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Lucia 幻想麗団の始まり 作:ター坊
注意:
①オリカ設定のお話です。
②デュエル描写一切ありません。
③絵本風のシンプルな文です。
それでもOKな方はどうぞ!
ここは天界。地上の人間界を守護し、魔界の者を撃退する任を帯びた天使達が常駐する場所です。
そこに一人の天使がいました。その名はルシア。これから語られるのは彼女の物語。
ルシアは天使達の教官の立場です。下級の天使達に悪と戦う術を教えたり、困窮する人間界の救済の仕方を教えたりしていました。しかし、そんな彼女も悩んでいました。
いつまでも争いが絶えない人間界。
優劣や貧富で差別する人間の性(さが)。
そこに付け入る魔界の者たち。
これらを根本的に解決するにはどうすれば良いか。自分が教えている救済は、はっきり言えばほんの一時しのぎでしかない。いくら救済を説いても人々から争いや差別が無くならず、魔界も増長するばかりです。
そんなある日、ルシアは閃きました。
争いや差別が無くならないなら、それを行う者を全て粛清すれば良いのではないか。そうすれば世界は幸福に満たされる。
ルシア自身も極論と思いましたが
助けて!
死にたくない!
死なないでくれ!
そんな地上の人間界からの嘆き、悲しみ、泣き叫ぶ声がその極論を後押ししました。
しかし、全てを粛清するとは簡単なことではありません。魔界の王や人間界の英雄など、強大な力を持つ者がいるためです。
そこでルシアはある伝承を思い出しました。神々に伝わる最強の聖槍です。これを持つ者には絶大な力が宿り、どんな者も討ち祓うとされています。
ルシアは思いに駆られるまま神々の宝物庫へ行き、その聖槍を持ち出そうとしました。しかし、そんなことは神々に見透かされており、あっという間に捕まってしまいました。
ルシアは裁判に掛けられました。ルシアは訴えます。
「私は人間界を良くしようと、幸せなものにしようとしただけです!力が無ければ何も守れません!何かを守るために強くなろうと、力を得ようというのは間違っているのでしょうか!?」
しかしそんなルシアの訴えは退けられ、天界からの追放を言い渡されました。穢れを知らない美しい純白の翼は黒く染められました。
ルシアは地上の人間界に降ろされましたが、途方に暮れました。黒い翼は闇に堕ちた者という烙印を意味しており、もはや天界には帰れません。人間界でも異端の者・不吉の象徴として忌み嫌われてしまいます。どうやって人間界で生きていこうかと思案していると村が見えました。しかしその村、見れば燃えているではありませんか!ルシアは急いで飛びます。
村に着くと惨状はすぐ分かりました。どうやら山賊に襲われているようです。
「貴方達!おやめなさい!」
ルシアは山賊達に一喝します。ルシアは天界から追放されたとはいえ力は健在、その辺の山賊程度相手にもなりません。武器を取り、魔法を駆使して山賊を撃退しました。これが私の生き方、人々の笑顔が溢れるだろう、ルシアはそう思いました。
カツン
ルシアは何か固いものをぶつけられた感覚がしました。振り返ると子どもが石を投げたようです。
「かえして…。おうち、かえして!!」
泣きじゃくる子どもの後ろを見ると壁に大きな穴が空いた家がありました。そう、ルシアの攻撃の流れ弾が家に当たったのです。それだけではありません。
抉られた畑
壊された水車
崩れた家畜小屋
どれもルシアの攻撃によるものです。無論、ルシアはわざとやった訳ではありません。ただルシアの力が強すぎた故に勢い余ってこんな惨事になったのです。
村人達はルシアに感謝するどころか怒りを露にします。
「お前が来なければ、ここまで酷いことにならなかった!」
「畑も家畜もダメになった今、どう暮らせばいいんだ!」
「ちくしょう、化け物め!」
「化け物め!」
「化け物!」
「化け物!」
ルシアは黙って飛び立ちました。頬を涙に濡らしながら。
ルシアはある山の山頂に洞窟を見つけてそこに入り、膝を抱えて泣いていました。
ただひたすら着けてきた力―人間界を守る、そこに暮らす人間の幸福を与えるために着けた力なのに。
大き過ぎる力は守るべきものすらも傷つけてしまう。
それを肌身に感じていました。また、きっと最強の聖槍を手にしたら同じことが起こっていただろうとも。
ルシアの頭の中であの村人達の声がこだまします。
「化け物め!化け物め!化け物め!化け物め!化け物め!」
そうだ…。私は化け物だ…。力を求めた、愚かな化け物だ……。ルシアはそう思いながら泣き続け、いつしか疲れて眠ってしまいました。
人間界に追放されて半月ほど経ったある日のことです。山の麓から大きな音がしました。ルシアは人間同士の戦争かと思いましたが違いました。目を凝らすとどうやら祭のようです。ルシアは不思議に思いました。こんな時期に祭られるような神様に心当たりがないからです。彼女は魔法の力で姿を消してその祭に行きました。
祭の会場に着くと人々が楽しげな表情である建物に入っていきます。簡単に組み上げられた建物、古めかしい看板には『FANTASY CIRCUS』と書かれています。ルシアもそこに入ってみました。
建物の中は薄暗かったのですが、中央にスポットライトが当たり、そこに一人の女性がいました。その女性が言います。
「皆様、ようこそいらっしゃいました!私達が創る夢の世界、どうぞご覧ください!」
女性がそう叫ぶと拍手喝采、人々は沸き立ちます。そして陽気な音楽と共に夢の世界が始まりました。
おどけた仕草の道化師
猛獣を従えて操る男性
魔法(とは言っても本物ではない)を披露する女性
そしてそれらを見るたびに笑い、喜び、感動する観客達。
ルシアにとってそれは衝撃的な光景でした。彼らは特殊な訓練を受けたであろうが、その身と特技のみを使って、ここにいる全員を幸せにしている。それはかつて、ルシア自身が成し遂げたいと思った目標そのものでした。ルシアが眼を輝かせていると観客の話が耳に入ってきました。
「あの団長の姉さん、べっぴんさんだな」
「ああ。戦争でダンナ亡くしたのに、気丈なもんだよな」
ルシアは驚きました。先程の開幕を宣言した女性は最愛の人を亡くしたというのです。
しばらくして夢の世界は幕を閉じました。
ルシアは自分の住処の洞窟に戻っていました。あの感動がまだ心に響いています。観客達の笑顔と歓声が今も目に、耳に焼き付いています。
邪魔者を力で滅ぼすわけではなく、自分の世界を創って人々にそれを見せて幸せにする。そっちの方がずっと良い。
ルシアはそんな風に考えていました。
その翌日。ルシアは決心しました。
私もあんな風に生きてみよう。何も滅ぼすこともなく、人々に幸福を与えられる存在になろう。
それはルシアが立てた新しい目標。ルシアは洞窟から飛び立ちました。
数年後。ルシアはサーカス集団『幻想麗団(ファンタジック・スターズ)』を結成して3年を迎えました。ルシアの元には過去に様々なことがあった者が集まりました。
ある者は人々から忌み嫌われ
ある者は仲間に裏切られ
ある者は変わらぬ世界に悲嘆して
ある者は悪事の果てに全てを失って
ルシアには考えがありました。
きっと、悲しみや辛さを知っている者が本当の幸福を知っている。
あの日見た、最愛の人を失ったという女性のように
最高の幸福を与えられる存在になれると
ルシアはその考えのもとで団員を集めたのです。
今宵も幻想の舞台の幕が上がります。
「ご来場の皆様。私達、幻想麗団の創る世界、どうぞお楽しみに下さい」
ルシアの創る世界はこれからも人々を魅了し、最高の幸福を与えてくれるだろう。
①オリカ設定のお話です。
②デュエル描写一切ありません。
③絵本風のシンプルな文です。
それでもOKな方はどうぞ!
ここは天界。地上の人間界を守護し、魔界の者を撃退する任を帯びた天使達が常駐する場所です。
そこに一人の天使がいました。その名はルシア。これから語られるのは彼女の物語。
ルシアは天使達の教官の立場です。下級の天使達に悪と戦う術を教えたり、困窮する人間界の救済の仕方を教えたりしていました。しかし、そんな彼女も悩んでいました。
いつまでも争いが絶えない人間界。
優劣や貧富で差別する人間の性(さが)。
そこに付け入る魔界の者たち。
これらを根本的に解決するにはどうすれば良いか。自分が教えている救済は、はっきり言えばほんの一時しのぎでしかない。いくら救済を説いても人々から争いや差別が無くならず、魔界も増長するばかりです。
そんなある日、ルシアは閃きました。
争いや差別が無くならないなら、それを行う者を全て粛清すれば良いのではないか。そうすれば世界は幸福に満たされる。
ルシア自身も極論と思いましたが
助けて!
死にたくない!
死なないでくれ!
そんな地上の人間界からの嘆き、悲しみ、泣き叫ぶ声がその極論を後押ししました。
しかし、全てを粛清するとは簡単なことではありません。魔界の王や人間界の英雄など、強大な力を持つ者がいるためです。
そこでルシアはある伝承を思い出しました。神々に伝わる最強の聖槍です。これを持つ者には絶大な力が宿り、どんな者も討ち祓うとされています。
ルシアは思いに駆られるまま神々の宝物庫へ行き、その聖槍を持ち出そうとしました。しかし、そんなことは神々に見透かされており、あっという間に捕まってしまいました。
ルシアは裁判に掛けられました。ルシアは訴えます。
「私は人間界を良くしようと、幸せなものにしようとしただけです!力が無ければ何も守れません!何かを守るために強くなろうと、力を得ようというのは間違っているのでしょうか!?」
しかしそんなルシアの訴えは退けられ、天界からの追放を言い渡されました。穢れを知らない美しい純白の翼は黒く染められました。
ルシアは地上の人間界に降ろされましたが、途方に暮れました。黒い翼は闇に堕ちた者という烙印を意味しており、もはや天界には帰れません。人間界でも異端の者・不吉の象徴として忌み嫌われてしまいます。どうやって人間界で生きていこうかと思案していると村が見えました。しかしその村、見れば燃えているではありませんか!ルシアは急いで飛びます。
村に着くと惨状はすぐ分かりました。どうやら山賊に襲われているようです。
「貴方達!おやめなさい!」
ルシアは山賊達に一喝します。ルシアは天界から追放されたとはいえ力は健在、その辺の山賊程度相手にもなりません。武器を取り、魔法を駆使して山賊を撃退しました。これが私の生き方、人々の笑顔が溢れるだろう、ルシアはそう思いました。
カツン
ルシアは何か固いものをぶつけられた感覚がしました。振り返ると子どもが石を投げたようです。
「かえして…。おうち、かえして!!」
泣きじゃくる子どもの後ろを見ると壁に大きな穴が空いた家がありました。そう、ルシアの攻撃の流れ弾が家に当たったのです。それだけではありません。
抉られた畑
壊された水車
崩れた家畜小屋
どれもルシアの攻撃によるものです。無論、ルシアはわざとやった訳ではありません。ただルシアの力が強すぎた故に勢い余ってこんな惨事になったのです。
村人達はルシアに感謝するどころか怒りを露にします。
「お前が来なければ、ここまで酷いことにならなかった!」
「畑も家畜もダメになった今、どう暮らせばいいんだ!」
「ちくしょう、化け物め!」
「化け物め!」
「化け物!」
「化け物!」
ルシアは黙って飛び立ちました。頬を涙に濡らしながら。
ルシアはある山の山頂に洞窟を見つけてそこに入り、膝を抱えて泣いていました。
ただひたすら着けてきた力―人間界を守る、そこに暮らす人間の幸福を与えるために着けた力なのに。
大き過ぎる力は守るべきものすらも傷つけてしまう。
それを肌身に感じていました。また、きっと最強の聖槍を手にしたら同じことが起こっていただろうとも。
ルシアの頭の中であの村人達の声がこだまします。
「化け物め!化け物め!化け物め!化け物め!化け物め!」
そうだ…。私は化け物だ…。力を求めた、愚かな化け物だ……。ルシアはそう思いながら泣き続け、いつしか疲れて眠ってしまいました。
人間界に追放されて半月ほど経ったある日のことです。山の麓から大きな音がしました。ルシアは人間同士の戦争かと思いましたが違いました。目を凝らすとどうやら祭のようです。ルシアは不思議に思いました。こんな時期に祭られるような神様に心当たりがないからです。彼女は魔法の力で姿を消してその祭に行きました。
祭の会場に着くと人々が楽しげな表情である建物に入っていきます。簡単に組み上げられた建物、古めかしい看板には『FANTASY CIRCUS』と書かれています。ルシアもそこに入ってみました。
建物の中は薄暗かったのですが、中央にスポットライトが当たり、そこに一人の女性がいました。その女性が言います。
「皆様、ようこそいらっしゃいました!私達が創る夢の世界、どうぞご覧ください!」
女性がそう叫ぶと拍手喝采、人々は沸き立ちます。そして陽気な音楽と共に夢の世界が始まりました。
おどけた仕草の道化師
猛獣を従えて操る男性
魔法(とは言っても本物ではない)を披露する女性
そしてそれらを見るたびに笑い、喜び、感動する観客達。
ルシアにとってそれは衝撃的な光景でした。彼らは特殊な訓練を受けたであろうが、その身と特技のみを使って、ここにいる全員を幸せにしている。それはかつて、ルシア自身が成し遂げたいと思った目標そのものでした。ルシアが眼を輝かせていると観客の話が耳に入ってきました。
「あの団長の姉さん、べっぴんさんだな」
「ああ。戦争でダンナ亡くしたのに、気丈なもんだよな」
ルシアは驚きました。先程の開幕を宣言した女性は最愛の人を亡くしたというのです。
しばらくして夢の世界は幕を閉じました。
ルシアは自分の住処の洞窟に戻っていました。あの感動がまだ心に響いています。観客達の笑顔と歓声が今も目に、耳に焼き付いています。
邪魔者を力で滅ぼすわけではなく、自分の世界を創って人々にそれを見せて幸せにする。そっちの方がずっと良い。
ルシアはそんな風に考えていました。
その翌日。ルシアは決心しました。
私もあんな風に生きてみよう。何も滅ぼすこともなく、人々に幸福を与えられる存在になろう。
それはルシアが立てた新しい目標。ルシアは洞窟から飛び立ちました。
数年後。ルシアはサーカス集団『幻想麗団(ファンタジック・スターズ)』を結成して3年を迎えました。ルシアの元には過去に様々なことがあった者が集まりました。
ある者は人々から忌み嫌われ
ある者は仲間に裏切られ
ある者は変わらぬ世界に悲嘆して
ある者は悪事の果てに全てを失って
ルシアには考えがありました。
きっと、悲しみや辛さを知っている者が本当の幸福を知っている。
あの日見た、最愛の人を失ったという女性のように
最高の幸福を与えられる存在になれると
ルシアはその考えのもとで団員を集めたのです。
今宵も幻想の舞台の幕が上がります。
「ご来場の皆様。私達、幻想麗団の創る世界、どうぞお楽しみに下さい」
ルシアの創る世界はこれからも人々を魅了し、最高の幸福を与えてくれるだろう。
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