
「何って、発狂から覚まさせただけだ。もういいだろ」
それからして突然の学級閉鎖となりこの日の授業は中止となった。
「全く、今日は散々な目に遭ったな、この本を持ってくるのはやめよう」
何事もなく帰宅した遊我は鞄から黄衣の王を取り出し、本棚にしまう。
「しかし、窃盗か。これじゃあ楽しみが減るなぁ」
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