第九話・寮の入れ替えテスト　作：鈴木颯手

「やあ、龍吾。昨日は大変だったらしいね」

龍吾が教室で席に着くと三沢がやってきて昨日の事を聞いてくる。

万丈目とデュエルを行った翌日にはデュエルの事が広まっていた。取り巻きが万丈目を見限りこの事を周りに言いふらしていたのだ。そのせいで万丈目の威信は底辺まで落ちラーイエローの生徒どころか最もランクの低いオシリスレッドの生徒にまで笑われていた。そのせいか今日龍吾は万丈目の姿を見ていなかった。

「…別に。あれくらい」

「君とは一度デュエルをしてみたいものだ。どうだ？早速デュエルをしないか？」

「やるなら放課後にな」

龍吾はそう返したが結局デュエルは出来なかった。オベリスクブルーの生徒と寮の入れ替えをかけたデュエルをしなければならず部屋の準備に追われてしまったためだ。龍吾も三沢の部屋の準備を手伝ったがその時は部屋中に書かれた数式に開いた口が塞がらなかった。三沢は十代と翔にも手伝いを頼んでおり早速白いペンキで塗っていく事になったが最終的にペンキの掛け合いとなってしまい龍吾の制服がどこぞの結社の様に白くなってしまったのは余談である。

そして三沢は十代の部屋に泊まる事となった。龍吾も誘ったのだが流石に明日入れるかもしれない寮とはいえ格上の寮に入るのは抵抗があったらしく結局十代の部屋に泊まる事となった。

翌日、龍吾は三沢より一足早く入れ替えテストがあるアリーナに訪れていた。理由は単純。用事がないため暇であったからだ。

「クロノス教諭」

アリーナに入るとクロノス教諭がこちらに背を向けて誰かと喋っていた。クロノス教諭と話をしている声にはとても聞き覚えがある龍吾はクロノス教諭に話しかける。

「オウ！シニョール龍吾！どうしてこんなところ～に！？」

「三沢の応援です」

「そうデスカ。なら、観客席で待っているノーネ。もうすぐシニョール三沢も来るでしょうカ～ラ」

「貴様は黒崎龍吾！」

観客席に向かおうとした時クロノス教諭と話していた男が龍吾に叫ぶ。その男、万丈目に龍吾は冷ややかな視線を向ける。

「…なんだ？」

「貴様も俺を笑いに来たのか！？」

「…クロノス教諭にも言ったが俺はあくまで三沢の応援だ」

「貴様！」

万丈目は龍吾を見てからかなりキレ気味で龍吾は仕方なく万丈目の方を向く。

「一旦落ち着け。まるで怒り狂う子供みたいだぞ」

「何だと！？何処までも馬鹿にしやがって！」

龍吾が喋るたびに火にガソリンを注ぐような感じとなってしまい龍吾は言葉で落ち着かせるのを諦めデュエルディスクを起動する。

「ちょうどいいし三沢が来るまでの間俺が相手をしてやる。よろしいですか？クロノス教諭」

「シニョール万丈目がいいなら構わないノーネ」

「いいだろう。貴様を倒し俺が最強だと言う事を証明させてやる！行くぞ！」

「「デュエル！」」

「先行は再び俺か…。ドロー」

黒崎龍吾
手札５枚→６枚

「時間があまりないからな最初から全力で行く。手札から融合を発動する。手札の古のダークゴーレムと掟破りのダークゴーレムを融合して暗黒のアルティメットゴーレムを召喚する」

暗黒のアルティメットゴーレム
ATK４０００　DEF４０００

「俺はカードを三枚伏せてターンエンド」

「俺のターン、ドロー！」

万丈目
手札５枚→６枚

万丈目は昨日とは違い別の手で来た龍吾を叩き潰そうと行動を起こそうとするがそれよりも早く龍吾が行動を起こした。

「この瞬間リバースカードオープン。破壊輪。暗黒のアルティメットゴーレムに装着」

「な、なに！？自爆する気か！？」

「それにチェーンして俺は防御輪を発動。これでお前のみダメージを受けてもらう」

「な、あ…」

万丈目は手札を確認するが今の自分に防ぐ手段がない事を悟り目を見開く。

「破壊輪、起動」

瞬間暗黒のアルティメットゴーレムが爆発、破壊され爆風が両プレイヤーを襲うが龍吾は防御輪によって爆風を受けず防げなかった万丈目は爆風をもろに受けて吹き飛ばされる。

「うわあぁぁぁぁぁぁっ！！！！」

爆風によって万丈目は観客席近くまで吹き飛ばされ全身を強打する。龍吾はそれを見て少しやりすぎたかと思いつつ声をかける。

「頭は冷めたか？」

「…！き、貴様ぁ！」

万丈目は親の仇でも見るような憎悪の視線を龍吾に向けるが龍吾はそれを受け流す。すると数人の走ってくる音が聞こえてくる。

「よし、ついた…って、えぇぇぇ！？寮の入れ替えの相手って龍吾なのか！？」

走ってきた者たち、十代、翔、三沢はアリーナにたつ龍吾を見て驚く。しかし龍吾は首を振る。

「違う。三沢の相手はそこで寝転んでいる万丈目だ」

龍吾の視線を辿り万丈目を見て顔を引きつらせる。どう見ても寝転んでいると言うよりは何かに吹き飛ばされたような感じだったからだ。龍吾はそんな十代達にかまわずクロノス教諭のいる方向を見る。しかし、クロノス教諭がいた場所にはおらずあたりを見回すと遠くの方で倒れているのが見えた。どうやら爆風に巻き込まれたようだ。

「クロノス教諭、大丈夫ですか？」

「マンマミーアァァ～。目が回っているノーネェェ」

龍吾は変な事を呟いているクロノス教諭を見て暫くは無理そうだと判断する。

結局クロノス教諭が回復するまで入れ替えテストは先延ばしになり回復してから入れ替えテストが始まった。龍吾は十代達と後から来た天上院明日香とともに観客席で見守った。デュエルは三沢が終始優勢で万丈目は終始覇気がなく呆気なくやられてしまうのであった。因みに三沢は寮の入れ替えを断りオベリスクブルーに上がるのは龍吾と十代を倒してからと龍吾たちに宣戦布告するのであった。

※諸事情により制裁デュエルと寮の入れ替えテストの順番を入れ替えて投稿しています。