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アルバス&エクレシア、サーモン漁へ行く☆ 作:ふぁいあ
暗黒海。それは暗黒界に広がる漆黒の海。
しかし物騒な名前と地名とは裏腹に、数多の生態系を抱えた資源豊かな海としても知られている。
暗黒海で獲れる海の幸は高い評価を得ており、「軍貫処海せん」を始め、各方面からの取引が絶えないそうだ。
そんな海のど真ん中、漁船が一隻突っ走る。
船首に立つのは、ねじり鉢巻ききりりと絞めた、粋でいなせな聖女様。漁師の戦闘服「カッパ」を着こみ、意気揚々と水平線を見据えるは。
人呼んで、「漁の聖女エクレシア」である。
「って事でやってきました! 暗黒海ぃー!」
「遊んでないで仕事してくれ」
「してますよ、鳥山が無いか見張っているんです。アルバスこそ、船酔いは治りました?」
「あんまり言わないでくれ、ぶり返す……」
マドロススタイルで船首に陣取るエクレシアに、ペアルックのアルバスは渋い顔をした。
フルルドリスを探す旅の途中、二人は暗黒界へと赴いていた。
「いやー、元気いいっすねぇーエクレシアさん。ナイスですよぉー」
「それが取り柄ですから。船を出していただき、ありがとうございますレンジさん」
エクレシアはぺこりとお礼をした。
漁船を操舵するのは、「暗黒界の番兵レンジ」である。実家が漁師であるため、たまに帰郷しては家業を手伝っているのだそうだ。
丁度その時期にレンジと出会った二人は、かねてよりの目的のため、彼を頼ったわけである。
「しかし、探し物とはねぇ。中々難儀な旅をしてるもんじゃあないか」
「ええ……ですが、何としても探さねばならない理由があるのです」
エクレシアは神妙な顔になる。二人が暗黒界に来た理由、そんなの勿論当然ただ一つ。
「今が旬のジェノサイドキングサーモン!何としても食べなければ!」
「フルルドリスはどうした?」
きっと草葉の陰で泣いてるだろう。
エクレシアがジェノサイドキングサーモンの存在を知ったのは幼少期の頃。フルルドリスにねだり、海の魚図鑑を読んでもらった時である。
フルルドリスは色んな魚を教えてくれた。舌魚は冬が旬で目が美味い、超古深海王は煮付けが最高、鰤っ子姫は刺身が一番。話を聞く度エクレシアは、涎で口がいっぱいになった。
『中でも、こいつは別格だ』
フルルドリスが何度も話した魚こそ、今回のターゲット「ジェノサイドキングサーモン」である。
魚族の中で最も美味いとされる、別名「魚族の王」と呼ばれる鮭。煮てよし、蒸してよし、焼いてよしと三拍子そろったお魚で、一度でいいから食べてみたいと、エクレシアが子供の頃から夢見た一匹なのだ。
「なんでも、一口食べれば星杯戦争すら終わらせる程の美味さだと伺いました……」
「鮭なのに?」
「確かに過言じゃあないねぇ。ジェノサイドキングサーモンを食べた途端、ヴィサスとヴェーダが喧嘩を止めたと言われてるくらいだかんねぇ」
「鮭なのに?」
「ドライトロンとベアルクティが同盟を結んだのも、会食にジェノサイドキングサーモンが出たのがきっかけなんだとか」
「鮭だよな?」
文字通り世壊どころか宇宙すら救った魚である。
と言う事で、ジェノサイドキングサーモンを味わうべく、旅の途中で暗黒界へ立ち寄ったわけだ。
おやつの牡蛎せんべいを齧り、エクレシアは期待に目を輝かせた。
「争いを止め、人の心を繋ぐ鮭!食べてみたいと思うのが人情ですよアルバス!」
「ただの食欲だろ」
「ばっはっは!まぁ実際それくらい美味いから期待しとけやアル坊!」
「あんたはなんでさっきから口調が変わってんだよ、鬱陶しい」
レンジはバツが悪そうに頬を掻いた。
「実はあっし、許されねぇことをしちまって……そのせいで口調が安定しなくなっちまったのさ……」
「何があったのですか?」
~回想、昨日のレンジ~
『レンジぃ!この馬鹿者がぁ!バーティ○ッツの百味ビーンズをつまみ食いしおって、せっかく暗黒界の皆で分けっこして「やーいお前鼻くそ味ひいてやんのーwww」ってやるのを楽しみにしていたものを!』
『ひぃぃっ!ゆ、許してくださいゴルド様ぁ!』
『折角とし○えんでハリー・○ッターを堪能したと言うのに、気分を害するこの狼藉……許すわけにはいきませんわ。貴様には罰として、しっぺと「明日一日口を開く度に口調が変わる魔法」をかける刑を言い渡す!精々反省いたしなさい!』
『そ、そんなシルバ様!明日実家帰るのに恥ずかしすぎますよぉぉぉぉ!!』
~以上、回想終わり~
「……とまぁ、涙無くして語れぬ理由があるんすわ」
「小学生の罰ゲーム?」
「とし○えん行くんですねあの人達」
西武線にてホグ○ーツの制服を着てキャッキャウフフしているゴルドとシルバが目撃されたそうである。
「今日一日の不便なんで、どうか我慢してくださいまし」
「随分と、和気あいあいだな、暗黒界。ところで、ジェノサイドキングサーモンはどうやって獲るんだ?鮭なら追い込み漁がポピュラーらしいが」
「撃墜漁なんすわ」
「……撃墜漁?」
「あんさんも人が悪いなぁ、わしら暗黒界の中で、あの鮭と戦えるのはたった三人やねんで?……追い込み漁なんぞできるわけあらへんがな」
ジェノサイドキングサーモンの攻撃力は2400、割と強いのだ。
「と言うわけで、撃墜漁なる方法を考え出したわけなんだが。アルバス!エクレシア!あれを見てみろ!」
『ええーっ!』
イッテQのノリで驚く二人の視線の先には、漁船に搭載されたアショカ・ピラーが立っていた。
「いや最初から知っていたけどな。なんであんなもの搭載しているのかずっと謎だったんだ」
「ソナーでもないですし、あれで何か装備品でも持ってくるんですか?」
「あれースポッターなんやん。ありっしとぅなかんかいジェノサイドキングサーモンぬ出現ポイントちてーてぃ、陸地から全弾発射し撃墜すくとぅうぬ名ぬちちゃん」
『なんて?』
「まぁ要するに、あれで合図送っちミサイル撃ってもらうんや。それで撃墜漁なんて呼ばれとる」
「鮭獲るためにミサイル使うのか!?」
「そりゃ勿論!だって僕ら、弱いもぉん」
「逆五条止めてください。下手すれば巻き込まれません私達?」
「その分実入りいいじゃけん。それにな、何もワシらだけじゃないけんね」
よく見れば、周囲には多数のアショカ・ピラーを乗せた漁船が集まりつつあった。
……ミサイルのスポッターにしては多いような気がする。
「毎度一個旅団クラスで襲ってくるんでねぇ、こんくらいの数並べないと、正確に狙えないんでねぇ」
「鮭漁って、過酷なんですね」
「ここのが特殊すぎるだけだろ。そもそも、そんな漁でジェノサイドキングサーモン獲ったら魚体がボロボロにならないか?」
「ミサイル如きで傷つくようなタマやあらへん。気化爆弾クラスのもんぶち込んでようやく気絶するっちゅう寸法や」
「滅びの爆裂疾風弾並の爆弾使ってようやくトントンなのかよ……」
「……あの、つまり使うミサイルって」
「そうよぉ、サーモバリック♡」
「ああ、鮭だけにサーモンバリックってか」
「洒落が利いてますねぇうふふふふー」
二人は朗らかに笑って、
「……馬鹿なのか!?暗黒界は馬鹿なのか!?」
「なんで鮭相手に戦争おっぱじめてるんです!?」
「だって、あの鮭放っておいだっきゃ暗黒界滅ぼさぃるはんでさぁ……国家事業どすて認めらぃでら漁だす、わさ文句しゃべらぃでも……」
「いやどんだけ脅威なんだよジェノサイドキングサーモン」
「国家事業になるレベルって最早災害ですね」
「そごんどー事なっきゃ、ほんの200発撃とだけどーて心配無っきゃさ」
「お前らの方が暗黒界滅ぼそうとしてない?」
よもや人災である。
「ハッ!たかが撃墜漁如きでビビるとは、とんだチキン野郎どもだぜ!」
と、横付けしてくる漁船が一隻。その船首に立つ男が、二人を威嚇した。
その男は、ねじり鉢巻ききりりと巻いた、粋でいなせなデビルハンター。かつて環境を荒らしに荒らした悪魔族の風雲児。
「そんなに爆破がこえーんならよぉ!とっとと帰ってママの乳でも吸ってな!」
「パパの○○でもいーのよ?」
魔を刻むデモンスミスと、その相棒ラクリモーサである。
「あ、好き勝手にやりすぎたせいで制限カードになった人ですね」
「お前のせいでベアトリーチェが監獄行きになったからダンテが泣いてたぞ」
「好き勝手にデッキ融合した結果制限行きになった奴に言われたかねぇぜ!」
「それ俺じゃなくて烙印融合。それに悪いの喧嘩吹っ掛けてきた方だから」
「アルベルが襲わなければ烙印融合なんてできませんでしたからねぇ」
「くちゅん!」
どっかでアルベルがくしゃみをしたようだが、当然誰の耳にも届かない。
「と言うより、なんで貴方方がこんな所に居るんですか?」
「悪魔狩りにしても、暗黒界の連中は悪い奴じゃないだろ?トンマな奴らばっかだし」
「アルバスのおじき、そいつぁ、ワシらに失礼じゃねぇですかい?」
「ハッ!言われなくとも暗黒界には用はねぇ、エクソシスターのアマどもにすら獲物と思われない腑抜けどもなんざアウトオブ眼中!俺らの狙いはただ一つ!ジェノサイドキングサーモンだ!あの鮭獲って、大金を稼がなきゃならねぇんだよ!」
「何たる気迫……あのお方、言うに言われぬ理由があるのでは?」
したり顔でほざくレンジにアルバスはむかっとした。
ともあれ、デモンスミスは語り出す。かくも悲しき、漁へ繰り出す宿命を。
~悪魔狩りの男デモンスミスの口コミ~
From:バフォメット
★☆☆☆☆なんだよあいつ
レビュー:最悪な業者です。悪魔狩りを頼んだら、友達のガゼル君の家をぶっ壊しました。しかもその後のフォローも無し、全額弁償してもらいました。
From:エクソシスター・エリス
★☆☆☆☆美術館を壊されました。
レビュー:難しい仕事を請け負ったので、やむを得ず共同業務でご一緒させていただいたのですが、独断専行で仕事の邪魔をしたばかりか、依頼先の美術館を木っ端みじんにしてしまったのです。二度と仕事なんて頼みません。依頼料は全額弁償に使わせていただきました。
From:マスター・ヒュペリオン
★☆☆☆☆金返せ!
レビュー:我が天空の聖域をぶっ飛ばしおって!何が凄腕の悪魔狩りだ、恥を知れ!
「……こんな感じに各方面からクレームの嵐で、仕事すればするほど借金増えて、結果鮭漁に放り出されたってわけ」
「自業自得の極みだな」
「ったくよぉ!悪魔倒してやってんだから器物破損くらい目ぇ瞑れってんだよクソだらぁ!」
「プロならコンプラ守りましょうよ」
ぐうの音も出ねぇ正論である。ついでに自分の発言が恥ずかしくてレンジは小さくなっていた。
「ただジェノサイドキングサーモンを食べにきただけなのに、なんだこの状況……」
「ラクリモーサさん、あんなダメ男のどこがいいんですか?」
「ダメ男だからいいのよ。堕落する男ほど、魅力的な存在はないわぁ……」
悪魔ほどダメ男が好みな種族は居ない。人気の男は3Bなんだとか。
「ともあれだ!こっちは借金返済、そっちは鮭が食いたい!利害は一致してんだろ?ここは共同戦線といこうじゃねぇか!」
「何一つ一致してないんだが。弾避けにしようって魂胆が見え見えだ」
「逆に弾避けにしちゃいましょうか。そろそろ始まりそうですよ、撃墜漁」
気が付けば漁船と言う名の犠牲者候補がかなりの数になっている。同時に、水平線がこんもりと盛り上がった。
そして飛び出してくる魚影、魚影!魚影!!レンジが思わず「ギョエー!」と悲鳴を上げるくらいのジェノサイドキングサーモンが、津波のように迫っていた。
その面積、実に海1:鮭9。海面が鮭に覆い尽くされていた。
「……しゃけ……?」
「……しゃけですね……」
「……しゃけだぜ……」
「……しゃけなの……?」
「いやいやいや!ちょっとこれ多すぎでやんす!?こんな数の鮭が襲ってくるなんて見た事ないでやんすよ!」
レンジが大慌てで舵を切る。他の漁船も進撃の鮭に恐れおののき、一斉に逃げ出していた。
「おうこら逃げんなぁ!鮭如きにビビっちゃ制限カードの名が泣くってんだよぉ!」
「「海」の効果が乗ってるからレクイエム装備しても返り討ちに遭うだけよ!」
「アルバス!超融合はできませんか!?」
「「バスタード」にはなれるが、なった所で勝ち目はないぞ!」
漏れなく全員攻撃力2600、アルバスもデモンスミスも歯が立たない。
と、アショカ・ピラーの点滅と同時に、陸地からの攻撃が始まった。
この撃墜漁のために用意された、キャノン・ソルジャー200機が、サーモバリック爆弾搭載のミサイルを一斉に発射!これにて漁は終わりと思いきや。
ジェノサイドキングサーモンは一斉に一角獣のホーンを装備し、ビームライフルのSEと共に紫電のビーム弾を発射!爆弾を迎撃するどころか、漁船もろとも海面を抉り、陸地を爆撃した。
「あいつら体内にビームマグナムでも搭載してるのか?」
「掠っただけで漁船が吹っ飛びましたね。海水が電気分解されて塩素ガス出てます」
「NT-D使ってるようにも見えるぜ。額に装備した一角獣のホーンが割れてらぁ」
「対ニュータイプ用に開発されたのあの鮭?EXAMよりも過激じゃない」
「そんなのクゥーちゃん相手にだけしてほしいでごんす!本当に暗黒界が滅んでしまうでごんすよぉ!」
そんなやり取りをしている間にも、ジェノサイドキングサーモンのマグナム攻撃は続く。その最中、デモンスミスの目がぎらついた。
「……不自然だぜ、鮭どもから匂うぜ」
「丁度鮭とば炙ってたんですけど食べます?」
「おーこいつぁビールに合うよなぁ、先っちょ齧ってきゅーっと一杯やんのが最高!って何してんだてめぇ!」
「お腹空いちゃったのでおやつです」
「空気読めやボケが!……野生の鮭なら真っ先に目先の俺らをヤッてるはずだ。だが奴らは真っ先に、陸地のキャノン・ソルジャーを狙った」
「自分達にとって脅威となる物を認識しているのか?」
「いくらジェノサイドキングサーモンと言えど所詮は魚、そこまでの知能はねぇぜ。勿論、一角獣のホーンなんてブツを自分らで用意するのも不可能。加えてこの精密射撃、統率が取れすぎているぜ。つまり背後になんかが居る……ラクリモーサ!」
「既に位置は割れてるわ、いつでもどうぞ」
デモンスミスはラクリモーサから情報を受け取り、レクイエムをライフルモードに切り替えた。
群がる鮭の中から正確に目標をロックオン。あとは風向きとか船の揺れとかその他もろもろ懸念事項を勘でどうにかカバーして。
「FIRE!」
漁船が大きくノックバックする程の反動!ジェノサイドキングサーモンの隙間を縫い、指揮官を撃ち抜いた!
手ごたえあり。レクイエムから150mm弾の薬莢が排出されると同時に、首謀者が現れた。
「ふっふっふ……よくぞ我が姿を捉えた。だが残念だな陸の者よ!貴様らの攻撃なんぞ、この海洋最強の生物たる我には効かぬげふぅっ!」
「いや効いているだろばっちりと」
アルバスがツッコんだのは、胸にどでかい風穴を開けて吐血した、半魚獣フィッシャービースト。デモンスミスと同じくレベル6の魚族である。
「おのれぇ!戦車の砲弾よりデカい弾丸ぶち込みおってぇ!我じゃなかったら死んでたぞ!悪魔か貴様ぁ!」
「そこは素直に死んどけよ」
「「海」で攻撃力上がった分撃破されずに苦しみましたね」
「それとこの人悪魔だからむしろ誉め言葉よ」
「いやぁそれほどでもぉ(テレテレ)」
「褒めとらん!」
「フィッシャービースト!わてらの暗黒界になしてそないな事すんのや!」
話が進まない危機感からレンジが強引に割って入る。レンジに感謝しつつフィッシャービーストは咳払いし、仕切り直し。
「単刀直入に言おう、我ら魚族集団「アトランティスの集い」は!今日これより陸上生物の蹂躙を宣言する!まずは隣国、憎きクソ暗黒界を攻め落とし!全陸上生物どもに宣戦布告を果たすとしよう!」
「海洋生物による侵攻!?てか異常なまでに敵視されてないか?何したんだよ暗黒界!」
「いやいやいや!誤解でありんすよ!伝説の都さんとはモロッコとナイジェリアみたいな関係を保ってるからして!」
「激烈に仲悪いじゃない」
過去にレインがマリンセスライブで感激の末暴れた結果、隣国同士で国交断絶する程度の仲に発展したそうである。
あまりの冒涜に、エクレシアはフィッシャービーストへ問いかけた。
「なぜそんな暴挙に出るのですか!陸の民と手を取って共存する道はないのですか!」
「共存だと?貴様ら陸上生物は、我ら海洋生物を隷属させ!搾取しているだろう!例えば漁の聖女から漂うオイスターのスメル!牡蛎を使って自分達が汚した海の尻ぬぐいをさせ、用済みとなった牡蛎達は哀れにも殻をはぎ取られ、炭火に炙られ!煮えたぎる鍋に放り込まれ!挙句の果てには鉄板に押し付けて焼き土下座の強要!何が牡蛎入りお好み焼きだ、ヘラで頭を押し付けられ、灼熱に焼かれる牡蛎の気持ちを考えた事はあるのか!さらには鮭を目の前にして、同胞が亡骸の鮭とばを見せしめに、火あぶりの刑にするとは……我が同胞の貝権魚権を無視した愚行に走りながら共存を宣う図々しさ……厚顔無恥とはこの事よ!」
「……どうしましょ、私のおやつでヒートアップしちゃいました」
「だから、おやつは肉巻きおにぎりにしとけって言っただろ?」
口撃力2600に論破され、反論できない口撃力1500のエクレシアであった。
「聖女の非道、我らへの挑発行為とみなす!よって我が独断にて!まずは貴様から鮭の養殖用ペレットに加工してくれるわ!アトランティスの生け簀に放り込まれて食われるがいい!」
「お前らこそ自分らの同胞奴隷みたいに扱ってるだろうが」
「やかましい!人の揚げ足を取るなとお母さんから習わなかったか小僧!」
「俺母親居ないから教われないって」
「……あ、大変申し訳ございません……お悔やみ申し上げます……」
「いえ、こちらこそ気を使わせてしまいまして……」
ぺこぺこするフィッシャービーストとアルバス。根は真面目な魚族である。
「まぁそれはさておき!このジェノサイドキングサーモンの軍勢に太刀打ちできまい!加えて、駄目押しといこう!」
「!あれは!」
レンジが目を見開く。フィッシャービーストが取り出したのは、ほくほく甘くて美味しい、芋羊羹。
なんでそんなもんを出したのか、アルバス達が首をかしげる中。
「いただきます」
「食べた!?」
「見りゃ分かる」
「芋羊羹美味しそうですね」
驚くレンジ、呆れるアルバス、涎を垂らすエクレシア。三者三様の反応を見せる中、フィッシャービーストは大量の蒸気を吐き出して、突如巨大化を始めた!
その体躯、実に十倍。水位が急激に上がり、高波が漁船を襲った。
「なんででっかくなった!?あの芋羊羹に何が!」
「なぁるほど、ありゃあ「ジャイアントウイルス」入りの芋羊羹だぜ」
「戦闘で破壊されると、効果ダメージを与えつつ増殖するんだけど……モンスターが食べると「巨大化」の装備魔法の効果を付与するの」
「初耳っすよんな設定」
「効果付与だから「サイクロン」でも破壊できねぇ、厄介なブツ持ち込みやがってクソが」
「でもなんで芋羊羹に混ぜたんです?普通に飲み込めば……」
『ウイルス直に食べるとか不衛生でしょうがぁ!』
「ウイルス付着した芋羊羹も不衛生だろうが!」
『なんとでも言うがいい!これにて我が攻撃力は2倍!「海」の効果も相まって実に5200!かのアンチホープをも超える数値に恐れおののくがいい!それとサツマイモ農家さんありがとうございます』
「中途半端に礼儀正しくて調子狂うな……ともあれどうするか」
「攻撃力5200のフィッシャービーストに、攻撃力3300のジェノサイドキングサーモンの大群。「ミラジェイド」に変身しても勝てないですね」
マヌケな軍団ではあるが、デスピアの侵攻よりも強大な戦線である。
それを打破する手立ては、アルバスとエクレシアには無い。途方に暮れる二人だが。
「ハッ!この程度でびびってんのかガキども、情けねぇなぁ!」
「デモンスミス……けどお前だって、あの連中を相手にする力はないだろ?」
「関係ねぇよ、鮭如きに怯んでよぉ、悪魔狩りが名乗れるかってんだ!俺ぁ最後の最後まで抗うぜ!例えこの身朽ちようとも、首だけになってでも奴らを喰らいつくしてやるぜ!」
「それでこそ、私の見染めた男……惚れ直すわ、デモンスミス」
「っしゃあ!いくぜおr
デモンスミスに鮭のマグナム直撃!漁船もろとも藻屑と化した。
「そりゃああんだけ盛大に死亡フラグ立てたらそうなるよな……」
「さよならデモンスミスさん……安らかに眠れないでしょうけどおやすみなさい……」
地獄の底まで借金取りが追いかけてきそうである。
『ふはははは!なんか「海」の調子が良くて鮭達も喜んでおるわ!さぁいざ行かん鮭達よ!暗黒界を滅ぼすのだ!』
巨大化したフィッシャービーストが進撃し、漁船を蹂躙していく。ジェノサイドキングサーモンのマグナムによる弾幕もあり、暗黒海は地獄絵図と化していた。
「ひぃぃっ!ど、どうするアイフルアルバスしゃん!?」
「お前余裕あるだろ。……一応、打開策は見つけたよ。エクレシア、あれをやろう」
「あれですか……わかりました!アルバスを信じます!」
二人は手を取り合い、海に向かってジャンプ!融合するかと思いきや。
「俺と!」
「私で!」
『オーバーレイネットワークを構築!』
まさかのエクシーズ召喚!二人が重なり呼び出すは、レベル4モンスター×2で召喚される汎用エクシーズ。
『エクシーズ召喚!いでよ、ヘルフレイムバンシー!』
「ここでっ、ヘルフレイムバンシーだとぉっ!?」
『うつけが!「海」の勢力下で炎族を出すとは愚の骨頂!』
『それはどうかな?効果発動!』
オーバーレイユニットを消費し、ヘルフレイムバンシーのサーチ効果を発動。
二人の呼び声に応じ、空から「燃える藻」が落下した!
続けざま、もう一体の「燃える藻」を落下させる。するとフィッシャービーストの体が見る間に癒えていく。
『焼きが回ったか!墓地に落ちたら相手ライフを回復する紙屑が、ごっつあんです!』
『まだわからないか?「燃える藻」で回復したって事は、何が起こる?』
「……はっ!そうか!「巨大化」の効果を付与されたって事は、相手のライフを上回ってしまうとデメリットが発生する!」
すっかり解説役に回ったレンジの言う通り、「巨大化」で攻撃力が倍化するのは「相手よりもライフが低い時」。
くしくも、デモンスミスに撃たれてライフが減った事で、フィッシャービーストは「巨大化」の恩恵を受けていた。それを「燃える藻」の回復効果によって治療されたがために、攻撃力は半減する。
体がしぼみ、フィッシャービーストは攻撃力1300へと減少。アルバスとエクレシアは分離し、サムズアップで称え合った。
「ぐおぉぉぉっ……なんで藻なのに炎族なんだあいつぅぅぅ……!だが、まだだ!まだ終わってない!この鮭の軍勢を相手に成す術なぞあるものか!」
「ある方は言いました、「海」の攻略には、遊戯王原作9巻を読め、と」
エクレシアの言葉にフィッシャービーストははっとする。遊戯王原作9巻と言えば、かの有名な梶木漁太戦が描かれた一冊。
「ひっひっひ、ワシらの漁船に何が搭載されとるかわかっておるかぁ?装備魔法を持ってくる「アショカ・ピラー」じゃぞ?」
「海位が上がっているのに気付かなかったのは致命的だったな、空を見てみろよ」
アルバスが指差す先には、装備魔法「魔性の月」。月の引力によって、海位が普段より上昇していたのだ。
全てを察し、フィッシャービーストは青ざめる。だが、
「か、肝心の月を破壊する方法なんて……!」
『あるんだなぁこれが!』
陸地からの超長距離狙撃が「魔性の月」に直撃!粉々になった月が降り注ぐ中、フィッシャービーストは見た。
ラクリモーサと融合した、「刻まれし魔ラクリモーサ」の姿を。
「やっぱ生きてたか」
『ハッ!あの程度で死ぬわきゃねーぜ!寸での所でデビルトリガー引いてやったのよぉ!』
「さて問題です。月が壊れた後の「海」は、どうなるでしょう」
一気に海が引き、戦線を上げすぎたジェノサイドキングサーモンが陸地に挙がってしまう。辛うじて海に残っていた鮭達も引き潮に呑まれて沖へ流れ、鮭軍団は壊滅した。
フィッシャービーストは陸地へ向かうも、ジェノサイドキングサーモンは全滅している。いかに鮭と言えど、海から上がればただの魚。
「これでお前の野望はついえたな、フィッシャービースト!」
打ちひしがれるフィッシャービーストに、レンジは勝利宣言を下した。
「何美味しいどこ取りしてんだボケが」
「「アルビオン」の餌にしてやろうかこいつ」
「「暗黒を吸い込むマジックミラー」に放り込んでやろうかしら」
「「アショカ・ピラー」の効果使ったのおいどんですたい、手柄は渡さんどす」
「……こんなボケっぱなしの奴らに、我は負けたのか……」
「人の事は言えないと思いますけど、フィッシャービーストさん、どうして貴方は暗黒界を攻め入ろうとしたのですか?国交断絶をしている以上、このような事をするのは余計に両国の亀裂を深める行為ですけど」
「……負けられんのだ、我には、Xで支持してくれる200人のフォロワーが居る……我の思想に賛同してくれる同志がいる以上!革命を起こさねばならんのだ!」
「え?その程度のフォロワーでこんな事を?」
「あー、時々居るぜぇ。ほんの数百人のフォロワーでインフルエンサー気取りに行動しやがるくるくるパーな環境活動家。瞬間接着剤で道路とケツくっつけた馬鹿どもとなんら変わんねぇじゃねか」
「何を!」
「ちなみにこの人40万フォロワー居るから、反論しても自分が惨めになるだけよ」
「よ、よんじゅうまん……!?」
殆どアンチフォロワーだけれども。ラクリモーサはあえて黙っておいた。
「知名度でも腕っぷしでも負けだな。これに懲りたら、もうこんな事をするのは止めろよ?」
「フィッシャービーストさん、とっても真面目な方じゃないですか。でしたら、もっと別の方法で革命を起こすべきですよ。平和的にアトランティスと暗黒界の国交を戻すとか」
「……確かに、そうだな。もっと建設的に動くべきだった、我が間違っていたようだ」
「では、打ち上げられた鮭は放置したら環境問題になるので皆で処理して構いませんね?」
「ああ、やってくれ。……あれ?」
なんかしれっと言いくるめられたような気がしたフィッシャービーストさん、正解です。
てなわけで、アルバスとエクレシア、ついでにデモンスミス組もありがたく鮭にありつけた。
騒ぎを起こした詫びとして、フィッシャービーストが腕を振るう事に。
スタイリッシュな包丁さばきで鮭を見る間に三枚おろし。鍋に焼きにちゃんちゃん焼き、フライにムニエル香草揚げと、絶品料理が山ほど出来る出来る。
「ダブルスタンダードにも程が無いか?」
「まぁまぁ、美味しいジェノサイドキングサーモンを食べられるんですからいいじゃないですか♪見てくださいよこの焼き目……サーモン色に輝いてますよ!」
「サーモンだからな」
「俺らはここらで上がるぜぇ、こんだけ獲れりゃあ借金の半分は返せ「5分くらいは返せるわね」……先はなげぇぜ」
「どんだけ借金あるんだよ」
「カオス・ソルジャー ステンレス製 URの五乗くらい」
「国家予算並みですねぇ」
一生かけても返せやしねぇ。アルバスとエクレシアは思った。
「ともあれこれにて大団円って事で!さぁ食べやしょう!」
『いただきまーす!』
エクレシアが至福の瞬間を過ごそうとした瞬間。
彼女の箸から鮭を掠め取り、デモンスミスから鮭を奪った、謎の集団が現れた!
「あ、あれ?」
「海から箸に鮭を加えたねぇ、って事でこれは没収でーすwww」
そんな理不尽を振りかざすのは、デッキに触らせませんが公約の「灰流うらら」!
「陸地に落ちた鮭で料理を発動したなぁ、って事でこれは無効でーっすwww」
墓地で発動した効果を無効にする「スカル・マイスター」!
「同じく陸地に落ちた鮭に触れようとしたねぇ、って事で食事発動無効でーすwww」
ダメステでも使える「屋敷わらし」!
「クエーっwww」
墓地ならなんでも除外しちゃう「D・Dクロウ」!
手札誘発の登場により、エクレシアが楽しみにしていたジェノサイドキングサーモン料理は瞬く間に奪われていく。
「ファーwww人が苦労して取ったアドを無効にすんのサイコーwww」
「ねぇねぇどんな気持ちwwwコンボの準備が台無しにされたのどんな気持ちぃーwww」
「あーおいちーねぇwwwハイエナ行為しゃいっこーwww」
「クェーwww」
煽りに煽り、鮭を食い散らかす手札誘発ども。エクレシア達はぴきりとひきつり、
「……成程、流石は現代遊戯王……」
「目先のフィールドにばかり目ぇ向けてたら、足元掬われるって事DEATHねぇ……」
「ハッ……肝の据わったゴミってぇのはどこにでもいるもんだぜぇ……」
「折角整えた我が鮭フルコースコンボも、たった一枚の手札誘発でおじゃんとな……」
『よろしい、ならば戦争じゃあ!』
手札誘発軍VSエクレシア軍団、仁義なき戦いが幕を開けた!
「……アルバス君」
「……なんだ?」
「……焼肉行く?」
「……奢りなら」
「いいよ、行こ」
阿鼻叫喚と化した浜辺を諦めの境地で眺めた後、二人は焼き肉屋へ向かった。
暫くは、鮭を食べるのはシャケよう。
ラクリモーサと牛タンを焼きながら、アルバスは疲れた顔で締めくくった。
しかし物騒な名前と地名とは裏腹に、数多の生態系を抱えた資源豊かな海としても知られている。
暗黒海で獲れる海の幸は高い評価を得ており、「軍貫処海せん」を始め、各方面からの取引が絶えないそうだ。
そんな海のど真ん中、漁船が一隻突っ走る。
船首に立つのは、ねじり鉢巻ききりりと絞めた、粋でいなせな聖女様。漁師の戦闘服「カッパ」を着こみ、意気揚々と水平線を見据えるは。
人呼んで、「漁の聖女エクレシア」である。
「って事でやってきました! 暗黒海ぃー!」
「遊んでないで仕事してくれ」
「してますよ、鳥山が無いか見張っているんです。アルバスこそ、船酔いは治りました?」
「あんまり言わないでくれ、ぶり返す……」
マドロススタイルで船首に陣取るエクレシアに、ペアルックのアルバスは渋い顔をした。
フルルドリスを探す旅の途中、二人は暗黒界へと赴いていた。
「いやー、元気いいっすねぇーエクレシアさん。ナイスですよぉー」
「それが取り柄ですから。船を出していただき、ありがとうございますレンジさん」
エクレシアはぺこりとお礼をした。
漁船を操舵するのは、「暗黒界の番兵レンジ」である。実家が漁師であるため、たまに帰郷しては家業を手伝っているのだそうだ。
丁度その時期にレンジと出会った二人は、かねてよりの目的のため、彼を頼ったわけである。
「しかし、探し物とはねぇ。中々難儀な旅をしてるもんじゃあないか」
「ええ……ですが、何としても探さねばならない理由があるのです」
エクレシアは神妙な顔になる。二人が暗黒界に来た理由、そんなの勿論当然ただ一つ。
「今が旬のジェノサイドキングサーモン!何としても食べなければ!」
「フルルドリスはどうした?」
きっと草葉の陰で泣いてるだろう。
エクレシアがジェノサイドキングサーモンの存在を知ったのは幼少期の頃。フルルドリスにねだり、海の魚図鑑を読んでもらった時である。
フルルドリスは色んな魚を教えてくれた。舌魚は冬が旬で目が美味い、超古深海王は煮付けが最高、鰤っ子姫は刺身が一番。話を聞く度エクレシアは、涎で口がいっぱいになった。
『中でも、こいつは別格だ』
フルルドリスが何度も話した魚こそ、今回のターゲット「ジェノサイドキングサーモン」である。
魚族の中で最も美味いとされる、別名「魚族の王」と呼ばれる鮭。煮てよし、蒸してよし、焼いてよしと三拍子そろったお魚で、一度でいいから食べてみたいと、エクレシアが子供の頃から夢見た一匹なのだ。
「なんでも、一口食べれば星杯戦争すら終わらせる程の美味さだと伺いました……」
「鮭なのに?」
「確かに過言じゃあないねぇ。ジェノサイドキングサーモンを食べた途端、ヴィサスとヴェーダが喧嘩を止めたと言われてるくらいだかんねぇ」
「鮭なのに?」
「ドライトロンとベアルクティが同盟を結んだのも、会食にジェノサイドキングサーモンが出たのがきっかけなんだとか」
「鮭だよな?」
文字通り世壊どころか宇宙すら救った魚である。
と言う事で、ジェノサイドキングサーモンを味わうべく、旅の途中で暗黒界へ立ち寄ったわけだ。
おやつの牡蛎せんべいを齧り、エクレシアは期待に目を輝かせた。
「争いを止め、人の心を繋ぐ鮭!食べてみたいと思うのが人情ですよアルバス!」
「ただの食欲だろ」
「ばっはっは!まぁ実際それくらい美味いから期待しとけやアル坊!」
「あんたはなんでさっきから口調が変わってんだよ、鬱陶しい」
レンジはバツが悪そうに頬を掻いた。
「実はあっし、許されねぇことをしちまって……そのせいで口調が安定しなくなっちまったのさ……」
「何があったのですか?」
~回想、昨日のレンジ~
『レンジぃ!この馬鹿者がぁ!バーティ○ッツの百味ビーンズをつまみ食いしおって、せっかく暗黒界の皆で分けっこして「やーいお前鼻くそ味ひいてやんのーwww」ってやるのを楽しみにしていたものを!』
『ひぃぃっ!ゆ、許してくださいゴルド様ぁ!』
『折角とし○えんでハリー・○ッターを堪能したと言うのに、気分を害するこの狼藉……許すわけにはいきませんわ。貴様には罰として、しっぺと「明日一日口を開く度に口調が変わる魔法」をかける刑を言い渡す!精々反省いたしなさい!』
『そ、そんなシルバ様!明日実家帰るのに恥ずかしすぎますよぉぉぉぉ!!』
~以上、回想終わり~
「……とまぁ、涙無くして語れぬ理由があるんすわ」
「小学生の罰ゲーム?」
「とし○えん行くんですねあの人達」
西武線にてホグ○ーツの制服を着てキャッキャウフフしているゴルドとシルバが目撃されたそうである。
「今日一日の不便なんで、どうか我慢してくださいまし」
「随分と、和気あいあいだな、暗黒界。ところで、ジェノサイドキングサーモンはどうやって獲るんだ?鮭なら追い込み漁がポピュラーらしいが」
「撃墜漁なんすわ」
「……撃墜漁?」
「あんさんも人が悪いなぁ、わしら暗黒界の中で、あの鮭と戦えるのはたった三人やねんで?……追い込み漁なんぞできるわけあらへんがな」
ジェノサイドキングサーモンの攻撃力は2400、割と強いのだ。
「と言うわけで、撃墜漁なる方法を考え出したわけなんだが。アルバス!エクレシア!あれを見てみろ!」
『ええーっ!』
イッテQのノリで驚く二人の視線の先には、漁船に搭載されたアショカ・ピラーが立っていた。
「いや最初から知っていたけどな。なんであんなもの搭載しているのかずっと謎だったんだ」
「ソナーでもないですし、あれで何か装備品でも持ってくるんですか?」
「あれースポッターなんやん。ありっしとぅなかんかいジェノサイドキングサーモンぬ出現ポイントちてーてぃ、陸地から全弾発射し撃墜すくとぅうぬ名ぬちちゃん」
『なんて?』
「まぁ要するに、あれで合図送っちミサイル撃ってもらうんや。それで撃墜漁なんて呼ばれとる」
「鮭獲るためにミサイル使うのか!?」
「そりゃ勿論!だって僕ら、弱いもぉん」
「逆五条止めてください。下手すれば巻き込まれません私達?」
「その分実入りいいじゃけん。それにな、何もワシらだけじゃないけんね」
よく見れば、周囲には多数のアショカ・ピラーを乗せた漁船が集まりつつあった。
……ミサイルのスポッターにしては多いような気がする。
「毎度一個旅団クラスで襲ってくるんでねぇ、こんくらいの数並べないと、正確に狙えないんでねぇ」
「鮭漁って、過酷なんですね」
「ここのが特殊すぎるだけだろ。そもそも、そんな漁でジェノサイドキングサーモン獲ったら魚体がボロボロにならないか?」
「ミサイル如きで傷つくようなタマやあらへん。気化爆弾クラスのもんぶち込んでようやく気絶するっちゅう寸法や」
「滅びの爆裂疾風弾並の爆弾使ってようやくトントンなのかよ……」
「……あの、つまり使うミサイルって」
「そうよぉ、サーモバリック♡」
「ああ、鮭だけにサーモンバリックってか」
「洒落が利いてますねぇうふふふふー」
二人は朗らかに笑って、
「……馬鹿なのか!?暗黒界は馬鹿なのか!?」
「なんで鮭相手に戦争おっぱじめてるんです!?」
「だって、あの鮭放っておいだっきゃ暗黒界滅ぼさぃるはんでさぁ……国家事業どすて認めらぃでら漁だす、わさ文句しゃべらぃでも……」
「いやどんだけ脅威なんだよジェノサイドキングサーモン」
「国家事業になるレベルって最早災害ですね」
「そごんどー事なっきゃ、ほんの200発撃とだけどーて心配無っきゃさ」
「お前らの方が暗黒界滅ぼそうとしてない?」
よもや人災である。
「ハッ!たかが撃墜漁如きでビビるとは、とんだチキン野郎どもだぜ!」
と、横付けしてくる漁船が一隻。その船首に立つ男が、二人を威嚇した。
その男は、ねじり鉢巻ききりりと巻いた、粋でいなせなデビルハンター。かつて環境を荒らしに荒らした悪魔族の風雲児。
「そんなに爆破がこえーんならよぉ!とっとと帰ってママの乳でも吸ってな!」
「パパの○○でもいーのよ?」
魔を刻むデモンスミスと、その相棒ラクリモーサである。
「あ、好き勝手にやりすぎたせいで制限カードになった人ですね」
「お前のせいでベアトリーチェが監獄行きになったからダンテが泣いてたぞ」
「好き勝手にデッキ融合した結果制限行きになった奴に言われたかねぇぜ!」
「それ俺じゃなくて烙印融合。それに悪いの喧嘩吹っ掛けてきた方だから」
「アルベルが襲わなければ烙印融合なんてできませんでしたからねぇ」
「くちゅん!」
どっかでアルベルがくしゃみをしたようだが、当然誰の耳にも届かない。
「と言うより、なんで貴方方がこんな所に居るんですか?」
「悪魔狩りにしても、暗黒界の連中は悪い奴じゃないだろ?トンマな奴らばっかだし」
「アルバスのおじき、そいつぁ、ワシらに失礼じゃねぇですかい?」
「ハッ!言われなくとも暗黒界には用はねぇ、エクソシスターのアマどもにすら獲物と思われない腑抜けどもなんざアウトオブ眼中!俺らの狙いはただ一つ!ジェノサイドキングサーモンだ!あの鮭獲って、大金を稼がなきゃならねぇんだよ!」
「何たる気迫……あのお方、言うに言われぬ理由があるのでは?」
したり顔でほざくレンジにアルバスはむかっとした。
ともあれ、デモンスミスは語り出す。かくも悲しき、漁へ繰り出す宿命を。
~悪魔狩りの男デモンスミスの口コミ~
From:バフォメット
★☆☆☆☆なんだよあいつ
レビュー:最悪な業者です。悪魔狩りを頼んだら、友達のガゼル君の家をぶっ壊しました。しかもその後のフォローも無し、全額弁償してもらいました。
From:エクソシスター・エリス
★☆☆☆☆美術館を壊されました。
レビュー:難しい仕事を請け負ったので、やむを得ず共同業務でご一緒させていただいたのですが、独断専行で仕事の邪魔をしたばかりか、依頼先の美術館を木っ端みじんにしてしまったのです。二度と仕事なんて頼みません。依頼料は全額弁償に使わせていただきました。
From:マスター・ヒュペリオン
★☆☆☆☆金返せ!
レビュー:我が天空の聖域をぶっ飛ばしおって!何が凄腕の悪魔狩りだ、恥を知れ!
「……こんな感じに各方面からクレームの嵐で、仕事すればするほど借金増えて、結果鮭漁に放り出されたってわけ」
「自業自得の極みだな」
「ったくよぉ!悪魔倒してやってんだから器物破損くらい目ぇ瞑れってんだよクソだらぁ!」
「プロならコンプラ守りましょうよ」
ぐうの音も出ねぇ正論である。ついでに自分の発言が恥ずかしくてレンジは小さくなっていた。
「ただジェノサイドキングサーモンを食べにきただけなのに、なんだこの状況……」
「ラクリモーサさん、あんなダメ男のどこがいいんですか?」
「ダメ男だからいいのよ。堕落する男ほど、魅力的な存在はないわぁ……」
悪魔ほどダメ男が好みな種族は居ない。人気の男は3Bなんだとか。
「ともあれだ!こっちは借金返済、そっちは鮭が食いたい!利害は一致してんだろ?ここは共同戦線といこうじゃねぇか!」
「何一つ一致してないんだが。弾避けにしようって魂胆が見え見えだ」
「逆に弾避けにしちゃいましょうか。そろそろ始まりそうですよ、撃墜漁」
気が付けば漁船と言う名の犠牲者候補がかなりの数になっている。同時に、水平線がこんもりと盛り上がった。
そして飛び出してくる魚影、魚影!魚影!!レンジが思わず「ギョエー!」と悲鳴を上げるくらいのジェノサイドキングサーモンが、津波のように迫っていた。
その面積、実に海1:鮭9。海面が鮭に覆い尽くされていた。
「……しゃけ……?」
「……しゃけですね……」
「……しゃけだぜ……」
「……しゃけなの……?」
「いやいやいや!ちょっとこれ多すぎでやんす!?こんな数の鮭が襲ってくるなんて見た事ないでやんすよ!」
レンジが大慌てで舵を切る。他の漁船も進撃の鮭に恐れおののき、一斉に逃げ出していた。
「おうこら逃げんなぁ!鮭如きにビビっちゃ制限カードの名が泣くってんだよぉ!」
「「海」の効果が乗ってるからレクイエム装備しても返り討ちに遭うだけよ!」
「アルバス!超融合はできませんか!?」
「「バスタード」にはなれるが、なった所で勝ち目はないぞ!」
漏れなく全員攻撃力2600、アルバスもデモンスミスも歯が立たない。
と、アショカ・ピラーの点滅と同時に、陸地からの攻撃が始まった。
この撃墜漁のために用意された、キャノン・ソルジャー200機が、サーモバリック爆弾搭載のミサイルを一斉に発射!これにて漁は終わりと思いきや。
ジェノサイドキングサーモンは一斉に一角獣のホーンを装備し、ビームライフルのSEと共に紫電のビーム弾を発射!爆弾を迎撃するどころか、漁船もろとも海面を抉り、陸地を爆撃した。
「あいつら体内にビームマグナムでも搭載してるのか?」
「掠っただけで漁船が吹っ飛びましたね。海水が電気分解されて塩素ガス出てます」
「NT-D使ってるようにも見えるぜ。額に装備した一角獣のホーンが割れてらぁ」
「対ニュータイプ用に開発されたのあの鮭?EXAMよりも過激じゃない」
「そんなのクゥーちゃん相手にだけしてほしいでごんす!本当に暗黒界が滅んでしまうでごんすよぉ!」
そんなやり取りをしている間にも、ジェノサイドキングサーモンのマグナム攻撃は続く。その最中、デモンスミスの目がぎらついた。
「……不自然だぜ、鮭どもから匂うぜ」
「丁度鮭とば炙ってたんですけど食べます?」
「おーこいつぁビールに合うよなぁ、先っちょ齧ってきゅーっと一杯やんのが最高!って何してんだてめぇ!」
「お腹空いちゃったのでおやつです」
「空気読めやボケが!……野生の鮭なら真っ先に目先の俺らをヤッてるはずだ。だが奴らは真っ先に、陸地のキャノン・ソルジャーを狙った」
「自分達にとって脅威となる物を認識しているのか?」
「いくらジェノサイドキングサーモンと言えど所詮は魚、そこまでの知能はねぇぜ。勿論、一角獣のホーンなんてブツを自分らで用意するのも不可能。加えてこの精密射撃、統率が取れすぎているぜ。つまり背後になんかが居る……ラクリモーサ!」
「既に位置は割れてるわ、いつでもどうぞ」
デモンスミスはラクリモーサから情報を受け取り、レクイエムをライフルモードに切り替えた。
群がる鮭の中から正確に目標をロックオン。あとは風向きとか船の揺れとかその他もろもろ懸念事項を勘でどうにかカバーして。
「FIRE!」
漁船が大きくノックバックする程の反動!ジェノサイドキングサーモンの隙間を縫い、指揮官を撃ち抜いた!
手ごたえあり。レクイエムから150mm弾の薬莢が排出されると同時に、首謀者が現れた。
「ふっふっふ……よくぞ我が姿を捉えた。だが残念だな陸の者よ!貴様らの攻撃なんぞ、この海洋最強の生物たる我には効かぬげふぅっ!」
「いや効いているだろばっちりと」
アルバスがツッコんだのは、胸にどでかい風穴を開けて吐血した、半魚獣フィッシャービースト。デモンスミスと同じくレベル6の魚族である。
「おのれぇ!戦車の砲弾よりデカい弾丸ぶち込みおってぇ!我じゃなかったら死んでたぞ!悪魔か貴様ぁ!」
「そこは素直に死んどけよ」
「「海」で攻撃力上がった分撃破されずに苦しみましたね」
「それとこの人悪魔だからむしろ誉め言葉よ」
「いやぁそれほどでもぉ(テレテレ)」
「褒めとらん!」
「フィッシャービースト!わてらの暗黒界になしてそないな事すんのや!」
話が進まない危機感からレンジが強引に割って入る。レンジに感謝しつつフィッシャービーストは咳払いし、仕切り直し。
「単刀直入に言おう、我ら魚族集団「アトランティスの集い」は!今日これより陸上生物の蹂躙を宣言する!まずは隣国、憎きクソ暗黒界を攻め落とし!全陸上生物どもに宣戦布告を果たすとしよう!」
「海洋生物による侵攻!?てか異常なまでに敵視されてないか?何したんだよ暗黒界!」
「いやいやいや!誤解でありんすよ!伝説の都さんとはモロッコとナイジェリアみたいな関係を保ってるからして!」
「激烈に仲悪いじゃない」
過去にレインがマリンセスライブで感激の末暴れた結果、隣国同士で国交断絶する程度の仲に発展したそうである。
あまりの冒涜に、エクレシアはフィッシャービーストへ問いかけた。
「なぜそんな暴挙に出るのですか!陸の民と手を取って共存する道はないのですか!」
「共存だと?貴様ら陸上生物は、我ら海洋生物を隷属させ!搾取しているだろう!例えば漁の聖女から漂うオイスターのスメル!牡蛎を使って自分達が汚した海の尻ぬぐいをさせ、用済みとなった牡蛎達は哀れにも殻をはぎ取られ、炭火に炙られ!煮えたぎる鍋に放り込まれ!挙句の果てには鉄板に押し付けて焼き土下座の強要!何が牡蛎入りお好み焼きだ、ヘラで頭を押し付けられ、灼熱に焼かれる牡蛎の気持ちを考えた事はあるのか!さらには鮭を目の前にして、同胞が亡骸の鮭とばを見せしめに、火あぶりの刑にするとは……我が同胞の貝権魚権を無視した愚行に走りながら共存を宣う図々しさ……厚顔無恥とはこの事よ!」
「……どうしましょ、私のおやつでヒートアップしちゃいました」
「だから、おやつは肉巻きおにぎりにしとけって言っただろ?」
口撃力2600に論破され、反論できない口撃力1500のエクレシアであった。
「聖女の非道、我らへの挑発行為とみなす!よって我が独断にて!まずは貴様から鮭の養殖用ペレットに加工してくれるわ!アトランティスの生け簀に放り込まれて食われるがいい!」
「お前らこそ自分らの同胞奴隷みたいに扱ってるだろうが」
「やかましい!人の揚げ足を取るなとお母さんから習わなかったか小僧!」
「俺母親居ないから教われないって」
「……あ、大変申し訳ございません……お悔やみ申し上げます……」
「いえ、こちらこそ気を使わせてしまいまして……」
ぺこぺこするフィッシャービーストとアルバス。根は真面目な魚族である。
「まぁそれはさておき!このジェノサイドキングサーモンの軍勢に太刀打ちできまい!加えて、駄目押しといこう!」
「!あれは!」
レンジが目を見開く。フィッシャービーストが取り出したのは、ほくほく甘くて美味しい、芋羊羹。
なんでそんなもんを出したのか、アルバス達が首をかしげる中。
「いただきます」
「食べた!?」
「見りゃ分かる」
「芋羊羹美味しそうですね」
驚くレンジ、呆れるアルバス、涎を垂らすエクレシア。三者三様の反応を見せる中、フィッシャービーストは大量の蒸気を吐き出して、突如巨大化を始めた!
その体躯、実に十倍。水位が急激に上がり、高波が漁船を襲った。
「なんででっかくなった!?あの芋羊羹に何が!」
「なぁるほど、ありゃあ「ジャイアントウイルス」入りの芋羊羹だぜ」
「戦闘で破壊されると、効果ダメージを与えつつ増殖するんだけど……モンスターが食べると「巨大化」の装備魔法の効果を付与するの」
「初耳っすよんな設定」
「効果付与だから「サイクロン」でも破壊できねぇ、厄介なブツ持ち込みやがってクソが」
「でもなんで芋羊羹に混ぜたんです?普通に飲み込めば……」
『ウイルス直に食べるとか不衛生でしょうがぁ!』
「ウイルス付着した芋羊羹も不衛生だろうが!」
『なんとでも言うがいい!これにて我が攻撃力は2倍!「海」の効果も相まって実に5200!かのアンチホープをも超える数値に恐れおののくがいい!それとサツマイモ農家さんありがとうございます』
「中途半端に礼儀正しくて調子狂うな……ともあれどうするか」
「攻撃力5200のフィッシャービーストに、攻撃力3300のジェノサイドキングサーモンの大群。「ミラジェイド」に変身しても勝てないですね」
マヌケな軍団ではあるが、デスピアの侵攻よりも強大な戦線である。
それを打破する手立ては、アルバスとエクレシアには無い。途方に暮れる二人だが。
「ハッ!この程度でびびってんのかガキども、情けねぇなぁ!」
「デモンスミス……けどお前だって、あの連中を相手にする力はないだろ?」
「関係ねぇよ、鮭如きに怯んでよぉ、悪魔狩りが名乗れるかってんだ!俺ぁ最後の最後まで抗うぜ!例えこの身朽ちようとも、首だけになってでも奴らを喰らいつくしてやるぜ!」
「それでこそ、私の見染めた男……惚れ直すわ、デモンスミス」
「っしゃあ!いくぜおr
デモンスミスに鮭のマグナム直撃!漁船もろとも藻屑と化した。
「そりゃああんだけ盛大に死亡フラグ立てたらそうなるよな……」
「さよならデモンスミスさん……安らかに眠れないでしょうけどおやすみなさい……」
地獄の底まで借金取りが追いかけてきそうである。
『ふはははは!なんか「海」の調子が良くて鮭達も喜んでおるわ!さぁいざ行かん鮭達よ!暗黒界を滅ぼすのだ!』
巨大化したフィッシャービーストが進撃し、漁船を蹂躙していく。ジェノサイドキングサーモンのマグナムによる弾幕もあり、暗黒海は地獄絵図と化していた。
「ひぃぃっ!ど、どうするアイフルアルバスしゃん!?」
「お前余裕あるだろ。……一応、打開策は見つけたよ。エクレシア、あれをやろう」
「あれですか……わかりました!アルバスを信じます!」
二人は手を取り合い、海に向かってジャンプ!融合するかと思いきや。
「俺と!」
「私で!」
『オーバーレイネットワークを構築!』
まさかのエクシーズ召喚!二人が重なり呼び出すは、レベル4モンスター×2で召喚される汎用エクシーズ。
『エクシーズ召喚!いでよ、ヘルフレイムバンシー!』
「ここでっ、ヘルフレイムバンシーだとぉっ!?」
『うつけが!「海」の勢力下で炎族を出すとは愚の骨頂!』
『それはどうかな?効果発動!』
オーバーレイユニットを消費し、ヘルフレイムバンシーのサーチ効果を発動。
二人の呼び声に応じ、空から「燃える藻」が落下した!
続けざま、もう一体の「燃える藻」を落下させる。するとフィッシャービーストの体が見る間に癒えていく。
『焼きが回ったか!墓地に落ちたら相手ライフを回復する紙屑が、ごっつあんです!』
『まだわからないか?「燃える藻」で回復したって事は、何が起こる?』
「……はっ!そうか!「巨大化」の効果を付与されたって事は、相手のライフを上回ってしまうとデメリットが発生する!」
すっかり解説役に回ったレンジの言う通り、「巨大化」で攻撃力が倍化するのは「相手よりもライフが低い時」。
くしくも、デモンスミスに撃たれてライフが減った事で、フィッシャービーストは「巨大化」の恩恵を受けていた。それを「燃える藻」の回復効果によって治療されたがために、攻撃力は半減する。
体がしぼみ、フィッシャービーストは攻撃力1300へと減少。アルバスとエクレシアは分離し、サムズアップで称え合った。
「ぐおぉぉぉっ……なんで藻なのに炎族なんだあいつぅぅぅ……!だが、まだだ!まだ終わってない!この鮭の軍勢を相手に成す術なぞあるものか!」
「ある方は言いました、「海」の攻略には、遊戯王原作9巻を読め、と」
エクレシアの言葉にフィッシャービーストははっとする。遊戯王原作9巻と言えば、かの有名な梶木漁太戦が描かれた一冊。
「ひっひっひ、ワシらの漁船に何が搭載されとるかわかっておるかぁ?装備魔法を持ってくる「アショカ・ピラー」じゃぞ?」
「海位が上がっているのに気付かなかったのは致命的だったな、空を見てみろよ」
アルバスが指差す先には、装備魔法「魔性の月」。月の引力によって、海位が普段より上昇していたのだ。
全てを察し、フィッシャービーストは青ざめる。だが、
「か、肝心の月を破壊する方法なんて……!」
『あるんだなぁこれが!』
陸地からの超長距離狙撃が「魔性の月」に直撃!粉々になった月が降り注ぐ中、フィッシャービーストは見た。
ラクリモーサと融合した、「刻まれし魔ラクリモーサ」の姿を。
「やっぱ生きてたか」
『ハッ!あの程度で死ぬわきゃねーぜ!寸での所でデビルトリガー引いてやったのよぉ!』
「さて問題です。月が壊れた後の「海」は、どうなるでしょう」
一気に海が引き、戦線を上げすぎたジェノサイドキングサーモンが陸地に挙がってしまう。辛うじて海に残っていた鮭達も引き潮に呑まれて沖へ流れ、鮭軍団は壊滅した。
フィッシャービーストは陸地へ向かうも、ジェノサイドキングサーモンは全滅している。いかに鮭と言えど、海から上がればただの魚。
「これでお前の野望はついえたな、フィッシャービースト!」
打ちひしがれるフィッシャービーストに、レンジは勝利宣言を下した。
「何美味しいどこ取りしてんだボケが」
「「アルビオン」の餌にしてやろうかこいつ」
「「暗黒を吸い込むマジックミラー」に放り込んでやろうかしら」
「「アショカ・ピラー」の効果使ったのおいどんですたい、手柄は渡さんどす」
「……こんなボケっぱなしの奴らに、我は負けたのか……」
「人の事は言えないと思いますけど、フィッシャービーストさん、どうして貴方は暗黒界を攻め入ろうとしたのですか?国交断絶をしている以上、このような事をするのは余計に両国の亀裂を深める行為ですけど」
「……負けられんのだ、我には、Xで支持してくれる200人のフォロワーが居る……我の思想に賛同してくれる同志がいる以上!革命を起こさねばならんのだ!」
「え?その程度のフォロワーでこんな事を?」
「あー、時々居るぜぇ。ほんの数百人のフォロワーでインフルエンサー気取りに行動しやがるくるくるパーな環境活動家。瞬間接着剤で道路とケツくっつけた馬鹿どもとなんら変わんねぇじゃねか」
「何を!」
「ちなみにこの人40万フォロワー居るから、反論しても自分が惨めになるだけよ」
「よ、よんじゅうまん……!?」
殆どアンチフォロワーだけれども。ラクリモーサはあえて黙っておいた。
「知名度でも腕っぷしでも負けだな。これに懲りたら、もうこんな事をするのは止めろよ?」
「フィッシャービーストさん、とっても真面目な方じゃないですか。でしたら、もっと別の方法で革命を起こすべきですよ。平和的にアトランティスと暗黒界の国交を戻すとか」
「……確かに、そうだな。もっと建設的に動くべきだった、我が間違っていたようだ」
「では、打ち上げられた鮭は放置したら環境問題になるので皆で処理して構いませんね?」
「ああ、やってくれ。……あれ?」
なんかしれっと言いくるめられたような気がしたフィッシャービーストさん、正解です。
てなわけで、アルバスとエクレシア、ついでにデモンスミス組もありがたく鮭にありつけた。
騒ぎを起こした詫びとして、フィッシャービーストが腕を振るう事に。
スタイリッシュな包丁さばきで鮭を見る間に三枚おろし。鍋に焼きにちゃんちゃん焼き、フライにムニエル香草揚げと、絶品料理が山ほど出来る出来る。
「ダブルスタンダードにも程が無いか?」
「まぁまぁ、美味しいジェノサイドキングサーモンを食べられるんですからいいじゃないですか♪見てくださいよこの焼き目……サーモン色に輝いてますよ!」
「サーモンだからな」
「俺らはここらで上がるぜぇ、こんだけ獲れりゃあ借金の半分は返せ「5分くらいは返せるわね」……先はなげぇぜ」
「どんだけ借金あるんだよ」
「カオス・ソルジャー ステンレス製 URの五乗くらい」
「国家予算並みですねぇ」
一生かけても返せやしねぇ。アルバスとエクレシアは思った。
「ともあれこれにて大団円って事で!さぁ食べやしょう!」
『いただきまーす!』
エクレシアが至福の瞬間を過ごそうとした瞬間。
彼女の箸から鮭を掠め取り、デモンスミスから鮭を奪った、謎の集団が現れた!
「あ、あれ?」
「海から箸に鮭を加えたねぇ、って事でこれは没収でーすwww」
そんな理不尽を振りかざすのは、デッキに触らせませんが公約の「灰流うらら」!
「陸地に落ちた鮭で料理を発動したなぁ、って事でこれは無効でーっすwww」
墓地で発動した効果を無効にする「スカル・マイスター」!
「同じく陸地に落ちた鮭に触れようとしたねぇ、って事で食事発動無効でーすwww」
ダメステでも使える「屋敷わらし」!
「クエーっwww」
墓地ならなんでも除外しちゃう「D・Dクロウ」!
手札誘発の登場により、エクレシアが楽しみにしていたジェノサイドキングサーモン料理は瞬く間に奪われていく。
「ファーwww人が苦労して取ったアドを無効にすんのサイコーwww」
「ねぇねぇどんな気持ちwwwコンボの準備が台無しにされたのどんな気持ちぃーwww」
「あーおいちーねぇwwwハイエナ行為しゃいっこーwww」
「クェーwww」
煽りに煽り、鮭を食い散らかす手札誘発ども。エクレシア達はぴきりとひきつり、
「……成程、流石は現代遊戯王……」
「目先のフィールドにばかり目ぇ向けてたら、足元掬われるって事DEATHねぇ……」
「ハッ……肝の据わったゴミってぇのはどこにでもいるもんだぜぇ……」
「折角整えた我が鮭フルコースコンボも、たった一枚の手札誘発でおじゃんとな……」
『よろしい、ならば戦争じゃあ!』
手札誘発軍VSエクレシア軍団、仁義なき戦いが幕を開けた!
「……アルバス君」
「……なんだ?」
「……焼肉行く?」
「……奢りなら」
「いいよ、行こ」
阿鼻叫喚と化した浜辺を諦めの境地で眺めた後、二人は焼き肉屋へ向かった。
暫くは、鮭を食べるのはシャケよう。
ラクリモーサと牛タンを焼きながら、アルバスは疲れた顔で締めくくった。
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