Ep6　女の正体　作：ター坊

三時間休憩の利用という名目で遊路と鋭い目の女は繁華街のホテルの部屋に入った。薄暗い照明とキングサイズの１つの大きなベッドが非日常感を演出する。遊路は着ていたジャケットを脱ぎ、備え付けのクローゼットにしまう。
「する前に…コーヒー飲む？」
鋭い目の女はベッドに腰掛けながら紙コップのコーヒーを勧める。遊路はそのコーヒーを手に取り











バシャ

近くのゴミ箱の中に紙コップごと捨てた。
「っ！？」
「俺はコーヒーが嫌いなんでね。悪いけどいきなり抱かせてもらうよ」
遊路はそう言って女を押し倒し、馬乗り状に跨がる。
「ひゃっ！このっ…あっ」
女も抵抗しようとするが遊路に脚と手をガッチリ抑えられて満足に動かせない。
「くそっ！やめろ…」
「おいおい誘ったのはそっちの方だろ？…嫌がる女の子を無理矢理っていうのもプレイとしてやってみたかったしな…」
遊路の目はまるで獲物を捕らえた野獣のような、残酷な目をしていた。
「やめろ、変態…！」
「まずはその悪い口を塞いじゃおうか」







遊路はゆっくりと顔を近付けていく。
「やめろ、バカ！クズ！ドクズ！！」








唇と唇の距離が縮まる。
「ひっ…」










「…やっと恐がったか」
遊路はそう言って顔を離し、女の上から体をどける。
「えっ…」
女は遊路の対応にキョトンとする。
「全く。いくらなんでも悪戯が過ぎるな。未成年…って言うかまだ中学生くらいじゃないか？」
「っ！」
「図星か」
「…なんで悪戯って分かったんだよ」
「不自然な点が３つあったからだ。１つ。この胸」
そう言って遊路は指で女の胸を小突く。
「やっぱり。その大きさなのに揺れ方がおかしいと思ったらやっぱりパットだったか」
「―っ！」
女は気恥ずかしそうに腕で胸を隠し、遊路を睨みつける。
「２つ。ゴミ箱の中身だ。チラッと見たけど清掃で空っぽのはずのゴミ箱に錠剤の空袋があったぞ」
遊路はゴミ箱を持ち上げ中身を見せると確かにそれがあった。
「そして３つ。君は演技が上手くいっているつもりだったろうけど、体が少し震えていた。内心、恐かったんじゃないか？」
「…っ！」
全部見透かされてる気がして女は悔しさに唇を噛む。
「…分かってんなら、なんで押し倒したりしたんだよ。変態…！」
「女の子がこんなことしちゃいけないって口で言うより体に分からせた方が良いと思ったから…だな。恐がらせたのは謝るけど、一歩間違えたら君自身が後悔することに」
「…うっせぇんだよ！」
女は遊路の説教に逆ギレし、枕を力いっぱい遊路にぶん投げた後、猛ダッシュで部屋を出た。
「いたた…。そういえば、あの子なんで俺にあんなことを？」
遊路は残された部屋で考える。狙われた理由は有名だということでなんとなく納得がいく。だがあんな手の込んだ悪戯をしてまで何をしたかったのか、それは皆目見当がつかない。
「ん？」
ふとベッドに目を向けると何か落ちていた。
「パスケース？」
押し倒した拍子に落ちたのか、茶色のケースがベッドの上にあった。遊路は申し訳ないと思いつつもそのケースの中を調べる。中はお店の会員証やポイントカードばかりだったが、あの女の身元が割れた。
「虹宮詩音（にじのみや しおん）…。ツンとした見た目と性格の割に可愛い名前だな」





おまけの次回予告

美羽「ねぇ遊路」
遊路「なんだ？」
美羽「今更だけどこのおまけの次回予告って実際、次回の話と関係なくない？」
遊路「そんなことはないぞ？実はこの次回予告に出てきたワードが次回の話に登場したりそんな感じの話になったりするんだ。今回の場合は『残酷な目』だな」
美羽「うわっ、ビミョー…」
遊路「ちなみに次回登場するワードは『殴り込み』だ！」
美羽「次回何やっちゃうの！？」