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HOME > 遊戯王SS一覧 > 賢者の石 孤独の王

賢者の石 孤独の王 作:シオン

とある国。絶え間なく戦争を続け国は荒れ果て、川は兵の血で染まり山は焼かれ崩れ落ち、草原は腐臭にまみれ沼に沈んだ。
もはや国に民は無く、兵も無く。朽ち果て呪いにまみれたこの土地に手を出す者も、手を貸す者も居なかった。
ただ、崩れ行く城に。その瓦礫の玉座に、男は居た。
男はその国の民ではなかった。その首や手足には奴隷の証である鉄の輪が嵌められていた。
男が生き残れたのはなんということもない。ただ、運が良かっただけだ。
運良く市街戦に主人が巻き込まれ奴隷契約が無くなり、運良く逃げ惑う民に倒され、踏まれ、運良く敵兵に死骸と間違えられた。そして運良く、男には魔術の才能があった。
男は身を隠し、敵が去るまで耐えた。瓦礫に、井戸に、汚水に。とにかく生きるために、生き残るために。
街に火が放たれた。住人は奴隷として連れていかれ、遊びで殺され、犯され。あらゆる暴力が国を蹂躙した。
男は王城を目指し歩いた。王城ならば、この火炎地獄から逃げ切れると信じて。
兵は全て死に絶えていた。カーペットは赤黒く血で染まり、廊下の金品は根こそぎ奪われていた。
男は城を歩き回り、大扉にたどり着いた。男は本能でここは安全だと理解した。魔術により、炎や毒ガスから身を守る結界が張られていた。
男が扉を開けると、そこは玉座の間であった。2つの玉座には、無惨な姿の男女が無数の槍に貫かれ絶命していた。
その傍ら。幼き王女が倒れていた。
王女は全身を切り刻まれ、しかしなおも生きていた。
王女の胸で輝く宝石。それこそは魔術の極み。「賢者の石」であった。
「賢者の石」は持ち主の魔力を使い、様々な効果をもたらす。
王女のそれは、「治癒」だ。
全身を切り刻まれようと切り落とされようと、時間をかけて傷を治す。血を失おうともそれを補い、失った部位を「魂の記憶」から読み取り再生させる。
死ぬことは許されない呪い。いかなる外傷も彼女には死に至らしめることはできないのだ。
男が王女に近付くと、王女がこちらを睨み付ける。
何かを喚いているが、王女は喉を潰されている。歯も全て引き抜かれていた。
だが、その黒く濁りきった目。男は理解した。この王女もまた、この世に絶望した、「こちら側」の人間であると。
美しかった。顔ではない。肢体ではない。その憎悪が、怨嗟が。男の心を震わせた。
だから。男はフードをとり、王女の「賢者の石」に手をかざす。
「大丈夫。美しい貴女。おやすみ、よい夢を」
賢者の石は王女の体を離れ、男の周囲に漂う。
王女は激痛に呻くと、そのまま息絶えた。
きっとこれで良かったと、男は玉座の裏の地下室への階段を降りていった。
そして、大戦の時代が終わった。地図も大きく変わった。
山が消え、荒野が増え、それでもなお生き残った国は栄え、争いを忘れ平和を享受する。
だが、この男は忘れてはいない。あの大戦を。あの惨劇を。
復讐ではない。罪罰ではない。
王女のためではない。国のためではない。
ただ、美しかった。あの瞳が。あの闇が、深淵が。
だから、それが満ちた世界はきっと素晴らしく美しいのだと気がついただけだ。
孤独なる王、「賢者の石」の王、名をクロウリー。
禁書の6つの賢者の石を従え、新たなる「賢者の石」すら造りだし、石人形の兵器を連れて王は動き出す。
世界を美しくするために。
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シオン
このSSは自分が投稿している「賢者の石」シリーズの裏設定になります。OCGにもクロウリーが居ますが、SSのクロウリーは別人です。奴隷の男が名前を借りているだけです。人の優しさに触れることが出来なかった男は愛を知ることが出来るのでしょうか。(ネタバレ:出来ない) (2021-07-29 02:42)
蒼奏
なんかとても重い内容ですが、面白いですね。未だ謎に包まれた「賢者の石」の正体、謎の男、クロウリーはいったい何者なのか。ダークファンタジーらしくて、自分好みの設定ですね。シリーズじゃないってことはこれで終了ですか?続き、気になるなぁ。
|д゚)チラッ (2021-07-29 16:03)

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