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HOME > 遊戯王SS一覧 > 遊戯王D.C③

遊戯王D.C③ 作:ゆー

黄金の龍と鋼鉄の拳







希空との決闘を終えやや時間を持て余した俺達は、人集りができているデュエルコートへ向かった。


そしてその場には、異様な威圧感を放つ強大にして巨大な黄金の龍が鎮座していたのであった。










place:人集りができてるデュエルコート
(何だあのモンスターは、あの威圧感は…!)


人集りができていたデュエルコートに何の気なしにやってきた俺は、その視界に映る黄金の龍型のモンスターに気圧されていた。




デュエルモンスターズにおいてドラゴン・龍系のモンスターは至って普遍、珍しくない。ましてや創札が普及してからは各決闘者によって様々なドラゴン系モンスターが創り出されている。


ドラゴンメイドのような擬人化されたかわいいモンスターもいれば、真竜皇のような禍々しい見た目をしたモンスターもいる。


だがそれはあくまで見た目の話だ。どんなに見た目が恐ろしいモンスターがいたとしても、心底怯えたり萎縮するようなことはない。




だがしかし、それが創札されたオリジナルのカード、その中でも所謂エース級の、己が魂を込めて創札されたカードであれば話は変わってくる。



先程の決闘で希空のエースカードであるヒメと相対したとき、俺はその独特の雰囲気に背筋がゾクりとする感覚からそれがエースだと悟った。
希空も俺のデッキのエースであるミルダムがPスケールに現れたとき何かを感じ取ったのか、何を言わなくてもそれがエースであると見抜いた。



そう、創札されたオリジナルのエースカードとは、他のカードとは一線を画する雰囲気を持っているものなのである。



だが俺はこんな威圧感を、決闘相手として相対している訳でもないのにまるで心臓を掴まれたかのような圧迫感を覚えるモンスターに遭遇することは初めてであった。





「あ、あのモンスター、なんかすげぇな」
俺は独り言のように、その畏怖の感情から言葉を零したかのように呟く。



「っ!」
「そ、そうだね」
「広のミルダムを見た時も独特のプレッシャーを感じたけど、ここまでのものは…」


希空はこのデュエルコートに着いてからあの黄金の龍に目を奪われていたが、俺の言葉を聞くと我に返ったかのような反応を見せた。



「…とりあえず、ここじゃあ他の奴らの後ろからでコートの全貌が見えずらいし、見えやすい位置に移動すっか」


俺の提案に希空は「そうだね」と答え、俺達はコートがより見えやすい位置へと少しだけ移動する。




そして改めてコートへ目を向けると、コートには二人の男子生徒が対峙していた。



「あれは……えーっと…?」



二人の顔が見据えるが誰と誰なのか見当がつかず、俺の頭の上にはハテナマークが浮かぶ。



いやだって!最初の自己紹介のとき緊張してて周りを見る余裕なかったから他の奴の自己紹介なんて聞いてないもの!まるでピンと来ない!

アイツらがどんな奴なのか全っ然分からん!



「…東風くんと朝日くんだね」
「あの黄金の龍を使っているのが東風 京太郎くん。それに相対してるのが朝日 凱くん」




東風 京太郎(こち きょうたろう)
性別:男性
使用テーマ:勝負石(しょうぶせき)
染めた金髪に茶色の瞳を持つ背の高い少年。創札するカードは他の人からすると異質なものの強力なカードが多く、それらを十全に使いこなす実力は本物。




朝日 凱(あさひ がい)
性別:男性
使用テーマ:超合機(ちょうごうき)
明るい茶色の髪に朝焼けのようなオレンジがかった瞳を持つ少年。少しお調子者な気質があるが頼れる兄貴分な性格。




「おお、流石希空さん。頼りになりますなぁ」


「それほどでもねっ!」
「いつ誰と話してもスムーズに会話できるようにクラスメイトの名前とか自己紹介の内容はもう全て頭に入ってるのさ!」


「お、おう」



すんげぇ自慢げだけど今日一緒になったばっかのクラスメイトのフルネームと自己紹介の内容を全部覚えてるのは流石に怖いからね???

しかもこれ要するに『不意にクラスメイトと話すことになった場合でも友達になれる準備しとこ〜』って感じでしょ?健気な努力すぎる…。


ホントこの子友達に飢えてたんだなぁ…





気を取り直して、今のこの決闘の状況を確認する。


ターンは5ターン目、東風のターン。東風のフィールドには黄金の龍と永続魔法、フィールド魔法がそれぞれ1枚ずつ見える。


対して朝日のフィールドにはマントをはためかせた小柄な少年のようなモンスターが1体に永続魔法が1枚、伏せカードが2枚といった布陣だ。




東風 京太郎
LP8000
手札:1枚
バトルゾーン:モンスター1体
魔法・罠ゾーン:永続魔法1枚
フィールド魔法ゾーン:フィールド魔法1枚




朝日 凱
LP3200
手札:1枚
バトルゾーン:モンスター1体
魔法・罠ゾーン:永続魔法1枚
        伏せカード2枚
フィールド魔法ゾーン:なし




LPは朝日だけ減っている状態で、東風のターンということもあり状況としては東風が優勢。ただ、伏せカードや手札のカードによっては逆転もありえる。といった感じだ。



「どれどれ、見えてるカードも確認してもうちっと状況を整理しましょかね〜」と、俺がそれぞれのカードの効果を確認しようとすれば、決闘の方も展開が動き始めた。









「──俺は《四風龍の勝負石》のX素材を4つ取り除き効果を発動。取り除いた素材の数だけカードをドローし、自分か相手の墓地からカードを1枚四風龍のX素材とする」
「よって4枚ドローし、お前の墓地の《超合機-ジオバニッシャー》を素材にする」


東風はデッキからカードを4枚もドローするとそのカードらに目もくれず朝日を指差しカードを指名する。



「そしてドローしたことによりフィールド魔法《勝負石ノ草原》と四風龍の③の効果が適用される」
「まず勝負石ノ草原の効果で草原自身にカウンターをドローした枚数分、4つ乗せる」




勝負石ノ草原
フィールド魔法
①このカードがフィールドに存在する限り、自分または相手がデッキからカードをドローする度、このカードにカウンターを1つ置く。
②自分フィールドに存在する「勝負石」モンスターの攻撃力・守備力はこのカードに置かれているカウンターの数×100アップする。
③自分フィールドの「勝負石」カードが破壊される場合、代わりにこのカードに置かれているカウンターを3つ取り除くことができる。
④このカードが存在する限り、自分の「勝負石」モンスターを召喚するためのリリースは必要なくなる。




勝負石ノ草原
カウンター:5→9




「その次に四風龍の③の効果でドローしたカード1枚につき相手フィールドのカードを1枚破壊する」
「お前のフィールドのカードは4枚。つまり全てのカードが破壊される。小四喜(リトル・ウインド)」




四風龍(コウリュウ)ノ勝負石
攻撃力3600/守備力1200
ランク:7
属性:光属性
種族:幻竜族
Xモンスター
レベル7モンスター×4
①1ターンに1度、相手が魔法カードを発動した場合に発動できる。その発動を無効化し破壊する。
②1ターンに1度、このカードのX素材を任意の枚数取り除いて発動できる。取り除いた数だけデッキからカードをドローする。その後、自分・相手の墓地に存在するカードの中からカード1枚をこのカードの下に重ねてX素材にする。この効果は相手ターンにも発動できる。
③自分がデッキからカードをドローする度に1枚につき相手フィールドのカード1枚を選んで破壊する。




東風が技名を宣言すると黄金の龍、四風龍(コウリュウ)と呼ばれたモンスターがそれに応えるように目を閉じる。そしてカッ!と目を見開けば朝日のフィールドの四方から風が集まり出す。

集まる風は次第に渦を巻き、巨大な竜巻を形成する。竜巻は暴れ狂う龍が如くにフィールドを荒らし、朝日のモンスターに、魔法・罠カードに襲いかかるのであった。




(よ、4枚ドローにドローした枚数分破壊!?しかも破壊の方にはターン1の縛りもないのか!?)
あまりの強カードに俺は驚く。



…いや、素材にレベル7モンスターを4体も要してるし行けるもんなんか…?




そう、創札できるカードは基本的には自由で、己がイメージするままにカードを創り出すことが出来る。だが、制約があるのだ。



攻撃力や守備力が高くしようとしたり効果を強くしようとすると、それに比例して出力されるモンスターのレベルは高くなる。即ち、上級モンスターや最上級モンスターとなり召喚が容易で無くなる。
さらに強くしようとすれば特殊召喚モンスター、儀式や融合、シンクロといった召喚に手筈を踏む必要が出てくる。
簡単に使用できるカードで効果を強くしようとするならば、デメリット効果が付く等といった形だ。

魔法カードや罠カードも同様で強い効果には発動条件が追加されたり、何らかの行動制限が付与されるようになっている。



ただそれは当人の創札能力の強さによって個人差が出る。



創札能力の強さは、生まれ持ったポテンシャルや自身のカードを創り出すイメージ力、多くの決闘の経験等が要因となって変化すると言われているが、未だに謎が多い要素だ。

だが、創札されるカードの強さ、ひいては決闘の強さに関わってくるので重要な要素なのだ。



そして四風龍ノ勝負石の強さはかなり…いや、猛烈に強い。


高い攻撃力に特に欠点もない効果が3つもありデメリットもない。強いて言うならそのエクシーズ素材が4体も必要なのが重い気もするが、といった感じだ。


こんなカードを創札できる、そしてそれを扱うことができる東風は決闘者としても創札者としても相当な実力者なのであろう。周りのクラスメイトもそう感じているに違いない。



こうなってくるとこんなヤバい奴の対戦相手になってる朝日ってのが可哀想に思えてくるぜ…。





「…へっ!竜巻がなんだってんだ!そんな蛇っころの技で俺のスーパーロボット軍団がやられると思ったか!」
「罠カードオープン!《超合機装-バニッシャーシールド》!」


俺は憐憫を覚えつつも朝日の方へ目をやるが、そんな周りの雰囲気は何処吹く風か、朝日は快活に啖呵を切るとカードの使用を宣言する。



発動された罠カードによって朝日のフィールドにはマントのような大きな黒い布が表れそのマントが他のカード達を覆う。
マントと竜巻とか衝突すると竜巻は何事も無かったかのようにかき消されてしまうのだった。




超合機装-バニッシャーシールド
通常罠
①自分フィールドに機械族モンスターが存在する場合に発動できる。このターン、自分フィールドのカードは効果で破壊されない。自分フィールドに「超合機-ジオバニッシャー」が存在する場合、発動後このカードは墓地へ送らず、そのままセットする。




「バニッシャーシールドの効果でその蛇っころの効果は相殺!…だがジオバニッシャーは今俺のフィールドにはいねぇからバニッシャーシールドは再セットできねぇ」

「でも、だ!超合機罠が発動したことで《地鳴りのランマ》の効果が発動!」
「デッキより《超合機-グンジョー》を攻撃表示で特殊召喚!」




地鳴りのランマ
攻撃力500/守備力500
レベル:1
属性:地属性
種族:機械族
効果モンスター
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①このカードを召喚した場合に発動できる。デッキから「超合機」通常魔法カードまたは「超合合体」を1枚手札に加える。
②「超合機」魔法・罠カードが発動した場合に発動できる。デッキから「超合機」モンスター1体を選んで攻撃表示で特殊召喚する。この効果の発動後、ターン終了時まで自分はEXデッキから機械族モンスターしか特殊召喚できない。




朝日のフィールドに居たモンスター、地鳴りのランマがその片腕を天へと掲げる。
掲げられたランマの腕は異様で、何か内燃機関のような物や大径のスプリング、細かな配管等が多数取り付けられており、肩程までが全て機械で覆われていた。
さらにその拳は分厚い鋼板で形を成しており、ランマの顔よりも大きく、殴られてしまえばひとたまりもないだろうなといった印象を受けた。


そしてランマのその掲げた腕の排気管から一瞬火が噴き出すと、ランマはその反動を活かしてデュエルコートの床を機械腕で殴りつける。床が大きく割れるとそのひび割れから蒼炎が吹き出し、その蒼炎の中からは巨大なロボットが出現するのであった。



「超合機-グンジョーの特殊召喚時、永続魔法《超合合体》の効果が発動!それにチェーンしてグンジョーの効果も発動!」
「まずグンジョーの効果ァ!デッキから《超合機装-グンジョーブースター》を手札に加えるぜェ!」



グンジョーは背丈が3〜4メートルくらいある二足歩行の人型のロボットであった。黒をベースとしたカラーリングに青い炎を模したデザインが各所に施されており、男の子が絶対好きそうなロボットといった見た目をしたモンスターであった。




超合機-グンジョー
攻撃力1800/守備力1500
レベル:4
属性:炎属性
種族:機械族
効果モンスター
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①自分フィールドに「超合機」モンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。
②このカードを特殊召喚した場合に発動できる。デッキから「超合合体」またはそのカード名が記されたカード1枚を手札に加える。




「そしてェ!超合合体の効果により俺のフィールドのモンスターを素材に融合・シンクロ・エクシーズ・リンク召喚のいずれかを行う!」
「今回はエクシーズ召喚だ!」




超合合体
永続魔法
①「超合合体」は自分フィールドに1枚しか表側表示で存在てきない。
②自分が「超合機」モンスターを特殊召喚した場合に発動できる。以下の効果から1つを選んで適用する。この効果を発動するターン、自分は機械族モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。
●自分フィールドのモンスターを素材として融合モンスター1体を融合召喚する。
●自分フィールドのモンスターを素材としてSモンスター1体をS召喚する。
●自分フィールドのモンスターを素材としてXモンスター1体をX召喚する。
●自分フィールドのモンスターを素材としてLモンスター1体をL召喚する。




「…お前のフィールドにはレベルの異なるモンスターがそれぞれ1体ずつしかいない。ルール上エクシーズ召喚をするのは不可能だ」
東風が冷静に、極めて淡々と指摘する。



「いいか、よォく覚えとけ!」
「合体ってのは理論や理屈じゃねんだ!合体ってのはなぁ!気合と気合のぶつかり合いなんだよォ!」
朝日は熱烈に、激しく轟々と反論する。



反論の後、朝日は腕を掲げ、拳を掲げ、人差し指を天へと向ける。


「俺ァ地鳴りのランマと超合機-グンジョーでオーバーレイ!」



朝日のオーバーレイの掛け声と聞き届けたランマはコクりと頷くと機械腕の排気管から炎を噴き上げる。ジェットエンジンのように噴き出す炎は推進力を生み、勢いそのままにランマはさながらロケットが如く飛翔する。
その行く先にはグンジョーが佇んでおり、そのままグンジョーの左胸、人間で言うところの心臓がある箇所にランマは激突する。そしてランマの機械腕が装甲を貫通し深々と突き刺さると、ランマ自身は機械腕を楔としぷらーんとぶら下がった状態となった。


・・・。


謎の間が生まれ辺りはしんとした空気に包まれる。
なんだこれ?やっぱ合体(エクシーズ召喚)失敗か?と思われた刹那、割れた装甲の隙間から蒼い炎が煌々と噴き出す。

噴き出した炎は一瞬の内にグンジョーの全身へと周り炎が機体を包み込む。



「己が魂に灯すは蒼炎!鈍く光るは鋼鉄拳!」



朝日が叫ぶと、ぶら下がった状態だったランマは機体内へと吸収されるかように滑り込んでいく。そして蒼炎へと包み込まれたグンジョーはまるで創り変えられるかのように機体のパーツが一新されていく。
一回り大きくなった機体、それを支えるように太く長くなった脚部、割れた装甲は何事も無かったかのように修復され、頭部には先程までは無かった蒼炎を象った兜のようなものを着けていた。特に腕部は特徴的で、片腕のみ異様に大きく、その威迫的で巨大な鋼鉄の拳が目を引いた。


「聳える山はぶっ潰し、遮る壁はぶち破る!」
「邪魔するモンは拳の塵に!超合合体!《超合機-グンジョーランマー》!!!」
「燃える漢に不可能なんてねェんだよォ!!!」




超合機-グンジョーランマー
攻撃力3000/守備力2000
ランク:5
属性:炎属性
種族:機械族
Xモンスター
機械族レベル5モンスター×2
このカードをX召喚する場合、自分フィールドの「地鳴りのランマ」を含む機械族モンスター2体のレベルを、その2体の元々のレベルを合計したレベルとして扱う事ができる。
①このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動できる。その相手モンスター以外の相手フィールドのカード1枚を破壊し、このカードの攻撃力は1000アップする。
②X素材を持ったこのカードがフィールドを離れた場合に発動できる。このカードのX素材素材として墓地へ送られたモンスターを可能な限り特殊召喚する。




「おうおうおうおう!スカした態度しくさりやがって!これでお前の蛇っころとはタッパは同じ!格も同等だぜ!!!」


朝日はズボンのポケットに手を突っ込んだ状態で東風にメンチを切りながら捲し立てる。
それに合わせてグンジョーランマーも朝日と同じポーズを取り、どうだコノヤローと言わんばかりの様子だ。




そんな様子に俺は感嘆する。


相手は明らかに実力者、それでも臆することなく何なら啖呵を切っての大立ち回り。若干熱が入りすぎてる気もするが、そのビッグマウスに見合ったプレイングとカードの強さ。
まだ伏せカードは1枚残ってるし、恐らく手札に加えたカードは手札誘発で効果があるカードなのだろう。
その用意周到さ、抜け目の無さからも朝日が相当な実力者であることが伺える。


こりゃこの決闘まだ結果は分からんなぁと俺は独りごちるのであった。




「…モンスターの大きさが同じになったところで攻撃力や守備力、ましてや効果に関係はない」
「俺は手札の《塔索ノ勝負石》を公開して効果を発動。1枚ドローしこのカードを捨てる」




塔索ノ勝負石
攻撃力3200/守備力1600
レベル:9
属性:風属性
種族:アンデット族
効果モンスター
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。
①自分の「勝負石」モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時に、手札のこのカードを相手に見せて発動できる。その戦闘を行う相手モンスターの攻撃力は3200ダウンする。その後、このカードを手札から特殊召喚する。
②手札のこのカードを相手に公開して発動できる。デッキからカード1枚をドローし、このカードを捨てる。この効果の発動後、ターン終了時まで自分はドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加えることができない。




「そしてまたドローをしたことにより勝負石ノ草原にカウンターが1つ乗る」




勝負石ノ草原
カウンター:9→10




「…パニッシャーシールドの効果でお前のフィールドのカードはこのターン効果で破壊されないのは分かっているが、四風龍のドローしたときの③の効果は強制効果なためグンジョーランマーを選んで適用する。小四喜(リトル・ウインド)」



「受けて立ってやれやァ!グンジョーランマー!」



またしても朝日のフィールドで竜巻が発生しグンジョーランマーを襲うが、グンジョーランマーはまとわりつく風に対し腕を豪快に振るうと竜巻はたちまちに消えてしまう。



「…だが、ドローしたことで手札の《紅剣ノ勝負石》の効果も発動。紅剣ノ勝負石を特殊召喚し、《勝負石トークン》も1体特殊召喚」




紅剣(こうけん)ノ勝負石
攻撃力2600/守備力1300
レベル:7
属性:炎属性
種族:機械族
効果モンスター
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。
①自分がデッキからカードをドローした場合発動できる。手札からこのカードを特殊召喚し、「勝負石トークン」(サイバース族・光・星0・攻500/守300)1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したトークンは「勝負石」リンクモンスター以外のリンク素材にできない。
②手札のこのカードを相手に公開して発動できる。デッキからカード1枚をドローし、このカードを捨てる。この効果の発動後、ターン終了時まで自分はドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加えることができない。




勝負石トークン
攻撃力500/守備力300
レベル:0
属性:光属性
種族:サイバース族
トークン




現れたモンスター、紅剣ノ勝負石は剣であった。剣は切っ先から地面に突き刺さっておりさながらRPGに出てくる伝説の剣のような状態で、柄から刃まで焼けた鉄のように赤熱した見た目をしていた。実際に熱を帯びてるのか剣の周囲には蜃気楼で歪んだ景色が見える。


また、勝負石トークンと呼ばれたモンスターは伏せられた麻雀牌そのままといった見た目であった。




「──来い。運命を計る神卓よ」
紅剣と勝負石トークンの特殊召喚を終えると、東風は片腕を前方へ突き出し宣言する。
そうすると東風の突き出した手の先に、どこも指し示していない空のリンクマーカーが現れた。


「召喚条件はレベル7モンスターまたは勝負石トークン1体。よって勝負石トークン1体でリンク召喚。……和了《翻牌ノ勝負石》」



勝負石トークンは一筋の光となり空のリンクマーカーへ飛び立つと、その左下方向へ収まる。
そしてリンクマーカーが眩く輝くと1体のモンスターが現れた。


現れたモンスター、翻牌ノ勝負石は体長1〜2メートルはありそうな真っ黒なトンボのような見た目をしたモンスターであった。




翻牌(ファンパイ)ノ勝負石
攻撃力1000
リンク:1(左下)
属性:風属性
種族:昆虫族
Lモンスター
レベル7モンスターまたは「勝負石」トークン1体
このカードの①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①このカードをL召喚した場合に発動できる。デッキからレベル7「勝負石」モンスター1体を効果を無効にして特殊召喚する。この効果を発動するターン、自分はドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加えることができない。




「翻牌ノ勝負石のリンク召喚時の効果。デッキよりレベル7勝負石モンスター、《白鏡ノ勝負石》を効果を無効にして特殊召喚」



召喚が宣言され、東風のフィールドには無から湧いてくるようにモンスターが現れる。
白鏡ノ勝負石は名の通り、神々しき白で磨かれた円形の鏡そのものであった。ここは室内なので映らないはずであるが、何故か鏡には反射で映された太陽の姿が見えていた。




白鏡(はくぎょう)ノ勝負石
攻撃力2600/守備力1300
レベル:7
属性:地属性
種族:幻想魔族
効果モンスター
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。
①自分がモンスターの召喚・特殊召喚に成功した場合発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、「勝負石トークン」(サイバース族・光・星0・攻500/守300)1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したトークンは「勝負石」リンクモンスター以外のリンク素材にできない。
②手札のこのカードを相手に公開して発動できる。デッキからカード1枚をドローし、このカードを捨てる。この効果の発動後、ターン終了時まで自分はドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加えることができない。




「そして紅剣、白鏡、翻牌の3体をオーバーレイ」
「このカードはリンクモンスターをレベル7モンスターとして扱い素材にできる。よって翻牌ノ勝負石を素材にエクシーズ召喚が可能。……和了《三神器ノ勝負石》」




三神器ノ勝負石
攻撃力2400/守備力800
ランク:7
属性:光属性
種族:サイキック族
Xモンスター
レベル7モンスター×3
このカードをX召喚する場合、自分フィールドのリンクモンスターをレベル7モンスターとして素材にできる。
このカード名の②の効果は1ターンに1度しか発動できない。
①このカードの攻撃力は、このカードのX素材の数×300アップする。
②自分のメインフェイズにこのカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。デッキ・墓地から「勝負石」モンスター1体を選んで特殊召喚する。
③自分がデッキからカードをドローする度に1枚につき自分のLPを500回復する。




(で、デカい…!)



東風のフィールドには体長5メートル以上はあろう巨人が降り立った。
側頭部で結った黒髪に日本神話や歴史の教科書に出てくる古代の日本人のような麻か絹でできた白い装束を見に纏い、右手には紅く輝く剣を持ち、左手の腕部には白く眩い鏡をラウンドシールドのように携え、首には緑に煌めく勾玉を提げていた。




「そしてそのままバトルフェイズに移行」
「俺のフィールドの勝負石モンスターは勝負石ノ草原の効果でカウンターの数×100攻撃力がアップする。今のカウンターの数は10個。よって1000アップ」
「さらに三神器ノ勝負石は①の効果でエクシーズ素材の数×300攻撃力がアップする」

「…三神器ノ勝負石でグンジョーランマーへ攻撃。大三元(スリー・インペリアル・レガリア)」



三神器ノ勝負石は東風から攻撃指示を受けると、手や首で光を放っていた宝具たちがさらに輝きを増す。それに共鳴するようにして三神器ノ勝負石自体も黄色の光を、文字通りの威光を放ち始める。


そして三神器ノ勝負石が剣を腰程の高さで構えると、一瞬グッと力を溜めた後雷の如く勢いでグンジョーランマーへ接近する。
剣の切っ先がグンジョーランマーの胴を貫かんとするが、グンジョーランマーは三神器ノ勝負石の吶喊を読んでいたかのようにそれを去なすと鋼鉄の拳を相手の顔面へと放つ。が、三神器ノ勝負石は軽々とその拳を腕部の鏡を盾のように振るい受け流す。


そして仕切り直すかのように一旦両者は距離を取り直した。



「このダメージ計算時、グンジョーランマーの効果を発動!!グンジョーランマーと戦闘を行っている相手モンスター以外の相手フィールドのカード1枚を破壊するぜェ!!」
「俺が選ぶのはもちろん四風龍ノ勝負石!!!」
朝日が高々と宣言する。


「…勝負石ノ草原に乗っているカウンターを3つ取り除くことでその破壊を肩代わりする」


「ッチィ!」
「だがカウンターが減ったことでそのヤマト野郎の攻撃力は下がるぜ!!」



「…」




勝負石ノ草原
カウンター:10→7




超合機-グンジョーランマー
攻撃力:3000→4000


三神器ノ勝負石
攻撃力:2400+1000+900=4300
    4300→4000




三神器ノ勝負石とグンジョーランマーは互いに睨み合ったまま動かなかった。否、動けなかった。先に動けば相手に合わせられ手痛いカウンターを喰らうと分かっていたからだ。だから相手の様子を伺った。隙を見せた瞬間に攻勢へ出るために。
場の空気は張り詰めた糸のような緊張状態であった。


──だが!均衡は長くは続かない!


先に動いたのはグンジョーランマーであった!燃える魂を持つ熱血漢の機械(マシン)である彼にはまどろっこしい考えが性に合わなかった!手痛いカウンターを喰らう?バカバカしい!そんなのは殴って殴られた後に考えればよい!今度は此方の番だと言わんばかりに三神器ノ勝負石へと吶喊する!

三神器ノ勝負石は吶喊してきたグンジョーランマーへ合わせるように剣を振り下ろした!バレバレの吶喊など片腹痛い!その拳が我に届く前に剣が貴様を貫くぞ!さあ我が斬撃を防ぐが良い!…もっとも防いたところで二の太刀で決着となるがなぁ!そう考えていた!


両者が交錯する!


グンジョーランマーは斬撃を…避けなかった!斬撃が己が躯を切りつけると分かっていたが敢えて避けなかった!
よって剣はグンジョーランマーの装甲を、まるでバターを切るが如くに切り裂くのであった!

そして深々と食い込んだ剣を見て三神器ノ勝負石は自身の勝利を確信した!なんだ色々思考して損したと、大したことないヤツだったなと、こんな程度なのかと思った!



──そう、油断してしまった!



瞬間、鋼鉄拳が三神器ノ勝負石をぶち抜いた!

グンジョーランマーは装甲がズタズタに切り裂かれながらもその闘志は折れず、万感込めた拳を相手のボディーへと放ったのだ!
深々と突き刺さった拳にこれ堪らずと三神器ノ勝負石は耐える間もなくダウンした!


そしてグンジョーランマーは勝者として何とか体勢を立ち直し勝鬨を上げようとした!が、力足りずに地へと伏せるのであった。



──両者相打ち。そんな結末でこの戦闘は幕を引いた。





「…なんか悪いが、勝負石ノ草原の効果で三神器ノ勝負石の戦闘破壊を肩代わりする、ぞ」
ポリポリと頭の後ろを掻きながら気まずそうに東風は告げる。



「て、テメェ!熱い闘いを繰り広げた漢と漢に水差すってのかよ!?流石にあんまりじゃねェか!」


ソウダソウダ!!
ブーブー!!


朝日は「そんなぁっ!」といった表情で愕然とし東風へ訴えかける。
加えて熱い戦闘(バトル)を見届けた周りのクラスメイトからもブーイングが上がる。



いやまあ、なんかアニメのワンシーン見たいな戦闘で盛り上がったのは分かるけどね!あくまで決闘なのでそこはしょうがないと思うよ!?



「いやでも効果……」
「コホン…勝負石ノ草原の効果により、カウンターを3つ取り除き三神器ノ勝負石の破壊を肩代わりする」



だが無慈悲にも、大変無慈悲にも関わらず勝負石ノ草原の効果は適用され、さっきまでダウンしていた三神器ノ勝負石は何事も無かったかのようにフィールドでピンピンとしていた。




勝負石ノ草原
カウンター:7→4




「…ならば俺は破壊されたグンジョーランマーの効果を発動!!グンジョーランマーのエクシーズ素材として墓地へ送られたモンスターを可能な限り特殊召喚する!!」


ちょっと(いや、かなり?)ショックを受けた様子であった東風は直ぐに立ち直ると、グンジョーランマーの効果使用の宣言をする。



「…それはマズい。ので、手札の《月筒ノ勝負石》をお前に見せて効果を発動する」
「墓地からモンスターを特殊召喚する効果を無効にしてこのモンスターを特殊召喚する」


それに対し東風は眉間に皺を寄せながら応対する。



それもそうだろう。グンジョーランマーの効果が通ればランマとグンジョーが再度フィールドに並ぶ。
そして超合合体の効果にターン1の縛りはないため、エクストラデッキのグンジョーランマーが尽きない限り超合合体の効果で絶えずグンジョーランマーが呼び出され立ちはだかるというわけだ。


常に攻撃力4000の壁が立ちはだかるのは流石に堪えるだろうなぁ。




月筒ノ勝負石
攻撃力1300/守備力700
レベル:1
属性:光属性
種族:岩石族
効果モンスター/特殊召喚
このカードは通常召喚できず、カードの効果でのみ特殊召喚できる。
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。
①自分フィールドに「勝負石」X・Lモンスターが存在する場合に、墓地からカードを手札・デッキに加える効果または墓地からモンスターを特殊召喚する効果が発動した時、手札のこのカードを相手に見せて発動できる。その発動を無効にする。その後、このカードを手札から特殊召喚する。
②手札のこのカードを相手に公開して発動できる。デッキからカード1枚をドローし、このカードを捨てる。この効果の発動後、ターン終了時まで自分はドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加えることができない。




「おっとそうかい。でも俺もコイツを止められるとヤバいんでね」
「罠カードオープン!《物ノ怪祓イ》!!」
「相手が手札・墓地で発動したモンスターの発動を無効しに、次のターンの終わりまで相手は手札・墓地でモンスターの効果を発動できなくなる!」




物ノ怪祓イ
通常罠
①相手が手札・墓地のモンスターの効果を発動した時に発動できる。その発動を無効にする。この効果の発動後、次のターンの終了時まで相手は手札・墓地のモンスターの効果を発動できない。




「…なら手札の《狼萬ノ勝負石》の効果を発動」
「自分のターン中に相手が効果を発動したなら、それを無効にしてこのモンスターを特殊召喚する」




狼萬ノ勝負石
攻撃力1300/守備力700
レベル:1
属性:地属性
種族:獣戦士族
効果モンスター/特殊召喚
このカードは通常召喚できず、カードの効果でのみ特殊召喚できる。
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。
①自分のターン中、相手がカードの効果を発動した時、手札のこのカードを相手に見せて発動できる。その発動を無効にする。その後、このカードを手札から特殊召喚する。
②手札のこのカードを相手に公開して発動できる。デッキからカード1枚をドローし、このカードを捨てる。この効果の発動後、ターン終了時まで自分はドロー以外の方法でデッキからカードを手札に加えることができない。




「まだまだァ!!」
「俺は手札の超合機装-グンジョーブースターを捨てて効果を発動!!相手のフィールド以外で発動した効果を無効にするぜ!!」




超合機装-グンジョーブースター
攻撃力500/守備力500
レベル:2
属性:炎属性
種族:機械族
効果モンスター/ユニオン
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①自分フィールドに「超合機」モンスターまたは「超合合体」が存在する場合に、相手が自身のフィールド以外でカードの効果を発動した時、このカードを手札から捨てて発動できる。その発動を無効にする。その後、自分フィールドの「超合機」モンスター1体にこのカードを装備魔法カード扱いで装備できる。
②1ターンに1度、以下の効果を1つ発動できる。
●自分フィールドの「超合機」モンスター1体を対象とし、このカードを装備魔法カード扱いで装備する。装備モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、代わりにこのカードを装備する。
●装備状態のこのカードを特殊召喚する。




「…」


「どうだ!!もう流石に打ち止めだろォ!!」



ダメージステップ終了時のものすごい空中戦。既にチェーンは5まで重なっており、両者の意地が激突する。



東風は残り手札2枚。表情からは手札誘発を握っているのか否かは読み取ることはできない。


朝日は伏せカードは全て吐き切り、残すは手札が1枚。墓地には対応札は見当たらないので妨害札はもう尽きているのかもしれない。「どうか効果よ通ってくれ!!」と、祈りにも似たその必死さが見て取れる。



どうだ!?ここからの大逆転劇は起きうるのか…!?






が……駄目っ……!
この勝負、天は東風へ微笑んだっ……!





「……攏和」



「…あァ?」



「…聞こえなかったか?攏和(ロン)と言ったんだ」
「……攏和《運命攏和リシ勝負石》」




運命攏和(アガ)リシ勝負石
カウンター罠
このカード名のカードは1ターンに1度しか発動できず、このカードの発動に対して相手は効果を発動できない。
自分フィールドに「勝負石」X・Lモンスターが存在する場合、このカードの発動は手札からもできる。
①相手がカードの効果を発動した場合に発動できる。その発動を無効化し破壊する。相手が発動した効果がモンスターの効果だった場合、さらにそのモンスターの攻撃力分だけ自分のLPを回復する。




「相手が発動した効果を無効にしてそのカードを破壊する」
「これに相手は効果を発動できない」



東風は極めて冷静に効果を告げる。



「なっ…!」
「そんなカードフィールドには──」



「…勝負石エクシーズまたはリンクモンスターがフィールドに存在するならこのカードは手札からも使用できる」



「…くゥ〜ッッ!!!」


朝日は何処からともなく発動されたカウンター罠に呆気に取られるが、その出処を理解すると、悔しさを滲ませながら天を仰いだ。




チェーン1:超合機-グンジョーランマー
チェーン2:月筒ノ勝負石(↑を無効)
チェーン3:物ノ怪祓イ(↑を無効)
チェーン4:狼萬ノ勝負石(↑を無効)
チェーン5:超合機装-グンジョーブースター(↑を無効)
チェーン6:運命攏和リシ勝負石(↑を無効)




積みに積み重なった効果はチェーン6から処理され、まずチェーン5のグンジョーブースターの効果が無効化される。
よってチェーン4の狼萬ノ勝負石は生き、チェーン3の物ノ怪祓イの効果を無効にしながらそのまま特殊召喚される。
そしてチェーン2の月筒ノ勝負石も有効となり、グンジョーランマーの蘇生効果を無効化しながら月筒ノ勝負石は特殊召喚された。


結果として見れば、東風が朝日を完全に抑え込んだ形であった。




東風 京太郎
LP:8000→8500




「これでお前を守るものは無くなった」
「…四風龍ノ勝負石で直接攻撃。大四喜(グランド・ウインド)」



四風龍ノ勝負石がグワッと口を開けると、その口の中で風がうねりを上げ始める。次第に風はどんどんと圧縮されていき猛烈な乱流となりまるで大瀑布の滝壺のような勢いで逆巻いていた。
程なくしてチャージは完了し、四風龍の口から巨大竜巻のブレス攻撃が放たれ、朝日は為す術なく飲み込まれるのであった。




朝日 凱
LP:3200→0





────
───





「いやー、負けた負けた!!」
「それなりに善戦したように思えたが、与えたダメージは0!完敗だなっ!!」


決着の後、朝日は東風へと近寄りながらあっけらかんと快活に笑っていた。
そして向かい合う距離まで近づくと手を差し出し握手を求める。


「楽しい決闘だったぜ」


「…こちらこそ。有意義な時間だった」
東風は朝日の手を取り握手を返しながら応えた。



「さっそく感想戦だが…」
「あの3ターン目のジオパニッシャーの使い方は何だ…?俺が明らかに構えている所に考え無しに突っ込んで来て──」



決闘も終わり緩やかな雰囲気であったのも束の間、東風が朝日のプレイングに対して問い質し始めると、その顔はやや険しくなり、握手をしている手にも力がかなり入ってるように見えた。


「えっ?あ、ああ、それは…ってェ!」
「なんか急に顔怖くねェか!?なんか怒らせるような気に食わないプレイングしたか俺ェ!?」
「てか猛烈に手が痛ェ!?手を離そうにも力強すぎて離れねェんだねどォ!?」



「正直ジオパニッシャーを上手く使われていれば負けていたのは俺の方だったかもしれなかったからな」
「ただそれをお前は───」クドクドクドクド




…あちらは感想戦という名の次なる決闘が始まりそうだなぁ。



巻き込まれちゃ堪らないと俺と希空を含め周りを囲んでいたクラスメイトは蜘蛛の子を散らすよう退散するのであった。



そして10分も経たない内に残っていた他のグループも決闘を終え、入学早々の決闘授業は幕を閉じるのであった。








──────
─────
────








place:1年A組教室
授業も終わり昼休み。
俺は最大の壁に直面していた。



──そう、昼メシである!



学生生活に於ける昼メシとはモストでバリアブルな要素であり、これを共にする相手こそ今後の学生生活を共にすると言っても過言ではない…!


そして、そんな重要な昼メシを共にしてくれそうな相手は現状の俺の交友関係では希空しか居ないのであるが、希空は「まだボク不機嫌なんですけど〜!」といったオーラ全開でそっぽを向いている。



それもそのはずで、なんか有耶無耶になってしまったのでタイミングを逃してしまっていたが、さっきの授業中に希空を揶揄い倒したことに対する許しをまだ貰ってないのである!



なのでなんとか。そう、なんとか!許しを貰わなければ俺は入学早々からのぼっち飯が確定してしまうのだ!





「あ、あの〜…?」
「 希空…さん?怒ってます…よね?」



「…」
「そう見えるならそうなんじゃないかなっ?」


希空はそっぽを向いていたが、俺が声をかけるとこちらへ体勢を向き直してくれた。が、まだ機嫌は直っていないようでしらーっとした視線を向けてくる。



「そ、そんな怖い顔しないで下さいよ〜!」
「揶揄いすぎたのは悪かったって〜!」



「…」
「いやいや、全然怒ってないよ?」
「広が言う通りボクはコミュ障なのは事実だからね。コミュ障はコミュ障らしく弁えて行動するとしますよ。…例えば今日のお昼ご飯は独り寂しく食べるとか…ね」



「変に拗ねた態度取らないで下さいよぉ!」
「さっきの朝日と東風の決闘を観戦してた時は普通に接してくれてたじゃないっすかぁ!」


「…そうだっけ?忘れちゃったなぁ」
「あーあ。広の揶揄いを受けたことによる心の傷が痛むなぁ。これはデザートでも食べないと癒えないかもなぁ」


希空は明後日の方を見ながら白々しく言い放つ。



希空(コイツ)存外がめついなっ!?


「分ぁかりましたよ!奢りますよ!奢らさせて頂きますよ!」
「それで機嫌直して下さいよね!?」



「ん?なんかボクが我儘言ってるみたいな口振りだね?元はと言えば広が悪いのに?」
「そうですかそうですか。それならどうぞ一人で、ぼっちでお昼を食べたらどうですかー?」



「そぉんなこと言わないで下さいよ希空さ〜ん!!!」
「希空さんが我儘なんて、がめついなんてこれっぽっちも思ってませんよぉ!!」


「あ、ふーん。そういう風に言うんだ」
「どうしよ、ほんとに独りでご飯食べようかな?」


「冗談ですやんっ!ちょっとした戯れですやん!」
「あ、ちょちょホントに独りで学食行こうとしないでっ!」

「俺には希空しか居ないんだ!希空が全てなんだよ!」


この学園でできた友達は希空しかまだ居ないんだぞ!?見捨てないでくれ〜!(泣)


なりふり構わず俺は机に突っ伏して、言わば腹より上だけで土下座をするようにして希空へ懇願するのであった。




……ん?あれ、返答がない。


俺の懇願を受けて希空から可なり不可なりの返答が返ってくると思ったがそれが無かった。
もしやマジで無視して学食に行ってしまったかと思い顔を上げると、希空は普通にまだ居た。
が、何故だか目を丸くして何かに驚いているような様子であった。


なんかあったのかと教室を見回すが、まだ学食へ向かっていない数名のクラスメイトが居るだけで特に変な様子ではなかった。



…?
何をそんな驚いてんだ?なんか俺変なことでも言ったか?



一間二間置くと、希空は「…へぇ」と何か納得したようなないような独り言を呟くと、その後も「あぁ」「ふぅん」「そうなんだ」とよく分からない独り言をブツブツと呟いていた。

そして咳払いを1つして俺へ向き直る。



「…コホン。よし、どうぞ。」
「……続けて?」



「えっ」
「つ、続けるって何をだ…?」
「それに急に雰囲気が変わった気がするんだが…?」


「ううん。ボクは大丈夫だから」
「だから、ほら。続けて?」


「だから続けるって何をっ!?」

なんか希空の目据わってるしめちゃめちゃ怖いんですけど!!これは地雷踏むようなこと口走っちまったか!?


さっきの発言を思い返そうとするが記憶にない。正直脊椎反射で喋っているところもあったので一々会話なんて覚えてるわけがないのだ。



「っ!だからぁ!」
「ボクは!今!広の!ボクに対する想いを!どれだけボクを思い焦がれているのかを!ボクのことが欲しくて欲しくて堪らない広のその慕い(おもい)を!聞こうって言ってるんじゃあないか!!」



「重いし怖いわっ!!!」
「何をどうしたらそんな話に繋がるんだよ!?俺とお前はほんの3、4時間前に出会ったばっかりだぞ!?そんな語るほどの深い感情ないわ!!」

「…えっ、何でそんな不満そうなの!?」



「…はぁ。まあ、そうだよね」


「えっ何その意味深な感じ!?」


「そっかそっか、覚えてないのかぁ」


「えっ、えっ、今日が初対面だった筈だよね!?『昔何処かで会ってて〜』みたいな実は幼馴染でしたパターンだったりする!?」



「いや普通に今日会ったばっかの初対面だけど?」
「どしたの急に」

「怖」



「じゃあさっきの意味深な感じはなんだったんだよ!!」
「あと急に冷静になるの止めてくれます!?!?一人で空回りしてスベッたみたいになるじゃん!!」



くっそぉ!態度が急変したから何かと思ったが、希空のやつ完全に俺で遊んでやがるなぁ!お前ぜってぇ覚えとけよ。いつか必ずやり返してやるからなっ!



元はと言えば俺が希空を揶揄ったのが原因なのであるがそれを棚上げし、俺は更なる復讐を誓うのであった。


そして希空はと言うと──


「…あっはっはっは!」
「あー可笑しい」


とても愉快そうに腹を抱えて笑っていた。なんなら笑い過ぎて目の端には少しばかし涙を浮かべていた。


「…しょうがないっ!これで広には十分仕返しできたと思うし、おあいこってことで許してあげようかなっ」



「俺が悪かったとはいえもう少し勘弁してくれよぉ」
「はぁ…。…じゃあ気が済んだのなら学食行こうぜ?昼休みが終わっちまう」



「ゴメンゴメン(笑)」
「よしっ。それじゃあ学食にレッツゴー!だねっ!」


気分良さそうに教室を出ていく希空。
それを追うようにして俺も教室を後にする。





「…あっ!そうだそうだ」


「どした?」
「なんか忘れ物か?」


「ん。そうだね」
「忘れ物と言えば忘れ物だね」



「おいおい。急がんとマジで昼休み終わっちまうぞ?」


「大丈夫大丈夫」
「学食に移動しながらでもできることだから」



ん?忘れ物なのに移動しながらでもできること?
「それってどういう──」




「はい、それじゃあ…」
「広のボクへの想いを聞こうか」



「えっ」



「まあまずは軽く10分くらいは語ってもらおうかな」


「えっ」


「ほらほら、早くしないとご飯にありつけなくなっちゃうよ?」


「…え、ええっと」
「もう仕返しは終わったはずじゃ…?」



「ん?(笑)」


顔はにこやかに見えるが目は笑って無かった。そして目は濁ったかのように光が無かった。



あっ、これガチのやつだ。





わりい、俺死んだ(笑)
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